日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

ちっちっち。お嬢さん、氷をナメちゃ、いけねぇぜ。

2007年09月07日 | お仕事な日々
今日のお仕事は、
ある女学院の運動会で、
飲み物を売る仕事。

幼稚園~短大まである、お嬢様学校(だと思う)。

聞くところによると、
少子化のせいで、去年から、
中・高一緒に運動会をするようになったとか。

それにしても、運動会に、
業者が飲み物を売りに来るなんて。

売りにいっておいて言うのもなんなんですが(笑)

メーカーの人によると、
10年前ぐらいから、
学校側の依頼で、
売りに来ているらしかった。

でも、もうちょっと秋が深まってから、
運動会なんてすればいいのにねぇ~。

     ★

飲み物は、
140円のペットボトルや100円のブリックパック。

小さめの浴槽に足をつけたような入れ物に、
氷と水を大量に入れて、キンキンに冷やしながら。

午前中に、
ある女の子三人組が、物色しに来た。

しばし沈黙の後、
そのうちのひとりが、何も言わずに、
急に浴槽もどきに手を突っ込んで、
中に浮いてる氷を手に取った。

意表をつかれて、
私は、
なんと言っていいかわからなかった(お代を取るわけにはいかないしね)。

黙っていると、残りのふたりも続けて、
やはり、浴槽もどきに手を入れて、
氷だけを取って、
何も言わず何も買わずにその場を立ち去った。

「売る人/買う人」という構図が崩れた瞬間だった。

私がイメージする関係性の距離感を、
なんの手続きも踏まず、土足で踏み込まれたような。
(まぁこの仕事をしていれば、よくあることではあるのだが……)

すこから、少しずつ、少しずつ、
「氷ください」と言って、
氷だけをもらう子が、増えだした。

中には、席に戻らず、
運動会も見ずに、
売場周辺に座り込んだりし始め、
やけに、売る人である、
メーカーの人や、私とかに、
馴れ馴れしく接してくる子が現れた。

私はオカタイので、こういう
すぐに馴れ馴れしくなる子どもたちが、かなり嫌いだ(笑)

中には、黙って、
両手のひらを丸くして、差し出す子らも現れて。

私はいじわるく「何ですか?」と聞いたりして。

でも、一緒に売ってたメーカーの男の人たちは、
なんでもないかのように、氷を渡していくので、
それなりに、接し方は、
足並みは揃えなくちゃいけなくて。

横目で見ながら、複雑……。

でも、ま、いいや。
氷のボランティアで、あたしゃ、ここにいるんじゃないんだし。

なんて、ある段階から、
だんだんと開き直って、気持ちを固めていき。

何回も来る子らには、
もう、メーカーの営業さんがいようとも、
「これを最後にしてね」と、途中からは釘を刺すようにした。

実際、
氷を口に入れだす子も現れて、
鼻の下を伸ばしていると、キケンな場面にも遭遇しだしたし。

不衛生に加えて、
氷は、純粋な水ではなくて、
早く氷にするための薬が入っていたから。

     ★

人には、
「誰かにやさしくしたい欲」というのが、
あると思う。

大人になるほど、
いや、最近の時代は、
こういう欲を満たせない環境下にあると思う。

人に理由もなくやさしくすると、怪しまれるとか、いろいろあって。

でも、子どもと接するとき、
こういう欲って、無性に掻き立てられるように、
湧いてくるものだ。

なので、
そういう欲を常日頃満たせていないと、
目先の行動で、満たしたくなる衝動に
つい駆られるけれど。

先のことも見通さず、
子どもに責任も持たせずに、
目先の行動のみでやさしく接することを、
「甘やかす」という。

それは自分の「欲」であって、本質的な「優しさ」ではない。

「最後にしてね」と言う私を避けて、
子どもたちは、
メーカーの男の人たちに群がっていく。

どこで、どうやって、
このエスカレートしてくる子らに、
一線を引くのか、
私は冷ややかに横目で見ながら、自分なりの仕切りをし続けた。

     ★

メーカーの商品と氷を提供してくれていたのは、
フランチャイズのお店(そのメーカーの牛乳配達所ってことね)だった
(っていうか、
そのお店のためにメーカーさんが手助けをしているような感じだった)。

午前は車で商品の補充のため、往復していた
その店の老夫婦も、
午後からは一緒にこの売場にいた。

氷に薬が入っていることを教えてくれたのは、
その奥さんだった
(勝手に「おかみさん」とあだ名をつける)。

おかみさんも、私同様、
安易に氷を渡すのをヨシとしていない空気を発していた。

そして、私らが、
氷を渡したり、飲み物を売ったりして、
手元ぐらいしか見ていない間に、
おかみさんは、子どもらが、氷をどのように扱っているか、
じっと見ていたようで。

ある段階になって、おかみさんは、
氷をもらいにきた子らに、
「もうあげないから」とぴしゃりと言った。

おぉ!すがすがしい。

その根拠は?
という顔で、私はおかみさんを見た。

おかみさんは、
「氷をもらった子と、もらってない子で、
ケンカを始めてたし、
そのケンカで、氷を相手に投げたりし始めたからねぇ」
と、言った。

ふと、この前、
東大阪歌会で北里くんが、
先進国が、発展途上国に道路を作った結果、
さらに現地での貧富の差が激しくなったりしている、
って言ってたのを思い出した。

変なところに、繋がってます?私の脳回路(笑)

この後も、子どもたちは、
氷をもらいに来たけれど、
なるべく理由を言いながら、
あげることが出来ないことを、言うようにした。

納得いく子もいれば、納得いかない感じの子もいた。

ま、反応は様々で、当然だろう。
後は自分で考えろ、ってところ。

     ★

私だって、目先の行動で、安易に簡単に、
「やさしくしたい欲」を満たしたい衝動に駆られたりする。
揺さぶられる。せめぎあう。

考えすぎて、こんがらがって、
裏目に出たりすることもある。

その葛藤がイヤで、子どもたちとの接触から、
遠ざかりたいと思ったりする。

わかっているけど、こういう仕事、引き受けるんだよなぁ。

多分、また依頼があっても、
私は間違いなく、
こういう仕事を引き受けるんだろう。

目先の自分の好奇心に勝てなくて。
人に厳しく自分に甘く。

氷もどんどん減ったけど、商品もそれなりに売れて。
表面的には無難にこなした一日でした。

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4 コメント

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Unknown ()
2007-09-08 01:17:40
氷をそんな風に貰いに行けないし、
氷をあげるのにも躊躇するだろうなあ、と想像しつつ
読みました。

「氷は口に入れないで下さい、死にます」と来年は張り紙必須かしら。

親の立場としたら、ムスメ(幼~大の女子小を無謀にも受験→不合格予定)がこうならもれなくはり倒す(と思う)。

みんなでやれば…もあるかもしれないけど
こういうことができるのってホントにお嬢様なのかっ親の顔が見てみたい
返信する
お嬢様学校 (いなだっち)
2007-09-08 12:54:35
平日だったせいか、
親が少なかったですね。
っていうか、おかみさんによると、
昔は本当に「お金持ちの子」って感じの子が多くて、
平日の運動会でも、
夕方とかに、
車を学校に横付けして、
子どもの晴れ舞台をチラッとでも見に来ていた親が、
今より比較的多かったということでした。

「学校に入れるだけ入れて、
あとは必死で働く親が多くなったんじゃないかね」

と、私には見えない、
運動会の歴史を見通すような目で
おかみさんが言っていたのが、
印象的でした。

     ★

黙って氷をとって、
店側の人間(私)が呆気にとられて、
フリーズすれば、助長していく。

氷以外のことでも、
「どこまでOKなのか」ということを、
なんらかのかたちで、試してくる子らが、
結構いました。

子どもってそういうものなのかな、と、
半分は思うけど。でも。

いや、子どもより。

私以外の接客(?)をしてた人たちの
寛大さのほうが、受け入れがたかったですけどね。
私は。

私自身、一番最初、
「何故氷をあげてはいけないのか」という
明確なものを持っていなかったことと、
「暑いんだから、ちょっとぐらい」という気持ちで、
どっちつかずに、固まった。

相手が望むことを与えることほど、
楽なことはないです。

でも、どうしてそれをスムーズに、
葛藤もなく出来るのか、私にはわからない。

タダだから?笑ってもらえるから?

でも、フランチャイズのお店の人にとっては、
実はそれだって、タダじゃないんだし。

喜ばれるったって……。

親とは言わない。
子どもに対する大人の責任て、本当に大きい。

おカタイんでしょうかねぇ……。

     ★

生徒さんたちが、
「お嬢様」なのかどうかは、
私立の学校だからといって、
決め付けられなくなっている気はするけれど、
いろいろと、厳しいしつけ(?)で、
有名な女学院ではございます。

実は高校受験で私はここを受けているので、
少なくともその当時の情報ではそうでした。
(行きませんでしたけどね。すべり止めだったんで)

そういう伝統を保つことも、
大変なんだろうな、って、
2年目の中高一緒になった運動会を見ながら、
思ったりしていました。
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ありえない・・・ (水野沙羅)
2007-09-09 06:56:50
「氷をもらおう」という発想自体が、私の中では、「!?」という感じです。

教師や親が、「迷惑になるから(貰うのは)やめなさい」と、何故すぐに注意しなかったのか。そちらの方が、不思議です。
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見ていませんでしたからねぇ……。 (いなだっち)
2007-09-09 07:34:02
教師も親も、見ていなかったですからね。

確かに、暑い日ではあったんだけど。

関係性の境界線がゆるゆるっていうのは、
ホント、苦手です。

昼から先生が、運動場に水をまいていました。

子どもらがそれの中に飛び込んで、
水浴びをして、きゃっきゃきゃっきゃ言っていました。

先生と子どもらの関係で、それをするのはいいと思うけど、
売り物のためにある氷をもらっていこうとするのは、
絶対違うと思うのです。

そういう子らが、これから
大人になって来るんだなぁ~と、
自分を棚に上げて(笑)、思うのです。
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