日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

マネキンが嫌がる仕事・後編

2009年09月02日 | お仕事な日々
派遣会社の人が声をかけた人は、
以前、忙しい店のパンの品出し作業で、
一緒にお仕事をしたことがある人だった。

私は軽く会釈する。

派遣会社の人が、宅配牛乳の勧誘のイベントの仕事の依頼をする。

「え……、えぇ……」実に嫌そうな反応。そうだろ。そうだろ。

やりとりを横で聞いていると、
やはりその女性も、仕事がないので、困ってはいた。
が、この宅配牛乳の仕事をしたことがあるのは、
もう半年も前だし……と逃げ腰。

説得していた派遣会社の社員さん宛てに、電話が入り、
場所を離れたのを機に、私はいろいろお話を聞いた。

「研修は、確かに受けたけど、
もう大分前の話しだし、やり方なんて覚えてないし……。
半年前にした時だって、前日に
『あぁ、あの仕事をするんだ……』と思うと、
もう憂鬱になって、眠れなくなったりしてねぇ」

あぁ、わかるわかる。

「研修した人で、ここに残っている人(つまり、今でもマネキンをやっている人)
ってどのくらいいるんですか?」

聞いてみると、

「いやわかんないけど……。もう2、3人じゃないかな。
○○さんと△△さんとMさんと……」

「あ、私、Mさんとは3回ぐらい一緒に仕事したんです」

Mさんとは、4月から何度か一緒に仕事した、ベテランさんのこと。

「その時に、状況的に、機械操作を覚えざるを得なくて、
出来るようには、なったんですけど……。
ただ、なんとなく、骨の強度がね、低めの数値が出ちゃうんですよ。
すごくそれが不安で……。
Mさんは、気にしなくていいっていうけど、
あの機械自体古いし、なんていうかその……」

「ひきずっちゃいません?変な数値が出た人のこと」

「そうですそうです」

「Mさんはね、出来てるのよ。人間が。
聞いたこともあるんだけど、引きずらないんだって。
割り切れるんだって。
そういう人は、全然平気な仕事なんだろうけど」

「なかなかそういう人はいませんよね」「……ねぇ」

Mさんのことも、いつか書けたらいいけど。
……今はちょっと予定できないな。

     ★

派遣会社の人が、電話を終えて戻ってきて、
再び、その人を説得し始めたけど、
「今ここで返事しなくてもいいですよね。また連絡します」
で、押し切って、逃げるように帰ろうとした。

私もそれにひっついていく……というか、同じ方向だったので、
流れで、一緒に帰ることに。

その人が研修を受けて、
その宅配牛乳の勧誘を始めた頃は、
もうひとつの別の派遣会社(メーカー専属の派遣?)から来た人と組んで
この仕事をしていたという。

そのもうひとつの別の派遣の人は、
ノルマを持たされていたらしく、
もろに給料に響くので、
ものすごくお客さんに積極的にアタックをして、
契約をとっていたという。

それは初耳だった。

「……その積極さに、ドンビキしたのよね、私は」と、
ため息交じりにその人は言った。

「契約とって、その場はいいんだけどね。
でも、後になって、
宅配所に『やっぱりやめときます』っていう、
お断りの電話も結構あったんだって。
時にはその強引さで、クレームになったこともあるとかで……」

強引さ……ふと、奈良で一緒にした、宅配所の人の顔がよぎった。
あんな感じなのかな。

「(私らの)派遣会社も、
もう一回研修でもして、人を募ればいいんですよね。
それで、なんか、特別手当とかつければ、
嫌でも、続ける人はいるんじゃないのかなぁ……」

これは、指名を断るときに、
派遣会社に提案していること。
まぁ、私はあっても受けないと思うけど、研修。

「最初はね、手当もついてたの。でも、
なんだったかなぁ~、なんかのきっかけで、つけなくなったのよ」

なんだ、すでにやってたのか。
で、立ち消えかよ。

……なんで私がするときだけでも、思い出してくれなかったんだ、
その特別手当(笑)

いずれにせよ、返事を延ばしたこの人も、
きっと断るだろうなぁと、電車の中で話をしながら、
私は確信し、

「自分主体でいろいろ選択できることだけが、
この仕事のいいところなのにねぇ」

という意見の一致まで見て、乗り換えるため私は電車を降り、
その人と別れた。

Mさんは、別のイベント専門の派遣会社にも登録していて、
土日や、連休は大概、どこかの結婚式場で、
うさぎさんや、ゆるキャラの着ぐるみを着て、働いている。

(ちなみに、Mさんは、女性です。
で、そっちのほうが本業という意識で、仕事をしているんだそうです)

多分、私の穴埋めが出来るほど、暇な人ではないだろう。

あぁ、誰でもいいと思いつつも、
いざ、人を見ると、嫌がる気持ちがわかって強く言えない。

でも誰か。私が逃げた日程の日に、骨の強度を測ってあげて。

     ★

奈良の宅配所の人のことは、
シルバーウィーク後に。

でも、「印象が変わった!勘違いしてた!素晴らしい人だった!」
みたいな内容で、書けたらいいのになぁと、願っています。

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