スマートフォンを使う上で特に気になる性能の1つが「バッテリーの持ち」だろう。
バッテリーを消費する最も大きな要因といえるのがディスプレイだ。
スマートフォンは従来のケータイに比べてディスプレイが大きく、タッチパネル対応のためバックライトの点灯時間も長い。
PCサイトの閲覧やマルチメディアコンテンツの視聴など、PC並みの処理が求められることも電力消費に拍車をかける。
さらに、アプリケーションによってはバックグラウンドでの通信も増え、ユーザーが能動的に操作をしていないのにバッテリーが減ることもある。
今回は、2011年10月から2012年1月までに発売された34機種に、ドコモの「MEDIAS LTE N-04D」「Xperia NX SO-02D」「Xperia acro HD SO-03D」を加えた37機種のバッテリースペックと省エネ機能をまとめたほか、Xperia NX/acro HDを除いた35機種でベンチマークテストを行い、各モデルのバッテリー性能を比べてみた。
【バッテリー容量と連続待受時間/通話時間を比較】
小型PCと言っても過言ではないスマートフォンには、ケータイよりも大容量のバッテリーが搭載されており、最近では1500mAhを超えるバッテリーを備えた機種も多い。
今回取り上げた35機種の中ではイー・モバイルの「GS02」(Huawei製)のバッテリー容量が最大だ。
次いで1850mAhの「GALAXY S II LTE SC-03D」「GALAXY S II WiMAX ISW11SC」、1840mAhのXperia acro HD、1800mAhの「Optimus LTE L-01D」が大きい。
これらはいずれも海外メーカーだが(Xperia NXは日本でも開発はされているが)、国内メーカーでは「MEDIAS PP N-01D」と「MEDIAS CH 101N」の1700mAhが最大だ。
続いて連続待受時間と連続通話時間も見ていこう。
これらの数値はキャリアごとに計測しているので単純には比較できないが、数値のみを見ると、連続待受時間(3G)はソフトバンクの「AQUOS PHONE 103SH」の約640時間が最も長く、MEDIAS PP/CHの約630時間がこれに続く。
連続通話時間(3G)が最も長いのは、auのGALAXY S II WiMAXの約670分だ。端末の状態や通信環境によって連続使用時間は変化するので、これらの数値は参考程度にとらえておきたい。
2011年夏モデル「AQUOS PHONE f SH-13C」を皮切りに、端末とケーブルを接続せずに充電ができる規格「Qi」に対応したスマートフォンも増えている。
今回取り上げたモデルでは「F-03D Girls'」、MEDIAS PP/CH、「AQUOS PHONE slider SH-02D」がQiをサポートしており、いずれも「ワイヤレスチャージャー」が同梱されている。
また最近では防水端末が増えていることもあってか、キャップの劣化をある程度抑えられる卓上ホルダに置いて充電できるスマートフォンも増えている(浸水のリスクが増すため)コネクタカバーを頻繁に開閉することが望ましくない防水端末ではうれしい措置だ。
この中では特に、富士通/富士通東芝モバイルコミュニケーションズとシャープが積極的に卓上ホルダを採用している。
同梱物の少ないau端末では「ARROWS ES IS12F」がこの中では唯一、卓上ホルダを同梱している。
【Androidの省電力機能で何ができる?】
Androidスマートフォンではバッテリーの持ちを向上させるために、省電力機能を備えているものが多い(機種ごとの省電力機能は前項の表を参照)
NTTドコモは同社のスマートフォン共通の「ecoモード」アプリをプリセットしており、独自の省電力機能を持つNECカシオモバイルコミュニケーションズ、パナソニック モバイルコミュニケーションズ、シャープ製以外の機種で利用できる。
省電力機能やアプリを利用することで、Wi-Fi、Bluetooth、GPS、アプリの自動同期などが一括でオフに、ディスプレイの明るさが低輝度になるなど、バッテリー消費の大きい機能を簡単に停止できる。
機種によっては、省電力にするための項目を自分で設定する、指定したバッテリー残量になったら自動で省電力モードに移行するなどの設定もある。
この中で特に工夫を感じられるのがシャープの「エコ技」だ。
エコ技では「通常モード」「技ありモード」「お助けモード」という3つのモードを用意している。
充電環境がない中でバッテリー消費を抑えたいときは技ありモード、1分1秒でもバッテリーを抑えたいときはお助けモード、といった具合に使い分けられる。
初期状態は通常モードに設定されており、そもそもエコ技オフという概念はない。
モードによって省電力設定の内容は異なるが、通常と技ありについては(Wi-FiはオフになるがBluetoothはオンにするなど)設定をカスタマイズできる。
独自機能として注目したいのが「省エネ待受」だ。
これをオンにすると、ディスプレイが消灯した際にバックグラウンドで動作するアプリの動作が停止し、無駄な通信を抑えられる。
朝起きてスマートフォンをチェックしようとしたら、いつの間にかバッテリー残量がゼロになっていた――といった事態も少なからず防げるだろう。
この省エネ待受が有効のときに停止するアプリは、「対象外リスト」でユーザーが決めることもできる。
同リストで任意のアプリのチェックを外せば、そのアプリは省エネ待受の稼働中にも停止されなくなる。
また、指定した時間に通常/技あり/お助けモードに切り替える機能もあるので、例えば就寝中はお助けモードにするといった使い方もできる。
ドコモが提供しているecoモードからも詳細な設定が可能だ。
省電力設定をカスタマイズ、バッテリー残量に応じてecoモードをオン/オフ、ピクトエリアにバッテリー残量を常時表示、充電中にecoモードをオン/オフ、ウィジェットからワンタッチでecoモードをオン/オフにするなどが可能。
バッテリー残量に応じて省電力機能を有効にするのは他機種でもおなじみだが、ecoモードでは、Wi-Fiオフは50%から、自動同期オフは30%から、画面の明るさ低輝度は20%からなど、自動で切り替わるバッテリー残量を“項目ごとに”設定できる。
京セラが「DIGNO ISW11K」と「HONEY BEE 101K」に搭載した「省電力ナビ」では、省電力モードを設定すると、待受時間がどれほど延びるかの目安が分かる。
省電力の設定をカスタマイズできる「カスタム省電力モード」では、「Wi-Fiをオフにすると待受時間が約36分延びる」など、項目ごとの効果も参照できる。
MEDIAS PP/LTE/CHに搭載されている「ecoモード」では、設定したバッテリー残量になると自動で稼働する「オート」、省電力設定の内容を自由に決められる「お好みecoモード」、より徹底して節電する「しっかりecoモード」を利用できる(MEDIAS BRではオートかオンのみ)
さらに、MEDIAS PP/LTE/CHには画面の自動回転、Wi-Fi、Bluetooth、GPSなどを一括で切り替えられるウィジェット「外出設定」「自宅設定」「就寝設定」などもある。
環境や時間帯に応じて使い分けると便利だ。
GALAXY S II LTEとGALAXY S II WiMAXには同じ名称の「省電力モード」が搭載されているが、設定内容が異なる。
GALAXY S II WiMAXでは省電力モードを即オンにできるが、GALAXY S II LTEではバッテリー残量が70%以下になったときからしかオンにできない(70%未満の他の%にも変更可能)
また、省電力設定に自動移行するバッテリー残量は、GALAXY S II LTEは先述のとおり70%からだが、GALAXY S II WiMAXは50%からとなっている。
このほか、富士通東芝は「エコモード設定」、Huaweiは「省電力モード」、HTCは「自動省電力機能」、Motorola Mobilityは「バッテリーモード」、パナソニック モバイルは「エコナビ」を用意している。
「GALAXY NEXUS SC-04D」をはじめとするAndroid 4.0搭載スマートフォンでは、アプリごとにバックグラウンドの通信を制御できる。
これはデータ通信量を抑えるために新設された設定だが、省電力にも貢献するだろう。
【iPhoneは省電力設定が不要?】
なお、iPhoneはここで取り上げたような省電力機能はプリセットしておらず、無線LAN、Bluetooth、GPS、画面の明るさなどは「設定」から個別に変更する必要がある。
これはこれで手間がかかるが、iPhoneはAndroidほど省電力設定を施す機会は少ないのではないだろうか。
というのも、iOSではAndroidに比べてアプリがバックグラウンドで動作して負荷を与えることが少ないからだ。
iPhoneではホームキーを2回押すと、画面下部にこれまで使用したアプリ一覧が表示されるが、これらはあくまで「最近使ったアプリ」であり、すべてがバックグラウンドで動作しているアプリではない。
実際、電源を切って再起動をしても、これらのアプリは画面下部に表示される。
AppleのWebサイト(外部リンク)にも解説されているが、バックグラウンドでアプリが動作していても、メモリやバッテリーへの影響は少ない。
画面下部のアプリ一覧からアイコンを長押しして「-」をタップすればアプリは終了するが、必ずしも終了させなくていいわけだ。
そもそもiPhoneにはバックグラウンドでの通信をオフにするといった設定がない(通知のオン/オフはできるが)
GPS、音楽やラジオ、VoIPアプリなどバックグラウンドでも動き続けるアプリについては、ピクトエリアにアイコンなどで動作中である旨が表示される。
Androidでは必要以上に裏で通信をするアプリが多いため、必然的にバッテリーの消費が増す。
せっかくのスマートフォンなのにWi-FiやGPSをオフにするのはスマートではないし、省電力設定なしで快適に使えるのが理想だろう。
【YouTube動画を2時間再生……最もバッテリーが持った機種は?】
ここまでバッテリー容量、連続使用時間、省電力設定などを見てきたが、実際のところバッテリーが持つのはどの機種なのか。
これを調べるため、2月5日から2月23日にかけて、東京都江東区の室内にて35機種のベンチマークテストを実施。
35機種で2時間強のYouTube動画を再生し、1時間後と2時間後のバッテリー残量を記録した。
計測条件は以下のとおり。
- 満充電の状態で計測開始。
- Android端末では「Battery Mix」アプリを使って残量を確認。
- 動画視聴時のディスプレイは常時点灯のまま。
- 端末に保存されているアプリ数はほぼ初期状態のまま。
- Wi-Fi、GPS、Bluetoothはオフに。
- ディスプレイの明るさは中間程度に統一。
- LTEとWiMAXは圏内だったので、auのWiMAX対応機はWiMAXをオンにした。
なお、スケジュールと充電環境の都合上、35機種すべてを同じ時間帯ではテストできなかった。
完全に同一の環境下で実施したテストではないので、数値はあくまで参考値ととらえてほしい。
1時間後と2時間後に最もバッテリー消費量が少なかったのは、MEDIAS PPだった。
最初の1時間では6%しか消費せず、2時間後の残量は唯一の80%台である80%だった。
MEDIAS PPの「PP」は「Power Plus」を意味するが、バッテリー機能に注力したPPの面目躍如といえる。
次いで好成績だったのが兄妹モデルのMEDIAS CHで、2時間後の残量は76%だった。
iPhone 4Sのバッテリーも安定しており、auとソフトバンクともに1時間後が82%、2時間後が73%だった。
バッテリー容量が最大のGS02も長持ちし、2時間後は64%だった。
以下、GALAXY S II WiMAX(58%)、「STAR7 009Z」(56%)、103SH(54%)と続く。
2時間後の残量は40%~50%台前半が最も多かった。
スペック上の連続待受時間が最長の103SHは7位、バッテリー容量が最小の101SH(1020mAh)は13位の50%で意外と持ち、必ずしもスペックに準じた結果にはならなかった。
一方、バッテリー消費が最も激しかったのがMEDIAS LTEで、2時間後にはわずか11%しか残らなかった。
同じNECカシオ製のMEDIAS PP/CHとは対照的だ。
MEDIAS LTEのバッテリー容量1520mAhはPPやCH(1700mAh)よりは少ないが、それだけでここまでの差が生じたとは考えにくく、LTE対応のベースバンドチップが影響している可能性が高い。
次いで19%のARROWS Z、24%のSH-01Dもあまり持たなかった。
MEDIAS LTE、ARROWS Z、SH-01Dに共通するのがHD液晶を搭載していること。
解像度が上がるとピクセルのサイズが小さくなり、バックライトの光が透過しにくくなる。
したがって相応の輝度アップが必要になり、その分消費電力が増す。
ただ、同じくディスプレイ解像度がHDで有機ELを搭載するGALAXY NEXUSは50%、GALAXY S II WiMAXの残量は58%で比較的長持ちした。
MEDIAS PP/CHのディスプレイも有機ELだ。
再生した動画は黒い背景が多かったため、自発光の有機ELは液晶よりも消費電力を抑えられたのかもしれない。
そう考えると、HDに次いで高解像度の640×960ピクセルの液晶を搭載するiPhone 4Sは優秀だ。
iPhone 4Sのバッテリーの容量は公表されていないが、1420mAh程度と言われており、2時間後の残量上位のモデルよりも少ない。
ソフト側で消費電力を抑える高度な処理が行われているのだろう。
「バッテリーがあまり持たない」と言われるLTEスマートフォンではGALAXY S II LTEの52%が最も長持ちした。
ARROWS X LTEは41%、Optimus LTEは35%で、MEDIAS LTEも含めて全体的に低調だった。
auのWiMAX搭載スマートフォンでは58%のGALAXY S II WiMAXが最も持ち、以下「MOTOROLA PHOTON ISW11M」(50%)、「HTC EVO 3D ISW12HT」(48%)、DIGNO (43%)、ARROWS Z(19%)と続く。
WiMAX/LTE対応機は、どちらもSamsung端末が高い実力を発揮している。
先述した省電力機能をオンにした状態ではどうか。
SH-01Dでエコ技の技ありモード、ARROWS Zでエコモード(すべての省エネ機能をオンにした)を有効にしたところ、2時間後の残量はSH-01Dが36%(24%から向上)、ARROWS Zが33%(19%から向上)で、一定の効果が得られた。
GS02の省電力モード使用後も、2時間後の残量は省電力モード未使用時の64%から、70%に上がった。
一方、DIGNOの省電力ナビ使用後の残量は、未使用時の43%よりも少ない41%だった。
今回のテストではバックライトが常時点灯していたので、あまり効果が得られなかったのかもしれない。
バッテリーをいかに持たせるかは、現在も各メーカーが苦心している部分だ。
バッテリー容量、ディスプレイ、CPU、アプリ通信など、さまざまな要素からアプローチする必要があるだろう。
一朝一夕に解決できるものではないが、スマートフォンの省電力化がさらに進むことを期待したい。
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