「里の秋」
斎藤 信夫 作詞 ・ 海沼 実 作曲
静かな静かな 里の秋
お背戸に木の実の 落ちる夜は
ああ 母さんとただ二人
栗の実 煮てます いろりばた
明るい明るい 星の空
鳴き鳴き夜鴨の 渡る夜は
ああ 父さんのあの笑顔
栗の実 食べては 思い出す
さよならさよなら 椰子の島
お舟にゆられて 帰られる
ああ 父さんよ御無事でと
今夜も 母さんと 祈ります
<一口メモ>
この歌は下記のような経緯で生まれたこと、ご存じでしたか?
昭和20年8月15日の敗戦で
南方や中国大陸から軍人や民間人たちが
心身共に疲れて続々と引き揚げて来ました。
NHKは彼らを励まそうと特別ラジオ番組を企画
その特別番組は「外地引揚同胞激励の午后」と題して
昭和20年12月24日に放送されたそうです。
そして
この特別番組の中で、童謡歌手の川田正子が歌ったのが、
この「里の秋」だったのです。
川田正子がこの「里の秋」歌い終わるや否や、
スタジオ内はシーンと静まり返り
そこにいた全員が心の浄化を感じたそうです。
「里の秋」に対する反響はすさまじく
放送が終わるや否や、局内の電話が一斉に鳴りだしたそうです。
元々この歌は
斎藤信夫作詞『星月夜』という童謡だったそうですが
作曲を担当した海沼実が、曲名を「里の秋」と変え
また3番と4番の歌詞が軍国主義的な内容になっていたために
原作者の齋藤に頼んでこれをカット
代わりに今の3番の歌詞が加えられたのだそうです。
大ヒットの裏にはいつもこのような秘話が潜んでいますね。