野球小僧

タイブレーク時代の名勝負

日本高等学校野球連盟(高野連)は大きな決断を下したと思います。今年の夏の選手権大会からタイブレーク制度を導入するというものです。昨年9月には春の選抜高校野球での導入は決定していましたが、夏の選手権大会(地方大会を含む)でも適用されることを決定したのです(ただし、選抜、選手権とも決勝戦はタイブレークを行ないません)。

タイブレーク制のもう一度おさらいしますと、早い話がタイブレーク制とは試合を長引かせないために決着をつけるためのルールです。今回決定された高校野球のタイブレークは延長12回で試合の決着がつかなかった場合、13回表からノーアウトでランナーを一塁と二塁に置いて試合するというものです。攻撃側は得点チャンス、守備側は失点のピンチという状況を人工的(?)に作るのです。打順はそのままで二塁と一塁のランナーは打席に入るバッターの前の打順の選手が入ります。

ただ、どうでしょう。高校野球では、この状況なら好打順でない限り、送りバントの可能性が大きくなります。バントが成功すれば1アウト二・三塁と得点の可能性は大きくなるのですが、守る側も予測しやすいです。ポイントは2人目のバッターではないかなと思います。

さて、タイブレーク制導入の大きな理由は選手の健康面への配慮。特にピッチャーの投球数問題への対処だと思います。延長が続けばピッチャーはそれだけ多くの球数を投げることになるし、野手だって負担は大きいですし。早く決着をつけるルールとしてはいいことでしょう。また、スケジュールどおり大会を進行させたいという意図もあるでしょう。

ところでタイブレークの場合の記録は次のようになるそうです。まずピッチャー成績。出塁している2人のランナーが生還しても自責点にはなりません。ただ、完全試合はこの時点でなくなってしまいますが、ヒットを打たれず無失点の場合にはノーヒットノーランは継続します。バッターは2人のランナーの出塁記録は認められませんが、その後のプレーの盗塁、得点、打点などは記録に残ります。

タイブレーク制を採用するのは野球界全体の流れであることも事実ですし、野球世界一を決めるワールド・ベースボール・クラシックでは2009年の第2回大会から導入されています(延長11回から)。WBSCプレミア12は延長10回から、北京オリンピックでは延長11回から採用されています。

日本でも社会人野球の都市対抗では延長12回、学生野球の全日本大学選手権では10回からタイブレークが行われるようになっており、今や社会的にも認知度は高いと言うことになります。

反対意見があるのも事実です。それは高校野球ならではのドラマがなくなってしまうというものです。高校野球史に残る名勝負には延長戦絡みの試合が多いのがその理由でしょう。

1969年夏の決勝では三沢商高の太田幸司さんと松山商高の井上明さんが延長18回の投げ合いを見せ、翌日の再試合でも9回を投げ抜きました。
1998年夏の準々決勝、横浜高 vs. PL学園高では延長17回を投げ抜いて勝利した横浜高のエース松坂大輔選手。
2006年夏の決勝では駒大苫小牧高・田中将大選手と早稲田実業高・斎藤佑樹選手の延長15回の投げ合いで引き分け。

こうしたドラマは生まれなくなります。

でも、冷静に考えてみればタイブレークが適用されるような試合は、そうそうあるわけではありません。延長戦は全体の1割ほどですが、13回を超えたのは最近10年間で春夏合わせて10試合。1年に1回あるかどうかという確率です。都市対抗野球では2011年から延長12回でのタイブレーク制を採用し、11試合で適用されていますが、最長でも13回で決着がついています。プロ野球でさえ、年間143試合で2~3試合ほど。1試合もないチームもあります。

これからはタイブレーク時代に合わせたプレーが導入されるようになるでしょう。攻撃では如何にして1点を取る方法を研究されることでしょう。守備ではタイブレーク用のシフトを敷いたりといったように。見る側も新たに見られるタイブレークならではのプレーがあると思います。

中学野球での経験がありますが、ノーアウト満塁で相手チームを0点に抑える場面は、応援していて爽快でした。また、自チームが思いがけないボテボテのゴロで、ランナーの判断力や見事な走塁で1点をもぎ取る場面は見逃せませんでした。

延長戦でノーアウト一・二塁。ピッチャーが三者三振を奪ったり、野手が必死のプレーを見せたり、と0点に抑えるといったこともあるでしょう。または、相手チームに大量点を奪われ、その裏の反撃で取り返し、さらには逆転するようなことが起これば、球場は興奮に包まれることでしょう。13回で決着がつかなければ、タイブレークによる緊迫した攻防はその後も続きますので、続けば続くほど、タイブレーク時代における伝説的な名勝負が生まれることだってあり得ます。

ともあれ今年から採用される高校野球のタイブレーク制。もし適用される試合が実際にあれば、それはそれで大きな話題になるでしょう。


コメント一覧

まっくろくろすけ
eco坊主さん、こんばんは。
そうなのです。過去がどうの、未来が同のではなく、過去は過去、未来は未来。
現在を現在のルールに従って楽しめばいいのです。

もう、10年も経てば、タイブレークが当たり前の高校球児しかいませんしね。

「『与えられた場所のポンと入って、その中で頑張りゃいい』というのが私の志向であり、アマレスをやってしまったのだって、オヤジの言うがままだった。そう考えると、私にはこれまで”自ら選択する人生”などなかったとも言える」
by ヤノ・トー・ルー
eco坊主
おはようございます(*Ü*)ノ"☀

タイブレークは確かに賛否両論!
ロープブレークは矢野通の常套手段!

年間で数試合の戦略を考える指導者も大変でしょうしやる選手も戸惑うではないでしょうか?いくら練習しても相手があれば違うでしょうしね~

でも観る方は楽しんで観ればいいんですよね。
タイブレーク時代における伝説的な名勝負に期待ですね!!
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