昨日、組み合わせ抽選も終わり、組み合わせが決まりますと、今年も全国高校野球選手権大会「夏の甲子園」も本番を迎えます。折しも、気象庁が「今後2週間は全国的に気温がかなり高くなる可能性がある」として、熱中症などに注意するよう呼び掛けがありました。球児たちには体調に気を付けて欲しいとともに、熱さを吹き飛ばすような試合を見せてくれることを期待します。
■第1日 8月7日(日)
▽一回戦
第一試合 佐久長聖(長野) / 駅伝部や男子スケート部も全国レベル vs. 鳴門(徳島) / OBに西武の潮崎哲也ヘッドコーチら
第二試合 出雲(島根) / 弓道部、吹奏楽部などの部活動も盛ん vs. 智弁学園(奈良) / OBに巨人の岡本和真選手ら
第三試合 九州国際大付(福岡) / バドミントン部は五輪選手が輩出の強豪 vs. 盛岡大付(岩手) / OBにソフトバンクの松本裕樹投手
■第2日 8月8日(月)
▽一回戦
第一試合 いなべ総合(三重) / レスリングなどの部活動が盛ん vs. 鶴岡東(山形) / 卓球部も全国レベル
第二試合 中京(岐阜) / OBにソフトバンクの松田宣浩選手ら vs. 大分(大分) / 普通科、商業科、自動車工業科がある
第三試合 高川学園(山口) / 1984年に多々良学園で選抜出場。サッカー部も盛ん vs.履正社(大阪) / OBにヤクルトの山田哲人選手ら
第四試合 東邦(愛知) / 空手道部、水泳部なども全国レベル vs. 北陸(福井) / 男子ハンドボール部も全国レベル
■第3日 8月9日(火)
▽一回戦
第一試合 市尼崎(兵庫) / 普通科と体育科を設置。吹奏楽部も盛ん vs. 八戸学院光星(青森) / OBの田村龍弘捕手が球宴に初出場
第二試合 山梨学院(山梨) / サッカー部や駅伝部も全国レベル vs. 長崎商(長崎) / 初出場は1925年の伝統校
第三試合 東北(宮城) / OBに大リーグのダルビッシュ有投手ら vs. 横浜(神奈川) / OBにソフトバンクの松坂大輔投手ら
第四試合 近江(滋賀) / 男子バレーボール部は全国レベル vs. 常総学院(茨城) / 2003年には全国優勝
■第4日 8月10日(水)
▽一回戦
第一試合 関東一(東東京) / OBに楽天のオコエ瑠偉外野手 vs. 広島新庄(広島) / OBに巨人の田口麗斗投手ら
第二試合 京都翔英(京都) / 世界遺産・宇治上神社に近い。少林寺拳法が校技 vs. 樟南(鹿児島) / 「がんばれば感動」のもと、人材を育成
第三試合 星稜(石川) / サッカー部は昨年度の全国選手権3位 vs. 市和歌山(和歌山) / 2009年に市和歌山商から校名変更
第四試合 花咲徳栄(埼玉) / 女子野球部やレスリング部も全国レベル vs. 大曲工(秋田) / 陸上などの部活も盛ん。校訓は「正・忍・創」
■第5日 8月11日(木)
▽一回戦
第一試合 八王子(西東京) / OBに柔道五輪銀メダリストの小川直也さん vs. 日南学園(宮崎) / 世界大会に出場したサーフィン部がある
第二試合 富山第一(富山) / サッカーは全国レベル。ラグビーも盛ん vs. 中越(新潟) / 水泳なども盛ん
▽二回戦
第三試合 嘉手納(沖縄) / 春の選抜大会は2010年に初出場 vs. 前橋育英(群馬) / 3年前、現西武の高橋光成投手を擁して全国制覇
■第6日 8月12日(金)
▽二回戦
第一試合 聖光学院(福島) / 10年連続で戦後最長を更新 vs. クラーク国際(北北海道) / 野球部員は全日制
第二試合 松山聖陵(愛媛) / 自転車競技部も盛ん vs. 北海(南北海道) / OBに若松勉・元ヤクルト監督
第三試合 尽誠学園(香川) / OBに元オリックスの谷佳知選手ら vs. 作新学院(栃木) / 1962年に史上初の春夏連覇
第四試合 秀岳館(熊本) / 弓道は全国レベル vs. 常葉菊川(静岡) / 普通科のほか、美術・デザイン科がある
■第7日 8月13日(土)
▽二回戦
第一試合 木更津総合(千葉) / ソフトボール部は全国大会の常連 vs. 唐津商(佐賀) / OBに元ダイエーの藤井将雄さんら
第二試合 明徳義塾(高知) / 相撲部も強く、OBに大関の琴奨菊ら vs. 境(鳥取) / 元プロ野球投手の米田哲也さんら輩出
第三試合 創志学園(岡山) / ソフトボール部も強豪。普通科、看護科がある vs. 未定
さて、今年はどのようなプレーで盛り上げてくれるのか。楽しみですね。
1996年 第78回選手権の決勝戦は、有名な「奇跡のバックホーム」が起こった一戦でした。
1902年創部で出場25回目の愛媛・松山商高と、1923年創部で出場14回目の熊本・熊本工高との古豪同士の対戦。松山商高は二年生の新田選手、熊本工高はサウスポーの園村選手の背番号10同士の先発。
松山商高は初回1アウト一・二塁から、背番号1でライトについていた渡部選手がライト線に落ちる2ベースを放って1点を先制。その後、2アウト一・三塁となるものの、ここで熊本工高の園村選手が制球を乱し、六番向井選手以後3連続フォアボールとなって二者押し出しで、この回3点を先取。しかし、園村選手は二回以降はすっかり落ち着きを取り戻し、松山商高を八回まで2安打に抑えた。
熊本工高は二回裏1アウト後、ヒットと相手のエラーで一・二塁。ここで七番境選手がセンター前へタイムリーヒットを放って1点を返すも反撃はここまで。その後、七回まで2安打に抑えられた。しかし、2点を追う八回裏。この回先頭バッターが出塁し、二塁に送った後、次のバッターのフォアボールの球がパスボールとなり一・三塁。ここで二番坂田選手がセンターへ犠牲フライを打ち、1点差とした。
そして九回表、熊本工高は1アウト三塁のピンチを迎えるも、後続を内野ゴロ2つに抑えて切り抜けたものの、反撃が期待されたその裏の攻撃は四番と五番の代打の二人が三振に倒れ、2アウト。球場は松山商高優勝の雰囲気となり、試合終了まであとひとり・・・あとひとりから一年生が起死回生の一振り。六番の一年生沢村選手が初球をフルスイングで叩くと
「いい当たり・・・入ったー入ったー同点ホームラン!!!」「野球が持つ恐さ・・・ドラマですね・・・」
打球はレフトポールを巻く同点ソロホームラン、マウンド上で膝をつく松山商高の新田選手。試合は3-3の同点となり延長戦に突入。この追い詰められた場面で、初球から失投を見逃さずフルスイングとは大したものです。
しかし、この試合の最高潮は別に準備されていました。
熊本工高は十回裏、先頭の八番星子選手が自身この試合3本目の安打となる左中間への2ベースを放つと、松山商高は好投してきた新田選手とライトを守っていた背番号1のエース渡部選手を交代。熊本工高は次のバッターがしっかりとランナーを三塁に送り、1アウト三塁。松山商高は満塁策をとって一、二番を歩かせての1アウト満塁とし、ライトの新田選手に代え、背番号9の矢野選手を守備に入れた。熊本工高のバッターは三番本多選手。
「この左バッターの本多くんはですね、インコースを上手く打てる選手だということを、頭の中に入れた方がいいですね」「ワキを絞って上手いバッティングをします」
「代わった所に打球が飛ぶ」と野球では言いますが、その言葉のとおり、本多選手の当たりは大きくライトに上がる。この瞬間アナウンサーは
「行った! これは文句なし」
と叫び、サヨナラ満塁ホームラン、またはライトオーバーのサヨナラヒットになると思った。少なくとも犠牲フライは確実だと誰もが感じた。
「しかし、戻される。打球は浜風に押し戻される」
そう、野球の神様のいたずらか、打球は甲子園特有の浜風に戻される。この打球を一度バックし、やや風に押し戻されたところを今度は前進してキャッチした松山商高の矢野選手。三塁ランナーの星子選手がスタートを切る。中継プレーでは間に合わない。一か八かのダイレクトバックホームを選択・・・
「また、暴投か・・・」
松山商高ナインは矢野選手が練習で強肩を持て余し、大暴投で失敗するところを何度も見てきていた。「ああ、またいつもの大暴投だ」としか思わなかった。
三塁ランナーの星子選手は最短距離で滑り込むことを考えていた。
「風を意識していました。当時、ものすごく風が吹いていたので、仮に飛球がライトへ上がったら押し戻されるな、と考えていました。ダイレクトで返球が来るだろうから、球は伸びてくると思っていました」
熊本工高の次バッターの西本選手は両手を挙げている。一塁ベンチからは一斉に選手も飛び出した。誰もが熊本工高のサヨナラ勝ちだと思った。しかし、返球を待つ石丸選手のミットに吸い込まれるボール。
「アウト! アウト!!」 「なんと! なんと!!」
本塁にダイレクトで届く好返球を見せて、三塁ランナー星子選手をアウトにし、仕留め絶体絶命のピンチを救った。解説者の方も
「私自身、両手に鳥肌が立っているんですね」
というくらい、球場は興奮につつまれしばらくは拍手の波が収まらなかった。
これで勢いに乗った松山商高は十一回表、この回先頭の矢野選手が2ベースで出て、1アウト一・三塁の場面から二番星加選手が初球プッシュバントで内野安打となり勝ち越し、さらに一・二塁に三番今井選手が2ベースを放って。この回3点を奪い、27年ぶり5度目の優勝を飾った。
「奇跡」という言葉がふさわしい、48000人の観衆が酔いしれた、球史に残る名勝負でした。
必ずしも、スーパースターはチームに必要ではありません。誰もが、スターになるチャンスがあるのです。
「明日のヒーロー 今日誕生」