高校生の夏は忙しいのです。卒業後に就職希望している生徒は、就職活動が企業の応募書類の受け付けが始まる9月5日から本格的にスタートしますが、7月~8月は求人の公開や会社(職場)見学、合同面接会などが予定されています。ただ、高校生の場合、学業を優先するとの考えから、大学生よりも厳しい制約が課せられています。
例えば、大学生は志望する会社のすべてに応募書類を提出出来ますが、高校生はある時期まで1社しか応募出来ません。東京都ならば9月中は1社しか応募出来ませんが、10月以降は2社応募出来ます。ですが、ほとんどの企業で9月中には採用活動を事実上終えているため、志望する企業への就職が難しい場合が多いのです。
大学生が何社も応募できるのに、高校生は1社しか応募出来ないというのは、就職協定で決められていることとはいえ、ちょっと不公平な気がします。また、面接で質問出来ることも限られるそうで、東京都の場合、「尊敬する人は誰か」「愛読書は何か」といった質問は、「就職差別につながる恐れがある」として、高校生には聞いてはいけないことになっています。高校では企業の面接を受けた生徒から質問の内容を事細かに聞き、思想信条に関する質問がされた場合、高校からハローワーク(公共職業安定所)に通報されるケースもあるそうです。
ほかにも、いろんな制約があるので、企業としては高校生の採用は面倒なことがあるはずですが、高卒就職は空前の売り手市場になっています。2017年3月卒の求人数は6年連続の増加となる約38万7千人。高卒の求人倍率は2.23倍と、大卒の1.74倍(2017年3月卒・ワークス大卒求人倍率調査)を大きく上回り、進学者の多い都市部の求人倍率は高騰し、東京都では6.93倍、大阪府では3.46倍に達しており、今年は昨年を上回る売り手市場になるようです。
実際、東京都立の商業高校には、2016年7月に学校に届いた求人数の半数が、2017年は最初の3日で集まったそうです。高卒採用を再開する企業に加え、新規で高卒採用を始める企業も増えているとのことです。この背景にあるのは、景気回復に伴う人手不足です。これまで大卒をターゲットにしていた企業でも、なかなか大卒が採れず、高卒にシフトしているそうです。
高卒求人に多い製造業や建設業を始め、飲食業、介護、福祉と、業種を問わず求人数が増えるなか、以前はなかった営業などのホワイトカラー職の求人も目立ち始めており、ある一定レベル以下の大学生を採用するなら、高校生のほうが素直で、一から育てたほうがいいと評価する声も中小企業を中心にあるそうです。
セルフ式うどん店「丸亀製麺」を展開するトリドールホールディングスは2016年卒から高卒採用を開始しました。2025年までに世界6千店舗体制の実現を目指し、人材の確保は重要な課題となっており、今年は130人の採用を目指しているそうです。
ただ、売り手市場だからといって、安易に就職先を選んでも失敗する可能性があります。大卒は入社3年で3割が離職するが、高卒は4割。そして、離職すると正規雇用での再就職は厳しく、選択肢も限られてくるのが現実です。
安易な就職は避けたいですが、進学も同じことが言えます。ただ、現在は昔と違って選択肢は様々です。一度就職して学費をため、進学する生徒もいます。
働いてみて、初めて自分の求めることがわかることもあるのです。