日本プロ野球(NPB)やメジャーリーグベースボール(MLB)に先立ち、韓国プロ野球(KBO)が開幕しています。
韓国は基本的に日本に比べて寒いので、プロ野球の開幕は日本と同時期か遅いのが通常です。また、ドーム球場が一つだけなので、野外での試合は寒く、故障のリスクもあると思います。それでも、時期を早めて開幕したのは、日本ではあまり話題になっていませんが、今年の8月にインドネシアのジャカルタなどで、第18回 アジア競技大会が開催されるからだそうです。よって、KBOの今シーズンはアジア大会の期間である8月16日から9月3日までは、試合が行われないことになっています。
ということは、KBOからはバリバリの一軍選手が選出されてくるでしょう。一方の日本は社会人から代表が選ばれます。うーん、日本の侍ジャパンって国際対応ではなかったのかと。確かにシーズン中のヤマ場に向けて、盛り上がりをみせる時期に、シーズンは中断することは出来ないという考えなのでしょう。KBOの対応とは正反対になります。
でも、KBOがアジア大会を重視するのは、韓国には韓国ならではの理由があるからです。韓国では「兵役法」といのがあり、すべての成人男子(韓国では満19歳で成人)に兵役の義務が課せられています。これは19歳になると徴兵検査を受け、健康状態、精神状態を判断されて1級~7級の等級に分類され、最短でも21カ月の間、兵役義務を果たさなければなりません。
ただし、免除となる場合もあり、現在、韓国でスポーツ選手が兵役免除を受けるには、オリンピックでメダルを獲得するか、アジア大会で優勝するしかないのです。この兵役免除は厳密には、「体育要員」としての服務ということになります。国威発揚に貢献する結果を残したスポーツ選手に対しては、4週間の軍事訓練と、選手あるいは監督、コーチなど、「体育要員」の資格を得た競技に3~4カ月従事することで、兵役を終えたとみなすということです。
以前、2002年のサッカー・ワールドカップや、2006年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)のベスト4で兵役は免除されましたが、兵役免除に対する社会の目は厳しく、2009年のWBCで準優勝したときは免除にはなりませんでした。
韓国の野球は2008年の北京オリンピックで金メダルを獲得し、多くの選手が兵役を免除されましたが、以後、オリンピックの競技種目から野球はなくなりました。東京オリンピックでは野球競技は復活するのですが、メダルを獲得は簡単なものではないでしょう。
ところがアジア大会は、アジア大会でプロも参加できるようになった1998年のタイ・バンコク大会以後、韓国は2006年のドーハ大会以外のすべてに優勝しています。日本は社会人野球チームで臨み、プロ主体の韓国には有利だからなのです。だからといって、韓国が兵役を終えていない選手を中心としたチームを組むと、韓国国内世論の批判を受けることになってしまいます。ですから、兵役を終えていない若手選手は韓国代表に選ばれ、納得されるために、いい成績を残さなければなりません。
兵役には、かつてはいろいろな問題があり、1990年代半ばまでは防衛兵制度という、服務期間は移動はできないものの、ホームゲームには出場できる制度がありました。また、スポーツ選手は負傷することが多いので、いろいろな理由をつけて、兵役を逃れることもありました。それに政治家や財閥企業の子に兵役逃れの人が多いなど、兵役問題は、社会の不公平の象徴のような存在となってもいました。
一足早いプロ野球の開幕は、兵役という韓国の若いスポーツ選手の厳しい現実でもあります。
一般的人にとっても兵役は大変なことです。基本的に兵役を終えないと就職することが出来ません。大学生の場合、二年生から三年生になるタイミングで休学して兵役に行くパターンが多く、韓国では大学を25歳で卒業する人が多くなるそうです。また、就職後に兵役に行くことはほとんどないそうです。なぜなら、韓国企業のなかでも「国のために、検査を受けたら早いうちに兵役に行くべきだ」と考える人が多く、兵役義務を果たしていない学生の就職が難しいからだそうです。高校を卒業して大学へ進学しない人の場合は、まず兵役義務を果たしてから就職するそうです。
兵役期間が終わっても、「予備役」として戦争に備えながら生活しなければなりません。毎年2泊3日くらいで定期的な軍事訓練を受けます。これが40歳まで続くのです。つまり、兵役が完全に終了するのは40歳になるそうです。
韓国は北朝鮮との緊張状態が続いている以上は、個人の自由よりも国家の安全が優先されるそうです。国防意識を高める意味でも、兵役制度が強固に維持されていなす。兵役は“国民団結”の象徴的な制度となっています。
韓国の兵役制度は、国民意識の形成にも重要な役割を果たしているよう。「兵役がないほうがいい」かどうかは簡単に答えが出せる話ではありませんが、無用な争いが起きないよう、関係各国の首脳陣の話し合いにかかっています。