覆面姿での活動が認められた、日本国の長野県長野市議会のグレート無茶議員とは真逆に、マスクや覆面の着用を禁止する「覆面禁止法」を制定したのが香港政府です。
香港では6月から反政府・民主化デモが続いていて、参加者はマスクや覆面などで顔を覆い、身元の特定を防いでいます。10月1日には各地で警察との衝突があり、双方に多数のケガ人が出ています。
デモが続いていることもあり、すでに香港は騒乱（事変が起こって、社会の秩序が混乱すること。また、そのような事変）というか動乱（世の中が動揺し、乱れること。また、その乱れ。暴動などのさわぎ）の状態となっており、香港政府の林鄭月娥（キャリー・ラム）行政長官は10月4日に、デモ参加者のマスクや覆面の着用を禁止する「覆面禁止法」を緊急状況規則条例により、制定したと発表しました。
覆面禁止法が発表されると、活動家らが反対デモ行進を敢行し、政府への抗議としてマスクの着用を呼びかけ、市内各地で予定外のデモが始まり、市民の多くは仕事を早退して、抗議に参加していたそうです。中にはバリケードを築いて道路をふさいだり、かの国の国旗を燃やしたり、複数の銀行や建物、駅や店舗を襲撃したりする人もいたとのことです。数日前には、日本の吉野家が壊されているニュースもありました。
これに対して、香港警察は催涙ガスを繰り返し発射し、14歳少年が警官に拳銃で脚を撃たれたとのニュースもあります。地元紙に掲載された声明文で警察は、「警官が自分の生命が深刻に脅かされていたため、1回発砲した」ことを認め、火炎瓶などを持った大勢の抗議者に襲撃されたためとしています。これも、数日前に高校生が胸を打たれたニュースに続いて、発砲による二人目の負傷者になります。
また、香港へ行った際には私もよく使っている地下鉄MTRが運休しました。これは駅の施設や職員への暴力行為が原因だとのことで、実際に駅構内外が燃えていたりしているニュース映像があったりします。また、車両が放火されたとの報道もあったりします。
香港国際空港を運営する香港空港管理局は、市内と空港を結ぶエアポートエクスプレスの運行を見合わせた日もあります。これも、私は空港へ向かう際に常に使用しているものですが、空港への確実な交通手段が絶たれてしまい、混乱に拍車をかけるものになってしまいました。
林鄭行政長官は、こうしたことなどが、「香港の街を破壊」しているとし、「悪化し続ける状況を放っておくことはできない」ということで、緊急状況規則条例の発動により、立法会（議会）の手続きを飛ばし、「覆面禁止法」を制定し、10月5日午前0時に発効しました。
医療・健康上の理由など、合理的な理由が明らかな場合には免責されるそうですが、マスクや覆面などを顔を覆えるもの全てが禁止の対象となり、フェイスペイントも含まれるそうです。違反した場合には、1年以下の禁錮や25,000香港ドル（約340,000 円）以下の罰金を科される可能性があります。さらに、この法律は外国人も対象となります。覆面（マスク）率の高い日本人は注意しなければ、職務質問されてしまうことも考えられます。グレート無茶議員は渡航を辞めておいた方がいいでしょう。
ところで、緊急状況規則条例とは行政長官が公共の利益のために必要だと判断した場合、議会の承認なしに規制を制定できる条例です。
香港が英国の植民地だった1922年に制定されたもので、1967年の暴動（共産主義者とその共感者と香港政府の間の大規模な暴動）鎮圧の際に使われたのを最後に発動されていませんでした。林鄭行政長官は、この覆面禁止法によって「非常常事態宣言を発令したわけではない」と強調していますが、香港は深刻な公共の危機にあると思います。
この覆面禁止法については、実際の運用は難しいと思いますが、さらに過酷な取り締まりへの第一歩になるのではないかとも思えます。もしも、香港の状況がより制御不能になれば、もちろん、かの国がただ座って傍観するわけにはいかないでしょう。
香港の憲法にあたる基本法では、本土で制限されている表現の自由、集会やデモの自由などが明記されています。また、英国からの返還に際して、2047年までは高度な自治を認めると取り決められてはいます。
私が海外で一番多く訪れている香港。これ以上の負傷者を出さず、一刻でも早く、平和で楽しい日常が回復して欲しいと、真に願います。
