「グリズリー(Grizzly)」とは、映画「ジョーズ」の大ヒットを受けて製作され、1976年5月16日に公開された米国映画です。日本では同年7月3日公開されています。
キャンプ客で賑わう国立公園で、クマが人を襲う事件が発生。そのクマは体長約5m、体重約1tという規格外。そして、人を襲い続けたため、公園管理官のケリーは、公園責任者のキットリッジに公園閉鎖を求むが、キットリッジは利益重視でこれを拒否。そればかりか、マスコミやハンターを呼び、クマを刺激してしまう。
そんな状況にケリーは、自然のプロである、スコットら数名でクマ退治をはじめる・・・。
早い話が、「ジョーズ」のストーリーを、ほとんどそのまま山とクマに設定を変えて製作された映画です。よって、監督のウィリアム・ガードラーさんは、後年に1973年に公開された映画「エクソシスト」に影響された、1978年公開の「マニトウ」を製作し、大ヒット作品のエピゴーネン(優れているとされる先人のスタイルなどをそのまま流用・模倣して、オリジナル性に欠けた作品を制作する)作品を2つも作った人物とされています。
さて、2021年6月18日の早朝、北海道札幌市東区の住宅街に体長約1.5mのクマが出没しました。
クマは移動しながら住民にケガを負わせるなどした後、陸上自衛隊・丘珠駐屯地の正門から堂々と内部に侵入しようとし、クマの侵入を防ぐため門を閉じようとした男性隊員が襲われ、ケガを負いました。その後、駐屯地の飛行場である丘珠空港の敷地内にいたクマに対して猟友会のハンターが猟銃を発砲し、駆除しています。
今回の、「(私が勝手に名付けた)自衛隊駐屯地クマ不法侵入事件事件」では、不法侵入したクマに対して自衛隊は武器を使用せずに銃弾を1発も撃つことはありませんでした。
そもそも、自衛隊にはクマをはじめとする野生動物と戦う(?)という経験やノウハウもなく、クマなどが現れたときに駆除しなければならない場合、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護法)」に基づいて、狩猟免許を有するハンターの仕事になります。そのため、人が住んでいる地域にクマが現れたという場合、自治体が猟友会をつうじてハンターに依頼するということになるのです。ちなみに、警察も武器を所有していますが、住民の安全を確保するために注意喚起などの役割体制がとられています。
映画「シン・ゴジラ」の中で、ゴジラへの対処に、「(有害)鳥獣駆除を適用できないか?」という検討場面がありますが、そもそも論として、これは適用することができないことだったのです(ゴジラとクマを比較するものでもないでしょうけど)。
ただし、現実問題として自衛隊員がクマに襲われていますので、今後、同様の事件が発生した場合で自衛隊員の生命が危なくなるような状況において、自衛隊で武器を使用することについては、「緊急避難(刑法第37条)」という形で対応することができると考えられるようです。
一方、「自衛隊法第95条の2(現;第95条の3)」では、自衛隊施設警護においては平時から武器を使用することが認められています。しかし、これは、テロリストなどが自衛隊施設を襲撃してきたケースを想定したもので、クマなどの鳥獣に対しては武器の使用はできないとのことです。
ということで、クマなどの野生動物の場合に対処するのはハンターであり、自衛隊は参戦することはありません(できません)。
ただ、想像を絶するクマの大群や、巨大なクマが出現したというような場合には、「災害派遣(自衛隊の災害派遣に関する訓令第18条)」という名目で自治体から自衛隊に派遣要請することができるかもしれません。しかし、災害派遣では武器を携行することは基本的には認められていませんが、救援活動のための必要最小限度の武器や弾薬を持っていくことは可能ですが、現実的には使用することはできないと思います。
「日本国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」に際して、「自衛隊法第76条」には「防衛出動」があります。防衛出動は、自衛権行使の中での一番レベルの高い対応であり、相手の武力攻撃を排除するため、自衛権に基づき必要な「武力の行使」が認められています。そのため、内閣総理大臣は国会で承認を得なければなりません。国会で承認を得られない限り、行動を監視するだけになります。
クマが暴れた場合に、これを「クマの武力行使」とはならないでしょうから、これも現実的にはあり得ないでしょうけど、軍時行動やテロ目的で放たれたのであるならば、防衛出動が可能とも解釈できます。
案外、野生生物の前では自衛隊といえども、法律的なこともあって対応が難しいのです。
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