「フィールド・オブ・ドリームス」という1989年に公開された映画があります。
レイ・キンセラは結婚してからアイオワ州の田舎町に農場を購入し、決して裕福とは言えないが奥さんと子どもとともに幸せに暮らしていました。母親を3歳で亡くし、若い頃に父と口げんかをし、家を飛び出したまま父が亡くなってしまっていました。
ある日、レイがトウモロコシ畑で仕事をしていると、どこからともなく声が聞こえてきます。
「それを作れば、彼はやってくる」
意味の分からないレイ。妻のアニーに「今の聞こえたか?」と聞いても聞こえていません。トウモロコシ畑でその意味を考えるレイ。そして「それ」とは野球場の事だと気づきます。「野球場を作れば死んだはずのシューレス・ジョーが野球をやりに来る」そういう意味なのだと思います。
八百長の疑いで野球界を追放(ブラックソックス事件)されたシューレス・ジョーは、自身もマイナーリーグの選手だったほど野球が大好きだった父のヒーローでした。そのヒーローのプレーをもう一度観れば何かが変わるのだと思いました。もしかしたら父にも同じように声が聞こえてたかもしれない、でも、父は夢の為には何もやりませんでした。
「今の自分と同じ年の頃の父はもっと老けて見えていた。自分も同じように老けていき、何もなさぬまま人生を終わる事は嫌だ」
自分には妻も子どももいます。このままでは父親と同じ道をたどってしまう。そう語るレイにアニーは、
「あなたが本気でそれをやらなくちゃと思うのならやるべきよ」
と言います。そして、一家の収入源であるトウモロコシ畑を切り開き、野球場を作ってしまいます。しかし、野球場が完成しても何も起こりませんでした。野球場を作った時のお金と、切り開いた分のトウモロコシ畑から得られるはずの収入がなくなった分、生活は苦しくなりました。このままではせっかく作った野球場も売らなければならないと思っていると、娘が「球場に誰かいるよ」と言います。
レイは野球場をのぞくと、そこには懐かしきシカゴ・ホワイトソックスのユニフォームを着た“シューレス”ジョー・ジャクソンが立っていました。幽霊のジョーとレイは一緒に野球をしました。ジョーのことをバカにして家を飛び出したのを最後に父を亡くしてしまったレイには、このことが突然頭の中で思い返されます。
レイは野球が出来なくなってしまった事を後悔していました。レイだけではなく、八百長で野球界を追放された他の選手たちも野球がやりたくて仕方がなかったのです。ジョーはチームメイトを連れて、度々、野球場に野球をやりにきました。その光景を家族で眺めるレイ。すごく幸せな時間を過ごします。
しかし、現実が厳しいことは変わりません。借金の問題でアニーの兄が野球場を売れと何度も言いにきます。アニーの兄にはジョーたちが野球をしている姿が見えないのです。ジョーのプレーを見ることに喜びを覚えていたレイは野球場を手放したくありません。しかし、何もいい案は思い浮かびません。そんなレイに新しい声が聞こえます。
「彼の苦痛を癒せ」
その意味について考えるレイ。アニーと一緒に学校行事に参加し、そこで議題に上がった作家のテレンス・マン。「彼」とはマンの事ではないだろうかとレイは考えます。マンを調べると彼の著書の中にレイの父と同じの名前の主人公の作品がありました。そして、マンを訪ねたレイ。始めはレイを怪しみ話を聞きませんでしたが、レイと一緒に野球場に行き、レイが次の声を聞くとマンは彼の話を信じました。実はマンにも声が聞こえたのです。
「やり遂げるのだ」
その声と同時にバックスクリーンに記されたムーンライト・グラハムという名前と場所をメモをし、レイとマンは訪ねます。しかし、グラハムはすでに亡くなっていました。元メジャーリーグの選手だったグラハムは、野球ではあまり芽が出ず、父の後を継いで医者になっていました。評判はすこぶる良く、何一つ後悔してそうなことは見当たらず、レイを必要とする理由はありませんでした。
夜の道を散歩するレイは老人となったグラハムと会い、話をします。グラハムがメジャーリーガーだった時、長い間ベンチにいました。ある日、ライトへ行けと監督の指示があり、喜んで守備に就きましたが、打球は一度も飛んでこず、打席に立つ前に試合は終了しました。そしてマイナー落ちとなります。マイナーはとても苦しく、グラハムは引退しました。グラハムは夢を叶える一歩手前で夢が叶わなかった事を後悔していたのです。一度でいいから打席でバットを振りたかった。ピッチャーを睨み付け、かっ飛ばしてやるぞとウィンクして、そして思い切りボールを打ち、必死に走り二塁打を三塁打に。そして、ベースにヘッドスライディングで飛び込む。そんなプレーを一度でいいからやってみたかったのです。
「そんな夢を叶える場所があるんです。一緒に来てくれませんか」というレイでしたが、グラハムは断りました。彼は医者としての人生に何も後悔していないし、奥さんを愛していました。そして、ミネソタの街を離れたくなかったのです。
無理に連れて帰ることは出来ず、レイとマンは帰ることにしました。その帰り道、ヒッチハイクをしている若者がいました。若者の名前はグラハムと言いました。若い頃のムーンライト・グラハムです。その奇跡に顔を見合わせるレイとマン。野球場に戻ったレイとマンとグラハム。ジョーはグラハムを仲間に入れ野球の試合をします。グラハムの願いは叶ったのです。
レイとアニー、娘と一緒にその試合を見ながらマンはレイを主人公にした物語を語ります。そんな夢物語を聞きながら、借金の催促をしに来たアニーの兄は野球場を売れと言いにきます。見えもしない選手たちを眺めていると、娘はちゃんといるよと反論します。カッとなり、アニーの兄は娘ですらこんなおかしい有様だと言い、その拍子に娘は高いベンチから地面に落ちてしまいます。救急車を呼ぼうとするアニーですが、そこへ医者になったグラハムが現れ、娘を助けます。
それを見たアニーの兄は驚きその神秘さを感じ、グランド上の選手たちが見え、このグランドの持つ意味を理解して、「ここは、絶対に売るな」と言い出しました。
そして、選手たちが“あちら側”へ引き揚げていく中、ジョーはマンを誘い、共に“あちら側”へと消えていきました。
選手が一人残りました。
キャッチャーです。
マスクを取った選手にレイは驚きます。それは若き日のレイの父でした。レイは若い時に父親に反抗して父が応援する他のチームを応援していました。また、わざと遠くの学校に進学し、疎遠の内に父と死別してしまったという、大きな後悔を今も感じていました。
「それを作れば彼がくる」とはレイの父親のことでした。そして、レイは聞こえた声の主は自分自身のもので、父と対話するために球場を造ったのだと悟ります。
レイは父が帰りかけた時に、「お父さん、キャッチボールしない?」と話しかけるのでした。
「It was like coming this close to your dreams and then watch them brush past you, like a stranger in a crowd. At the time, you don't think about it. We don't recognize the most significant moments in our lives when they happen. Back then I thought, "Well, they'll be other days." I didn't realize that that was the only day.」
「夢が叶うまで、あとこれだけ。だが夢は肩をかすめ、歩み去った。人生の節目となる瞬間は、自分ではそれとは分からない。”また機会があるさ”と思ったが、実際はそれが最後だった」
映画の中のセリフです。
高校球児三年生のみなさん。
全国で勝ち残るのはたったの1校です。でも、その1校の三年生も、高校野球と別れを告げる日が来ます。
すでに、高校野球が終わった三年生は、終わった直後は真っ白だったと思います。また、少しは強がっていたと思います。
でも、冷静に「次の夢ってなんだろうな?」って考えたとき、わけ分からなくなっちゃっていないでしょうか。
今は、たくさんのプレッシャーがあった中で、精々「一旦休みたいな」みたいな感じで、テレビゲームで言うとリセットスイッチを押したような状態かもしれません。まさか、「はい、終了」という感じで、電源スイッチを押してはいないでしょうね。
みなさんの一人ひとりのフィールド・オブ・ドリームスはどんなところでしょうか。
長野大会は、いよいよ準決勝を迎えます。
夏の長野大会 7月22日の試合予定
長野オリンピックスタジアム・準決勝
09:30 松商学園高 vs. 岩村田高
12:00 佐久長聖高 vs. 東海大諏訪高