MLBではサイン盗み問題とともに、マイナー・リーグ球団削減問題でも騒ぎになっています。
事の発端は、MLBコミッショナーのロブ・マンフレッドさんが、「マイナー・リーグに属する176球団中、42球団を削減するプランがある」と発言したことです。
MLBとマイナー・リーグ(MiLB)機構との間には、以前からPBA(professional baseball agreement)と呼ばれる協定が結ばれており、その協定が2020年のシーズン終了後に切れるのを機に、「MLB各球団が保有する選手の上限を150名とし、これまで40巡まで設定されていた新人ドラフトを20巡ないし25巡までに抑えたい」とのことです。
削減の対象は、MLBの下部組織に属する球団が大半を占め、MLBは施設の劣悪な球団、移動に不便な球団、選手の俸給が安すぎる球団、MLB昇格の可能性が低い選手を多く集めている球団を削減することで、諸問題の改善が期待できると考えているようです。
つまり、1000人超の選手を削減することによって、選手の年俸を上げ、そしてMLBに昇格できる可能性を多くしようということなのでしょう。これは、これで、ごもっともかも知れません。
ちなみに、MLBの最低保証年俸が56万3500ドル(約6100万円)であるのに対して、マイナーでは年俸7500ドル(約81万円)以下の選手が数多くいる。練習や移動などを労働時間に含めれば、これは連邦政府が定めた最低時給7.25ドル(約790円)にも満たない金額です。
一方で、米国にはMLB30球団だけでなく、約170ものマイナー球団が現存しています。これは、地域に根差している、「おらが球団」がそれだけ存在していることも事実だと思います。地方にいてもプロ野球、将来のスターを球場で応援できるということに他なりません。
もちろん、MLBの案に対しマイナー・リーグ側は大反対しています。「4分の1もマイナー球団を削る必要はないし、受け入れられない。選手やスタッフなど多くの人が職を失う上に、地方の経済にも大打撃を与える」と主張しています。また、地方出身の米国議会の議員もこの問題に対して即座に行動を起こし、104人の議員が削減反対の意見書をコミッショナーに送ったそうです。
MLB球団はマイナーの選手のためにボーナスを含め年間5億ドル(約540億円)もの年俸を払い、マイナー球団に送っているそうです。その投資が実り、優秀な選手が育ってくるためには、より良い育成環境が必要なのも現実です。とはいえ、削減すれば地域で身近だったプロ野球がなくなり、地元の子どもたちが野球を生で楽しむ機会が奪われてしまいます。
MLBにとって次の世代の野球ファンを増やすのも重要課題だと思いますが、マイナー球団削減は逆行することでもあります。プロ野球の未来を左右するとても難しい問題でもあるでしょう。
議会を巻き込んでの騒動。
米国の2020年は中国、朝鮮半島、中東問題や大統領選挙もあり、話題に事欠きません。