星を読む会(福井読書感想交換会)

福井市内で開催する読書会にあなたも参加しませんか? 一冊の本についておしゃべりしながらティータイムを楽しむ会です。

第8回福井読書会(H27/1/28)

2015-02-03 21:58:54 | 感想文
8回目の福井読書会が開催されました。
簡単に様子をお伝えしたいと思います。

平成27年最初の読書会は、1/28(水)午後7:00から、大願寺陸橋近くのラササヤンla136店で行われました。
今回のお題は、坂口安吾『桜の森の満開の下』。
前回の『山月記』に続いて「青空文庫」に収録されているデジタルな名著ですが、みなさんはどう読まれたのでしょうか。


ノサカさん
スマートフォンで読んだ。特に紙と変わりがない官m時がしたので、今後も青空文庫の他の作品も読んでみたい。
ただ、メモがとり辛いのが難点。

作品について、『女』が都に出てきてからしていた首遊びの描写が長いので、特に作者の思い入れがあるのかと気になった。
最近、女性の殺人について報道されることが多い。報道の中では残虐性を持ったものが紹介される。汚い首で遊ぶのは、「女性」が持つ残虐性を表したものかと思う。部屋の中は、どんな惨状になっているのか考えると怖い小説。
女性は性質として残虐性をもっているという主張があるのか。
男性作家として、書きたかったのは逆説的な男の心境だろうか。


カワイさん
桜は日本代表の花でおめでたいことの象徴だが、途中でエログロに変化していく。
作者は、空襲で亡くなった方を上野の桜の下で火葬しているところを見て小説を書いたそうだが、美しいものは畏怖の対象となるように思う。
話の中で、「山賊の男」は動物的な本能を持つものとして描かれる。
初めて愛しい、失いたくない「女」を得ることで、徐々に壊れていったように感じた。
社会を学んでしまったことで、舞台に上がれない自分を恥じたのではないか。それが「山に帰る」行為だと感じた。
最後の桜の場面は、桜が持つ死の象徴、散ることで舞台から去ったことを表したのだと思う。


クロダさん
坂口安吾は『赤ずきん』に触発された、と聞いた。元々の『赤ずきん』は怖いおとぎ話だが、この『桜の森の満開の下』も怖いおとぎ話のように感じた。
ラストシーンが視覚的にきれい。
山賊の人殺しはさらっと書かれているが、女の首遊びはしつこく書かれている。男性の作者が女性の不可思議を書いたのかと思う。


イシカワさん
タイトルから想像できない内容だった。
「都会に合わない」男の話。
生きてきた世界に自分一人しかいない男が、都に出たときに社会を知って退屈になったように感じた。
映像で見てみたい話。



みなさんの感想を聞いた後に、さらに意見交換によって深化させました。
意見の中に多く聞かれたのが、都に出て社会を知ったがその社会に馴染めなかった山賊と、首遊びをする「女」に注目した点。
首遊びは人形遊びに通じる、家庭や近隣コミュニティとの女性の社会性のあり方をややグロテスクに表したもので、坂口安吾がそれをどうとらえていたか。
女性が苦手だったのか、それとも…
他には、このお話がラブストーリーを表していて、どこにでもある話を装飾してグロくした話で、途中の過程は倦怠期を表している、といった意見も聞かれました。
男5人の意見交換では限界があり、女性の意見も聞きたかったという愚痴も飛び出す始末。
最初から最後までかみ合ってない男女の話を会員のみなさんがそれぞれの視点でとらえていたようです。
なかなか興味深い意見交換でした。


第7回読書会追記

2014-12-01 17:50:50 | 感想文
会員の皆さんが、最近気になった本を持ち寄って紹介しています。

ヒラタさんは、結城紫雄「HANA」、芥川龍之介「鼻」。

ショートフィルムとつながる文学賞「Book Shorts」で、おとぎ話や昔話、民話、小説などをもとに創作したオリジナル・ショートストーリーの中から、ヒラタさんが面白いと思った「HANA」、そして元ネタの「鼻」をご紹介いただきました。
わざわざ印刷して会員皆さんに配布の、至れり尽くせり。

今回、電子書籍をテーマにしたので、ネットでしか読めないものをチョイスした、とのこと。

また、ジェイソン・マーコスキー「本は死なない」をご紹介。
初代キンドル開発者にして、電子書籍の基準を創ったジェイソン・マーコスキー。
電子書籍へのシフトは、読書の世界や出版業界だけでなく、いろんなものが変化すると書いてあるそうで、また読みたい本が増えてしまいました。


クロダさんからは、山本周五郎「青べか物語」。
爆笑問題の太田光が大好きというクロダさん、この本も太田光がすすめていた本との事。

山本周五郎というと時代劇のイメージが強い感じですが、昭和初期の香りが色濃くでている作品も多いそうでおすすめの一冊でした。


カワイさんからは、工藤美代子「なぜノンフィクション作家はお化けが視えるのか」。
ノンフィクション作家の工藤美代子の不可思議な体験をもとに書かれたノンフィクションとのこと。

一番面白かったエピソードとして、工藤さんと旦那さんの体験について語っていただいたのですが、面白そうなので今回本をお借りしてしまいました。
また読む本が・・・


そしてわたくしヤスギは、服部真澄「ディール・メイカー」を紹介しました。
同僚から借りた本なのですが、本の内容より、本の魅力を伝える行為、本を貸すという行為にまつわる、読書好きならではの感覚について少し思うところあって語らせていただきました。
読書会の課題図書も結構悩むんですよ、という自分語りも含めて・・・


今回も面白そうな本がたくさん紹介されました。
皆さんも、琴線に触れる本や読み物を読書会で紹介してみませんか?


第7回福井読書会(H26.11/26)

2014-11-29 15:35:50 | 感想文
第7回福井読書会は、平成26年11月26日水曜日の午後7時より開催されました。
場所は、CafeラササヤンLa136店をお借りすることができました。

今回の課題図書は、中島敦「山月記」。
青空文庫などでも楽しむことができる名作ですが、どうも会員の方々は紙媒体がお好きなようで…
ここで、意見を列挙してみたいと思います。
かわいさん
パソコンで読んだ。最近の若者に見られる「コミュ障のひきこもり」を予言したような話に思えた。
李徴の歌に足りないものが「人間らしさ」ではないか。人間にあってしかるべきものが足りない気がする。
虎は群れをなさない。その虎に変わってしまったことへの解釈で物語の意味が変わる。


くろださん
隠喩が多く、物語に正解を求めてしまうので少し不満が残った。
カフカ「変身」と比較して読んでみた。毒虫と虎との違い。山月記はロマンチストな話に感じた。
教科書で読んだ時はきれいな話に感じたが、今読むとまた違う感想をもった。


ひらたさん
虎を化け物としてとらえた。醜悪なモノ。
詩作が受け入れられなかったから虎になったと読んだが、李徴が変身した姿を中島敦の時代の何にたとえたのだろうか。時代背景が知りたい。


全体での話し合いでは、李徴の詩作すらも逃げ道だったかどうかが話し合われました。
プライドの高い李徴が人間関係を構築するためのコミュニケーションを拒否した、またはコミュニケーションが取れなかったための発狂。そして虎への変身。虎はプライドの具現。孤高の存在。
だれしも持つプライドが人より少し大きすぎた李徴の苦悩。その苦悩すらもナルシストに見えてしまう独白。
はたしてその変身は、罰なのか俗世間との境界に引きこもりたいという自らの願望なのか。

みなさんの意見からも、李徴がかわいそうと見るか否かでこの小説の読み方が変わったみたいです。
また、カフカの「変身」とも比較があり、また読んでみたい古典が増えたかも。
最後は、理解者として登場するエンサンをすばらしいと賞賛する声も聞かれたり、奥さんや子供の事(「家族のことが書かれてないからダメだ」発言も飛び出し…)、現代社会の「コミュ障」「引きこもり」との関連など話題がつきませんでした。

途中、「答えがないから想像の余地がある」との意見もありましたが、1時間の枠では語りきれない短編小説でした。

出席のみなさまお疲れさまでした。


第六回福井読書会。(H26/6/18)

2014-06-19 11:14:13 | 感想文
6月18日 午後7時より。


本日はわれらが安木氏が欠席するという、チームの大黒柱を欠いての開催でした。

進行役は私野坂が勤めさせていただきました。
まず1時間はルーティンである課題図書へのプレゼンです。
今回の課題図書は野坂が設定しました。
内田康夫「本因坊殺人事件」。

まずはクロダさんから。
第一印象としては、昼間に見るサスペンスドラマの王道を行くスタイルであるというこ
と。
風景描写が上手いので、すんなりと場面を思い浮かべることができる。
つまりは文章力が優れていること。
そして、物語の進み方に無駄がまったくないことを指摘していました。

次にカワイさん。
最後は崖に行くことが興味を引いたこと。
犯人に思い入れを抱いてしまうという、珍しいタイプの推理小説ではないかとのこと。
そして、いつも読んでいる推理小説とは違ったタイプであるとコメントしていました。

最後に野坂です。
数多くある推理小説から囲碁を題材にした珍しい小説であることが推薦の理由であること。
囲碁を題材にしつつも、マニアックになりすぎず、囲碁を知らない人でもわかるように薄めて、しかしトリックを用いることで万人に面白く感じてもらえるように工夫してあることをコメントしました。

三人の意見が出たところで、ミックスダウンとなるのですが、そのなかで出てきたキーワードは「時代性」です。

この小説がすんなり読める、文章の整った作品であるのに読みづらい印象を覚えるのは、
セリフの言い回しにあるのではないかという指摘がありました。
この時代の小説は、どこか文章がかっこをつけていて、親しみにくい印象を覚えます。
これよりも前の時代の小説は、レトロを感じさせ、回顧主義的にかっこよく感じます。
逆に新しい時代の小説は馴染み深く、親近感を覚えるのです。

ちょうどその端境期にあるこの昭和60年代、つまりバブル期の小説というのは、私たちにとってなじみの薄い時代ではないのでしょうか。

クロダさんの指摘には「実行犯の動機がよくわからなかった」というものがありました。
これも、時代を考えると正解が見えてくるような気がします。
常に上昇志向のバブル期に、田舎から都会に出た運転手という職業の者が、失業を恐れるその気持ち。
あるいはしがないタクシードライバーだった自分を拾ってくれた人に対しての報いたいという思い。
そういうものを、泥臭いながらもきらきらした世界がすぐ自分の隣に存在したあのバ
ブル期というものを想像すると、納得させられてしまうような気がしました。

次は、紹介コーナーです。

カワイさんのお勧めは、いとうせいこうのデビュー作「ノーライフキング」でした。
小学生である主人公がヴァーチャルの世界にリアルが飲み込まれていくところを、逆にリアルの困難さ、生きにくさをヴァーチャル世界から学んでいくところが味噌だとおっしゃっていました。

野坂のお勧めは、浅田次郎の最新作「一刀斎夢録」です。
カワイさんのような含蓄を含んだ作品ではありませんが、とにかく読後の爽快感があります。
新撰組がすきな人、もしくは時代小説が好きな人にはとかくお勧めできる作品です。
クロダさんに貸し出しました。

クロダさんのお勧めは金城一紀の「映画篇」です。
青臭い感じが好きとのことでした。内容については、映画がたくさん出てくるものの、それぞれの映画の内容を掘り下げるわけではなく、とにかく人間関係の描写が楽しめるとのことです。

以上で第6回の読書会は終了となりました。
やはり安木氏がいないと、締まりに欠ける結果となりましたが、自由奔放に意見を交わすことができ、参加者それぞれの新しい一面を垣間見れて、勉強になりました。