星と石ころ日記 図書館

好きな本・漫画について語ってみる。

おとなはだれも、はじめは子どもだった

2006-05-17 14:09:48 | 絵本・童話
『星の王子様』 サン=テグジュペリ

岩波書店・みすず書房 他(1953年 初版発行)



ジャンル分けすると童話になるのだろうか。昔から大好きな本で、学生時代に買ったものが今もわたしの本棚にある。



サハラ砂漠の真ん中に不時着した飛行士と、ほんとうのことしか知りたがらない王子さまとの、子どもの心や愛について深く考えさせられる本。バラの花の言葉に心を傷つけられた王子さまは、自分の星を後にして、7つの星を旅する。


いろんなひとや動物たちに出会い、王子さまがほんとうに大切なものをみつける話。





キツネが王子さまと別れるときにおくりものにした言葉。


「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」


あまりにも有名なこの言葉は、初めてこの本を読んだときからずっとわたしの心にあって、歳を重ねるごとに大きくなる。



他にも好きなシーンがある。王子さまが飛行士に、「ねえ、ひつじの絵を描いて」とねだるシーン。絵の苦手な飛行士は一生懸命ひつじの絵を描くが、どれも王子様さまは気に入らない。面倒になった飛行士が、覗き穴のついた箱を描き、「こいつぁ箱だよ。あんたのほしいヒツジ、その中にいるよ」と言うと、王子さまは大喜び。「こんなのがほしかったんだ!」って。




冒頭の献辞で、作者は言っている。
「おとなは、だれも、はじめは子どもだった。(しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない。)」


子どもの頃には、おとなになりたくないって思うことがあるよね。でもおとなになったら自分が子どもだった頃を忘れてしまう。


どこかにその境界線があるんだろうか。その線を1歩超えると「今からおとなです」、なんてあるわけないよね。気づいたらおとなになって、そして忘れている。


キラキラした子ども時代を、おとなに抵抗した思春期を、忘れてしまうなんてもったいない。


それともそんなもの持ち歩くのは流行らないかな。



どんなにあがいても昔には戻れないけど、キラキラしたものを宝物みたいにこっそり隠し持っててもいいよね。