ドイツ人といえばビールばかり飲んでいるイメージがあるだろう。このブログでも、ビアガルテンなどもっぱらビアねたをとりあげてきた。しかし、ドイツもれっきとしたヨーロッパのワイン産地である。
こんなふうにいうと、日本でワイン通を自認する人たちは、あるいはニヤっとするかも知れない。「ああ、ドイツ・ワインね。口当たりよくて、甘口、まあ正直いって、ワイン初心者、あるいはお酒に弱い女性向けならね・・・。」確かに、高級ワインといえば、フランスの赤にとどめを刺すのだろうし、白ワインも、フランスでなければ、イタリアというイメージが強いだろう。特に近年は、「ワイン通」の某女優などがポリフェノールの効用などを説くなど、ワインといえば赤という風潮がいちだんと強まり、デパートなどでもドイツ・ワインをほとんど置かなくなってしまったところも見受けられる。
しかし、ドイツ・ワインについてそんなふうに最終判断を下す前に、ぜひ一度お試しいただきたいワインがある。ドイツでは、もっとも上質なワインとして知られるフランケン・ワインである。フランケン地方は、バイエルン州の北部に位置し、その中心都市はヴュルツブルクである。ドイツのワインの産地といえば、ライン川とその支流モーゼル川の周辺が大規模であり、よく知られている。ドイツ・ワインのイメージを作ってしまったのも、この地方のワインである。フランケン・ワインは、ライン川の別の支流であるマイン川(ドイツの主要空港の一つがあるフランクフルトは、正しくは「マイン川のフランクフルト」Frakfurt am Mainといい、同じ川の流域にある)に位置し、ヴュルツブルクとその周辺の限られた渓谷地域で作られ、下の写真のようなボトルを用いているのが特徴である。

「あ、そのボトルなら見たことがある」と思ったひとも多いだろうと思うが、残念ながら、ほとんどは間違いである。日本の一般の酒店でもしばしばみかけるよく似たボトルは、これも甘口のワインで知られるポルトガルのマテウスというブランドのものである。フランケン・ワインのこの形は、ボックスボイテル(Bocksbeutel)、すなわち「雄ヤギの袋」と呼ばれ、古来雄ヤギの陰嚢が酒を入れる革袋として用いられていたことに由来する。
フランケン・ワインは、産地が限定されていて、生産量も少ないことから、かつてはドイツでも出回る量は少なく、高価であったため、高級ワインの代名詞であった。ヴィム・ヴェンダース監督の映画「ベルリンの天空」(Der Himmel über Berlin 邦題「ベルリン天使の詩」)にもそんな台詞があったのを覚えている。
(いま調べてみたらこんな台詞だった。Jeder trägt ... verlangt eine Übertrittsgebür, wenn ein anderer es betreten will in Form einer in Bernstein eingeschlossenen Fliege oder eines Bocksbeutels.これは、境界線(Grenzen)を築くドイツ人のメンタリティが語られる場面で、「他人が立ち入ろうとすると、だれもが通行料を要求する。虫が閉じこめられた琥珀とか、ボックスボイテルといったかたちで」というものである。たしか、当時の日本語字幕では、「ワイン1本」というような訳があてられていた「ボックスボイテル」とは、フランケンワインにほかなならない。)
ここでもほとんどが白ワインではあるが、ブドウ種は、ドイツでよく見かけるリースリング種ではなく、この地域を発祥の地とするジルヴァーナー(Silvaner)種が特徴的で、ほかにもMüller-ThurgauやKernerといった種類が多い。芳醇な香りは、一度覚えれば、ああこれぞフランケンと間違えることのない独特なものである。
ヴュルツブルクやその周辺の街では、普通に飲むのは、ビールよりもこのワインであり、専門のワイン酒場も数多くある(ヴュルツブルクまで足を伸ばせない場合、ミュンヘンでも、新市庁舎の地下にある「ラーツケラー」がフランケン専門のワイン・レストランで、数多くのワインがたのしめる)。
私自身はヴュルツブルクに暮らしたこともあるので、懐かしさも加わって、いっそう味わい深いが、そうでないひとでも、お酒の味の分かるひとにみやげにして、否定的な評価を聞いたことがない。このワインを知らないで、ドイツ・ワインを否定しないでもらいたいと思うのである。
こんなふうにいうと、日本でワイン通を自認する人たちは、あるいはニヤっとするかも知れない。「ああ、ドイツ・ワインね。口当たりよくて、甘口、まあ正直いって、ワイン初心者、あるいはお酒に弱い女性向けならね・・・。」確かに、高級ワインといえば、フランスの赤にとどめを刺すのだろうし、白ワインも、フランスでなければ、イタリアというイメージが強いだろう。特に近年は、「ワイン通」の某女優などがポリフェノールの効用などを説くなど、ワインといえば赤という風潮がいちだんと強まり、デパートなどでもドイツ・ワインをほとんど置かなくなってしまったところも見受けられる。
しかし、ドイツ・ワインについてそんなふうに最終判断を下す前に、ぜひ一度お試しいただきたいワインがある。ドイツでは、もっとも上質なワインとして知られるフランケン・ワインである。フランケン地方は、バイエルン州の北部に位置し、その中心都市はヴュルツブルクである。ドイツのワインの産地といえば、ライン川とその支流モーゼル川の周辺が大規模であり、よく知られている。ドイツ・ワインのイメージを作ってしまったのも、この地方のワインである。フランケン・ワインは、ライン川の別の支流であるマイン川(ドイツの主要空港の一つがあるフランクフルトは、正しくは「マイン川のフランクフルト」Frakfurt am Mainといい、同じ川の流域にある)に位置し、ヴュルツブルクとその周辺の限られた渓谷地域で作られ、下の写真のようなボトルを用いているのが特徴である。

「あ、そのボトルなら見たことがある」と思ったひとも多いだろうと思うが、残念ながら、ほとんどは間違いである。日本の一般の酒店でもしばしばみかけるよく似たボトルは、これも甘口のワインで知られるポルトガルのマテウスというブランドのものである。フランケン・ワインのこの形は、ボックスボイテル(Bocksbeutel)、すなわち「雄ヤギの袋」と呼ばれ、古来雄ヤギの陰嚢が酒を入れる革袋として用いられていたことに由来する。
フランケン・ワインは、産地が限定されていて、生産量も少ないことから、かつてはドイツでも出回る量は少なく、高価であったため、高級ワインの代名詞であった。ヴィム・ヴェンダース監督の映画「ベルリンの天空」(Der Himmel über Berlin 邦題「ベルリン天使の詩」)にもそんな台詞があったのを覚えている。
(いま調べてみたらこんな台詞だった。Jeder trägt ... verlangt eine Übertrittsgebür, wenn ein anderer es betreten will in Form einer in Bernstein eingeschlossenen Fliege oder eines Bocksbeutels.これは、境界線(Grenzen)を築くドイツ人のメンタリティが語られる場面で、「他人が立ち入ろうとすると、だれもが通行料を要求する。虫が閉じこめられた琥珀とか、ボックスボイテルといったかたちで」というものである。たしか、当時の日本語字幕では、「ワイン1本」というような訳があてられていた「ボックスボイテル」とは、フランケンワインにほかなならない。)
ここでもほとんどが白ワインではあるが、ブドウ種は、ドイツでよく見かけるリースリング種ではなく、この地域を発祥の地とするジルヴァーナー(Silvaner)種が特徴的で、ほかにもMüller-ThurgauやKernerといった種類が多い。芳醇な香りは、一度覚えれば、ああこれぞフランケンと間違えることのない独特なものである。
ヴュルツブルクやその周辺の街では、普通に飲むのは、ビールよりもこのワインであり、専門のワイン酒場も数多くある(ヴュルツブルクまで足を伸ばせない場合、ミュンヘンでも、新市庁舎の地下にある「ラーツケラー」がフランケン専門のワイン・レストランで、数多くのワインがたのしめる)。
私自身はヴュルツブルクに暮らしたこともあるので、懐かしさも加わって、いっそう味わい深いが、そうでないひとでも、お酒の味の分かるひとにみやげにして、否定的な評価を聞いたことがない。このワインを知らないで、ドイツ・ワインを否定しないでもらいたいと思うのである。
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