市民講座の講演録をもとにした新書だけに読みやすいが、民主主義のさらなる深化の可能性について、その挫折と後退の危険性もふまえて論究したなかなか読みごたえのある本である。ただ、「代議制デモクラシー」と「討議デモクラシー」による二段構えの市民社会が日本で可能かというと、はなはだ疑問だ。雲散霧消した感のある1990年代のライブリーポリティクス論、その21世紀版を読んだかのような、ややむなしさとあじけなさが残る。
いまある制度を洗練させ鍛え上げていく先にみえてくる、等身大の市民社会は構想できないものだろうか。
目次
はじめに
1章 近代社会はどう変わりつつあるか
1 近代の流れ
2 何が近代を準備したか
3 近代の構造
4 変容する近代
5 自省的近代化
2章 「第二の近代」とその争点
1 政治変容の諸相
2 経済変容の諸相
3 地球化のインパクト
4 「第三の道」とは何か
3章 新しい市民社会論
1 市民社会論の系譜
2 ハーバーマスの市民社会論
3 市民社会の展開
4章 揺れる市民社会
1 ポピュリズムの歴史的諸相
2 ポピュリズムの共通性
3 ナショナリズム考
5章 討議デモクラシー
1 行動的市民とデモクラシー
2 討議制意見調査
3 コンセンサス会議
4 計画細胞と市民陪審制
5 多段式対話手続き
6 いくつかの問題
終章 市民の条件
「第二の近代」に入りつつある二一世紀において、私たち市民はどんな課題に取り組まねばならないのか。欧米で議論されている最新の市民社会論やデモクラシー論を紹介しつつ、現在の政治社会の変容を歴史的文脈の中で分析する。そのうえで、デモクラシーを深化させる新しい社会の像、政治の形を展望していく、市民のための政治学講議。
最新の画像もっと見る
最近の「本」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事