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本と音楽とねこと

【旧作】母の発達【斜め読み】

笙野頼子,1999,母の発達,河出書房新社.(2.27.2021)

 虐待する母、干渉する母、真綿で締め上げるように自分に縛り付ける母、そのような母をもつ子は、実際にやってはまずいが、いつか、こころのなかで「母殺し」をしなければならない。少なくとも、自らの生きづらさを軽減するためには。
 どんどん縮んで小さくなる母、娘がガラスの灰皿で殴って殺したら、人肉を貪りながら、娘に、発達、分裂、増殖を託す。最後、増殖した母が、「大回転音頭」を踊るに至るのには思わずのけぞった。
 「毒親」論もない時代に、「おかあさんホラー」をてがけたのはさすがというべきだろう。シンボリックな「母殺し」の哄笑と饗宴にカタルシスをおぼえる人もいることだろう。

殺しても母は死ななかった。「あ」のお母さんから「ん」のお母さんまで、分裂しながら増殖した―空前絶後の言語的実験を駆使して母性の呪縛を、世界を解体する史上無敵の爆笑おかあさんホラー。純文学に未踏の領野を拓いた傑作。

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