また、テーマはちがえども、問題意識にも共通するところが大きい。たとえば、社会学では、長らく、人間の生活時間を、ざっくり「労働」と「余暇」に分類してきたが、いやいや、「ケア」や「家事」があるでしょうよ、それを無視するってあんたなにさま?という問題提起をしたのが、マルクス主義フェミニズムであった。お二人とも、論考の基底には、こうした不動の問題意識がある。
資本制と家父長制を同時に論じないと、階級・階層間格差、貧困、性差別、これらを網羅的に分析したことにはならない、このシンプルな問題意識は、社会学研究にも継承していかなければならない、重要な知的資産だ。
お二人とも、がちアカデミズムの人なので、文章には遊びの部分がなく、読みとおすには忍耐が必要だが、こうした地味であるけれども重要な研究成果は、読みつがれてほしいものだ。
木本喜美子,1995,家族・ジェンダー・企業社会 (シリーズ・現代社会と家族③),ミネルヴァ書房.(11.13.2020)
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世界に名だたる長時間労働体制下の日本において、家族は解体の淵に立っているのか―本書は、従来の家族研究方法に内在する問題点を批判的に考察しつつ、現代日本の家族を歴史的に位置づけ、かつ「企業社会」との相互連関構造を明らかにする。ジェンダー・アプローチによる家族研究の到達点。
原伸子,2016,ジェンダーの政治経済学──福祉国家・市場・家族,有斐閣.(11.13.2020)
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ジェンダーの経済学と政策を丹念にひもとく。ベッカー「新家庭経済学」における女性労働の分析とその後のフェミニスト経済学の発展を丁寧に追い、さらに社会的ケアの理論的分析、福祉国家におけるワーク・ライフ・バランスや家族政策等ジェンダー政策の精査を行う。ジェンダー、ケアの経済学の本格的著作。