原田泰・鈴木準,2005,人口減少社会は怖くない,日本評論社.(10.7.24)
人口減少は、中長期的には、人口密度や地価を引き下げ、ゆとりある社会の実現につながる。
ただし、高齢化と生産年齢人口の減少を乗り越えるためには、女性と高齢者の就業者増を図らなければならない。
また、労働生産性と一人あたりGDPを向上させる必要がある。
それは、そのとおりなのだけれども、韓国、台湾、中国等、近隣に、工業国がひしめくなか、付加価値額の高い製造業をもって産業全体の労働生産性を引き上げるのは困難である。
もちろん、雇用の規制緩和により、実質賃金、労働分配率を引き下げるのを後押しし、補助金で労働生産性の低い産業を延命させてきた国の責任は重いし、今後は、遅きに失する感はあるが、高付加価値産業へのシフトを促していかなければいけない。
問題は、高齢化により、すでに、医療、福祉等のサービス産業の労働力が増加しているにもかかわらず、診療報酬や介護報酬等の公的価格が低すぎて、もともと低いサービス産業の付加価値額がさらに下がってしまっている点にある。
本書をとおして、緊縮財政、財政均衡主義に拠って立つ社会政策の弱点が、さらにクリアになった感がある。
目次
第1章 成功した国の人口が減少していく
第2章 なぜ人口が減少するのか
第3章 減ることを前提に考えるしかない
第4章 高齢社会のコストを削減する
第5章 皆で働く
第6章 生産性を上げよう
第7章 楽しい人口減少社会へ