見出し画像

本と音楽とねこと

世界の未来

エマニュエル・トッド、ピエール・ロザンヴァロン、ヴォルフガング・シュトレーク、ジェームズ・ホリフィールド,2018,世界の未来──ギャンブル化する民主主義、帝国化する資本主義,朝日新聞出版.(6.2.2020)

 「朝日地球会議2017」に登壇した、ピエール・ロザンヴァロン、ヴォルフガング・シュトレーク、ジェームズ・ホリフィールドの講演録およびインタビューに、エマニュエル・トッドへのインタビューを加えた一冊。
 国ごとの伝統的な家族制度、識字率、出生率、乳児死亡率等からきたるべき社会変動を予測するエマニュエル・トッドの研究は、つとに有名だが、形骸化した代表制民主主義を補う、強大化した行政権力を、つねに国民、メディア、司法機関等がその正当性をチェックする民主主義を唱えるピエール・ロザンヴァロンの議論ももっと評価されてよい。
 グローバリゼーションと移民の問題については、ダニ・ロドニックの『グローバリゼーション・パラドクス』を読んでおくのをおすすめしておくが、この、読みやすいヴォルフガング・シュトレークとジェームズ・ホリフィールドの発言録からざっくり問題の全体像をつかんでおくのも悪くない。
 新型コロナウィルスの蔓延とアメリカ合衆国での暴動を受け、これから事態がどう動いていくか予断を許さないが、業績低迷をよそに、中央銀行による金融緩和と非正規勤労者の解雇により上昇する株価であるとか、ポピュリズムのコメディを大統領統治において実現したトランプのホワイトハウス地下からの遠吠えであるとか、ここまで奇々怪々な世界になるとは、本書の論客たちも想像だにしなかっただろう。

目次
1 世界の未来―私たちはどこに行くのか
はじめに「核家族」と「民主主義」があった
英米で再登場し、欧州大陸で消える民主主義 ほか
2 民主主義の希望―ポピュリズムと21世紀の民主主義
選挙による民主的な成果の衰退
ポピュリストのプロジェクト ほか
3 資本主義の限界―グローバリゼーションと国際国家システムの危機資本主義にかわる新たな秩序
国内の反乱 ほか
4 分断の克服―移民政策に失敗した国は、21世紀の負け組になる
人間社会に不可欠な「壁」
移民政策の「リベラル・パラドックス」 ほか

グローバル化への反動として、多くの問題が噴出する私たちの社会。先進国の中でこそポピュリズムが台頭するのはなぜか。行き詰まる民主主義の再活性化には何が必要か。崩壊が進む資本主義に取って代わるものはありうるのか。排外主義の高まりとどう向き合えばよいのか―。世界最高の知性たちが、今起きていること、これから起きることを鮮やかに読み解く。

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「本」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事