前回の続きです。
イジメをしている子供達はキモイだとかウザイだとか面と向かってひどい事を言います。
彼らになぜそんなひどい事を言うのか?と聞くと皆口を揃えて
『だって本当のことだもん』と言います。
気持ち悪い、うざったらしいというのは非常に主観的な問題で、
それが本当かどうかは検証することは非常に難しいのですが…
しかし、本当かどうかはトモカクとして、
本当のことなら言ってもいいのか…?
相手を激しく傷付けてまで言う必要のあることなのか?
一体誰がそんなことを推奨しているのか?
いつものとおり、イラストと内容は関係ありません。
個人的に現代の通称“バラエティ番組”での“お笑い”の形式をTVが最初に取り入れたのは
『コント55号』ではないかと思っています。
同時期に放送されていたドリフターズの『8時だよ全員集合』や『松竹新喜劇』『吉本新喜劇』等の
あからさまに作り物、フィクションであるという前提のコント、コメディに比べ
コント55号の笑いは、その場のノリで表現をエスカレートさせるアドリブを効かせた(ように見える)演技で笑いを取るという
ライブ感を重視した形式の物でした。
他番組では、ある程度本人とは別の“役”を演ずることで笑いを取っていたが、
コント55号ではどんな設定でも欽ちゃんと次郎さんであり、
二人の人間関係が反映されているのではないか…という錯覚をさせる賭け合わせが多く、ある種の緊迫感がそこに生まれていた。
そして数年後その“ライブ感”を前面に押し出した番組が登場します。
現在のバラエティ番組の祖となった伝説のお笑い番組『オレたちひょうきん族』と
現在までも続くフジテレビのお昼の顔『笑ってい○とも』です。
ある意味この時期が現代イジメの解禁元年だと思います。
『ひょうきん族』ではアツアツのおでんを片岡鶴太郎に無理やり食わせてアチアチアチとかやってるし、
『笑っていいとも』ではネクラと名古屋弁を標的に気持ち悪いとしてあからさまに責め立てる。
タモリさんやタケシさんは言ってはいけないことを言って笑いを取る、
本来隠しておくべき本音を暴露することで笑いを取ることが魅力です。
しかしながら、それはあくまでTVの中での話であって、
実際に言われる方の身になってみれば腹が立つし深く傷付きます。
本来なら、少なくとも建前として
人の容姿や個性を個人的な好悪の感覚だけで非難罵倒することは良くないこととされており、
弱い物いじめや一人を大勢でいじめるなど卑怯者のやることとされていたはずです。
しかし、この二つの番組ではあっさりとそのタブーを破ってしまった。
人を笑わせるという芸としては、コントや喜劇コメディとしての作り物だという前提で、
その中でのみ存在が許されてきたイジメ、イジメられの構図が
一般的な人間関係にはみ出してきたのです。
相手が嫌がること傷付くことを言っても良い、
禿げてる人に面と向かってハゲと言って罵倒しても良い、
不細工な人に向かってブスと言って罵っても良い、
そういう考え方をTVが日本社会に広め始めたのです。
当事、おとなしい性格の子供たちが、ネクラだといって周りの子供達にからかわれているのをよく見かけ、
私自身も標的にされたこともあります。
いじめっ子、ガキ大将という力の強い者が傍若無人にふるまうという時代は終わりを告げ、
多くの子供達が、より弱い一人を標的に、
容姿やしぐさ、性格などという本来非難されるべきではないことを理由に
仲間はずれにする、持ち物を隠す汚す壊す、よってたかってヒドイ言葉を投げつける…という
陰湿で見苦しい現代の“イジメ”の時代が幕を開けたのです。
今の先生方は子供達と一緒になってイジメをしている場合があると聞きます。
子供のあまり良くない性向性格を本人にキチンと正面から諭すのではなく、
クラスの皆の前でそれをからかう事で気付かせようとする困った性癖の先生は昔からいましたが、
もしかしたら、そういう教師としての適性を欠いた人物が増えているのかも知れませんね…
バラエティ番組の芸人司会者と同じようなことをやっていては、イジメは止められません。
むしろ助長してしまいます。
教師の仕事はクラスで人気者になることではなく、群れのリーダーとしてクラスを率いていくことです。
生徒と友達になることではなく、社会的規範を押し付け、子供を社会人へ矯正して行くことです。
先生方にはもっと“強く”あって欲しい…。
やっぱり、イラストと内容は関係ありません。
個人的にはイジメをやめさせるだけでは十分ではないと考えます。
なぜなら、大人になってもイジメはなくならない、
大人社会では、性や金銭、生活が絡み、むしろ、より苛烈で深刻になって行きます。
もしも、学校が教育の場だと言うのなら、イジメから自力で脱出する方法を教えるべきです…。
どんなやり方でもいい、自力で解決しようと努力する…それ自体が大事だと思うのです。
そうでなければ、学校などという場で集団生活をする意味がありません。
学校をやめてイジメのあるその場からさっさと去ればいいのですから…
イジメがTVを通じて日本社会の中で肯定され始めてもう四半世紀以上が経ち
現代では、強盗や傷害などの重大な事件に発展してしまっている場合もあり、
そうなると司法、警察当局の手が必要になってしまいます。
TVを観て笑っているあなたのその“笑い”、
本当に笑っていていいものですか?
一度考え直してみる必要があるのではないでしょうか?