短三和音な日々

割と暇なゾイダー、滝上の不定期な日記。リンクフリーです

2010-10-31 23:20:31 | Weblog


 依頼先の方でもちらっと公開されていましたので、こっちでもちらっと公開です。

 誰かの目です。滝上のキャラクターです。……まあ、ここまで言えば誰だかわかっちゃいそうですが(汗

 既に完成版は頂いておりますので、後は依頼先の方での本公開を待ちつつ……さらに別の場所で大活躍してもらう予定です。

 それでは、今回はKの方に大変お世話になりました。Aの方は、もう少しだけお待ち頂く様お願い致します。

 ……最近出番無いよね、イr(禁則事項です

アトガキとして

2010-10-30 19:35:14 | Weblog
 風邪をひきました(汗

 滝上は、風邪をひくとお腹に来るタイプです。とりあえず、理不尽な吐き気と下痢はだいぶ治まりました。今回はひきはじめに病院行ったので良かったですが、半年前は酷かった……。

 とまあそんな瑣末事はさておき、エンシェント・プロフェシー第二話です。リベットも本体が完成したので、こっちも本腰入れて書き始めることにしました。

 ……最後の方に出て来た人ですが、間違っても純粋種のイノベイターではありません(汗 モデルにはなってますが。

 流石にそのまま過ぎるっちゃそのまま過ぎるんですが、下手に匂わすよりかはもうそのまま突っ走っちゃえという本能に従ってこうなりました。まあ、ネタとしてお楽しみ下さい。

エンシェント・プロフェシー 第二話

2010-10-30 19:27:13 | ゾイドSS
 無造作な尻尾の一撃。それだけで、重量20トンを越す鋼鉄の獣が宙に舞った。
「……これが、戦闘用ゾイドのパワーなのか……!?」
 殆ど反射的に……と言うより、『迎え撃つ』とライが考えた瞬間、リベレイターはその意思を感じ取ったかのように動いた。飛び掛ってきたヘルキャットに、一歩下がって尻尾を叩きつける。その一撃で、ヘルキャットは施設の城壁まで吹き飛ばされた。
「っ!」
 だが、決して致命的なダメージでは無かったらしい。全身を軋ませながら、ヘルキャットは再び立ち上がり、視線を――実際にはコクピットのキャノピースリットを――リベレイターに向ける。
「まだやる気か!? 何か武器は……」
 ヘルキャットに意識を集中させながら、ライはコンソールに表示されるリベレイターの情報に目を走らす。
「うわっ!?」
 だが、その前にリベレイターが勝手に動いた。同時に、メインコンソールに機体の正面図と、その脚部を指す矢印が表示される。
「ターボ……アクセレータ?」
 ライの呟きに応えるかのように、リベレイターの背部に搭載された一対の羽根のような装備――磁力コンデンサーが起き上がる。メインコンソールに『60:00』の文字が浮かび、秒数をカウントし始める。
同時に、脚部のジェットスラスターが火を噴いた。
「ぐっ……!」
 慣性に従って、ライの身体がシートに押し付けられる。お構いなしに、リベレイターは一直線にヘルキャットに突撃し――そのまま蹴り飛ばした。
「これで……、どうだ?」
 再び城壁まで吹っ飛ばされ、今度こそヘルキャットは立ち上がる素振りを見せない。
「ん?」
 だが、どうやらまだ昏倒したわけでもないらしい。こちらに顔を向けながら、伏せの姿勢をとっている。
「屈服」
「えっ?」
 膝の上に抱えていた少女が突然声を発した。
「あれは、屈服の姿勢。あなたの勝ち」
「……あ、そうなんだ」
「降ろして」
 無感情に無表情に、少女は言った。ライの返答を待たずに、またもリベレイターが勝手に頭を下げ、キャノピーを開ける。
「って、ちょっと! 危ない……」
「大丈夫。あの子はもう、襲ってこないわ」
 そのまま吹っ飛ばされたヘルキャットに歩み寄る少女をライは呼び止めるが、意に介さず少女はヘルキャットの頭に触れる。
「……満足したのね。でも、次からは人を襲っちゃ駄目」
「君……、ゾイドの考えてる事がわかるの?」
「? あなたには……わからない?」
 まるで『わかる』事が当然であるかのように……少女は首を傾げた。

「……ここも、もう駄目かしら」
 南エウロペの一大都市、ニューヘリックシティ。過去の西方大陸戦争時に、ヘリック共和国派のエウロペ民が築き上げた都市である。
 その外れに、ややスラムじみた区画が存在する。定住地を持たない一部の民族や、あるいは浮浪者のような人間が多く存在するそこに、似つかわしくない若い女性の姿があった。
 薄茶色の髪を帽子に納め、数週間寝泊りしていた安宿を後にする。宿の主人は出て行く折、ぶっきらぼうに『行くんなら東だ。あそこは軍のマークが緩い』と教えてくれた。
「……何でこんな事になっちゃったんだろうなぁ……」
 逃亡生活を続けて、そろそろ一年になろうとしている。ヘリック共和国軍という、エウロペにおいて最大と言って良い軍事組織から追われているにも関わらず、彼女が一年に渡って逃げ続ける事が出来ている理由……、それは、軍側としても表立って彼女を拘束出来ない理由があるからだと、睨んでいた。
「だとすれば、やっぱりヤバいモノだったんだよね、アレ」
 とある場所に隠してきた、一年前に遺跡から発掘したモノについて思い返す。
「……っ!!」
 そしてふと視線を上げ――気付いた。
(どうして!? 東側はマークが緩いって……!!)
 咄嗟に建物の影に隠れ、その様子を窺う。数十人規模の軍人が通りを封鎖し、検問を敷いていた。
 宿の主人の言葉に嘘があったのか、それとも、別の理由か……。今の彼女に、それを考えている余裕は無かった。
(どう、すれば)
 何とかして、ここから脱出しなくてはならない。このままでは袋のネズミだ。だが、どうやって? 当てにしていたルートは、既に検問でふさがっている。戻るか? だが、そうなれば市街地側に出る事となる。人目が多い。駄目だ。迂回する――無理だろう。土地勘が無い以上、下手をすれば追い込まれる。
 そう、考えていたから――彼女は背後から迫る危険に気付かない。
「動くな」
 背筋が凍りつく。
「……ユキ・フジミヤだな? 手間を掛けさせてくれたが……ここまでだ」

「そう。お姉さんを探してるのね」
 野良ヘルキャットを退けたライは、とりあえずの自己紹介とここにいる理由を、かいつまんで少女に説明した。
「……うん。それより、君はどうしてこんな所に? それに、何であんな事を」
「実験体」
「え?」
「ここにいた人達は、そう言ってた。実験体、だって」
 実験体、という言葉の意味をライは類推し――恐らく彼女は、何らかの理由でここで実験動物として扱われていたのだろうと当たりをつけた。
「……ひどいな」
「何が?」
「何って……、君をそんな風に扱ってたって事だよ!」
「……ひどい、の?」
 表情一つ変えず、少女は首を傾げる。まるで自身の境遇が当然のものであるかのように。
「少なくとも、僕はひどいと思う。あんな、ずっとゾイドに繋がれてそのままなんて」
「……そう、なの」
 少しばかり会話を交わして、ライは気付いた。この少女にとっては、それが当たり前だったのだ。どんな理由があるかは知らないが、実験動物として扱われ、不要となったら見捨てられる……それが、文字通り彼女にとっては当然だったのだと。
「君、名前は?」
「……なまえ?」
 初めて、少女の顔に困惑の表情が浮かぶ。
「私、名前は……」
「今まで、なんて呼ばれてたの?」
「……被検体14-U」
 ライにとって、半ば予想通りの答えだった。実験動物にマトモな名前など必要ない……そういう事なのだろう。
「14-U……、じゃあ、僕は君をヒョウって呼ぶ」
「ヒョウ……?」
「うん。14-Uを読み替えてみたんだけど……、ちょっと、無理がある、かな?」
「……ううん。私、ヒョウがいい」
 少しだけ考えるような素振りを見せた後、少女――ヒョウはゆっくりと頷いた。

「……貴官か、古代ゾイド人の士官というのは」
 ニクス大陸、チェピンのとある軍事基地。その一角にある、さながら独房とも取れる狭い部屋。
「何を黙っている? 返礼は!?」
「……ディーン・クラウド大尉。古代ゾイド人だと言われています」
「性格に問題があるようだな」
「モルモットにされれば、心も腐ります」
 その中心部で、多数のモニターに繋がれた状態で椅子に座る男が言った。ガイロス帝国の士官用軍服を身に纏い、特徴的な銀髪を短く揃えている。
「まあいい。貴官に出撃命令が下った。目的地は――」
「――西方大陸、ですか。いいですね、いい加減ニクスのクソ寒いのには辟易していた所です」
「なっ、貴様……私の思考を?」
「わかるんですよ。生体電磁波……って言うんですか?」
 言葉を発する前に正解を言い当てられた将官が絶句する。ディーン・クラウドと名乗った男は意に介さず、続ける。
「行きますよ。古代ゾイド人の実力……確かめたかったんじゃないですか? もちろん、あなたの希望通りあの機体で出ます」

 続く。

名前を色々整理したり

2010-10-27 23:28:36 | Weblog
 同時進行でブラウツヴァイとリベレイターを進めていて、その途中でガンスナイパーを弄ったりしていたので各々の名前が段々混乱してくる始末(汗

 そんなわけで、いくらか名前を変更したり新たに付けたりしたわけでして。

 まず、ブラウツヴァイ。こいつは変更した結果、

『ブラウリッター・オルタナティヴ』

 になりました。ブラウの二号機と言うよりかは、どっちかと言うと別方向に行っちゃった気がするので。
 それに伴い、乗り手も正式決定。新キャラです。

『ティオ・ルタナ・ニーヴ』

 ちょっと崩してますが、『オルタナティヴ』のアナグラムです。む、無理があるか……?
 こいつはまだストーリー等を考えているわけではないので、名前だけです。ただ、一応コレだけはと決めてる設定が……『男の娘』です(ナンデヤネン


 次いで、リベレイター。ここ最近あちこちで『リベ』と略して呼んでますが、何となく愛称としてはよろしくないなー、と思った末に、

『リベット』

 なる愛称を思いついてしまいました。以後、リベットでよろしくお願いします。正式名称は『リベレイター』のままですが。


 最後に、昨日作ったガンスナイパー諜報仕様なのですが……、『諜報仕様』だとなんだか語呂が悪いんですよね。
 ただ、どうにも上手い名前が思いつかない……。

化け物化するブラウツヴァイ

2010-10-24 23:00:22 | Weblog
 土日とお仕事だったわけですが、その間つらつらとブラウリッター・ツヴァイの機体設定を考えていました。

 ……かなりトンデモな機体になりそうです(汗

 というのも、コイツは設定上『古代ゾイド人文明時代の遺物』であり、世代的(あまりこの言い方は好きではないのですが)にはうちのアルフィオリジナルボディ(=古代デススティンガー)であったり、サーデェンスさんとこのヤーウェ(漆黒の姫、黒神の現身に登場)あたりと同世代なわけでして。この子達とタメ張れる機体なわけです。

 さらに、リベレイターとの関連付けを考えていくうちに、『リバースセンチュリー』シリーズで登場した『ダイレクト・リンク・システム(DLS)』のオリジナル版……というか、古代版を積んでいてもおかしくないかなー、とか思い始めたら、段々チートキャラと化していきました(汗 折角ちゃんと人が乗れるわけですし。

 ただ、そうすると使いどころに悩む(汗 ブラウリッター(初代の方)はオリジナルボディが既に失われており、現在はレドラーをベースに再構築した機体となっているため、性能的には相応にデチューンされているという設定ですが……ツヴァイは完全にオリジナルなので、馬鹿みたいな性能になっています。

 アレかなー、リベレイターが考えていくうちにどんどんスペック低くなってった反動かなー……。カタログデータだとゴドスと同等です、リベは(汗 磁気嵐システム使えませんからね。一応、反則技(アサルトさんとこのDFCみたいなの)はありますけど。

 最大の問題は、それに見合う外見的な説得力を持たせられるか否かなのですが……。

塗料買いに行ったり、こんなの組んだり

2010-10-22 20:58:16 | Weblog
 そんなわけで仕事が休みだったので、リベレイター用のスプレーを買いに行ってました。

 久方ぶりに行った地元の玩具店なのですが、未だにバイオプテラとかRZ版のケーニッヒウルフとかが定価で置いてあるのは相変わらず……。

 で、塗料と一緒にこんなの買って来ました。



 コトブキヤHMMガンスナイパーです。

 現在執筆中のSS『エンシェント・プロフェシー』の登場キャラが、この機体を使う予定でして。折角なのでリベと並べられるように購入して、パチ組みまで済みました。

 当のリベは、ベースカラーの白を吹いた所まで。ただ、塗り漏れやらムラやら塗膜のダレやら結構あるので、手直し必須……。一時的にキャノピーや関節キャップ付けてますが、またすぐ外します。

 第二話は現在本文執筆中。ではでは。

明日は休みなので

2010-10-21 23:39:29 | Weblog
 リベレイターの塗装を進めたいなー、と考えています。

 開発実証機、もしくは実験機という事で、現在考えているカラーパターンは白と黄色のツートンです。イメージはガンダムTR1ヘイズル改……ですかね。

 そんなわけで、黄色のスプレーもどこかで調達してこないといけないわけですが。

 話は変わりまして、ツイッター始めました。ユーザー名『takigami210』でやっています。どうも自分が使ってるブラウザ、ツイッターに対応していないのか何なのかログインすると画面が表示されず……もっぱら携帯から呟いてます。

 他愛も無い話ばっかですが、良ければ見てやってくださいな。

講座を執筆

2010-10-21 00:03:00 | Weblog
 久方ぶりに、『イリアスのゾイド講座』を書いてました。やっぱり楽しいですね、コレ。

 とはいえ、今回の講座はここでの公開にはならないんじゃないかなー、という予感が。実際の所どうなるかはまだ不透明ですが、いかんせん丁度良い場所があるので……。

 というわけで、近日公開未定とだけ。

心機一転なアトガキ

2010-10-19 21:11:51 | Weblog
 ……まず、『パイロット版』ってなんじゃいという方の為に説明を。

 今回のSS『エンシェント・プロフェシー』は、『習作』のつもりで書いています。過去に滝上が完結させたSS二編、『アルフィ・サーガ』に関してはアルフィのキャラクターが、『LTT』においては元々ある程度とはいえストーリーの下地があった事が、完結に導けた大きな要因でした。

 で、それに頼らないできちんとSSを最後まで書けるのか、改めて試してみようと思ったのが今回の『エンシェント・プロフェシー』です。

 現在、『預言者の回顧録』全編を一回まるごと見直して、再構成をかけようと考えています。その前に、文章のカンを取り戻すためそしてとにかく一本のストーリーを破綻無く最後まで続けるため、そして何より書きたかったので(多分、これが一番重要)書くことにしました。

 そんなわけで、パイロット版です。第一話を丸ごと使った予告編みたいなものです。場合によっては書き直す可能性もありますが、このまま行けそうならこのままこれが第一話になります。

 で、主役機になる『リベレイター』なんですが。



 御覧の通り未完成です(汗 現在第一次サフ吹きまで完了。

 こいつは当初、ガンスナとドスゴのミッシングリンクとして考えていました。というか現在もその設定に変わりは無いのですが、あくまでもガンスナの素体開発と並行して行われた、試作兵装のテスト機という立ち位置に変更しました。素体はこのままで、幾つかの試験用兵装を作……れれば作る予定です。ただ、作中では多分ずっとデフォルトのままですが(汗

 ブラウツヴァイはどうしたものか……。この話にライバル機として出そうかしら。

エンシェント・プロフェシー 第一話パイロット版

2010-10-19 21:10:09 | ゾイドSS
「くそっ、やっぱり中古のスカイバギーじゃ、このスピードが限界か……!!」
 西方大陸南部、エレミア砂漠を疾走する小型ビークルの上で、少年が悪態を吐いた。
「うわっと、と!」
 背後から迫る巨大な鋼鉄の足をかわし、何とかして振り切ろうとスロットルを最大まで開けるものの、思ったほどの加速はしてくれない。というより、後ろから走ってくる全長10メートル強はある鋼鉄の獣の方が明らかに、速い。
「……全く、ようやく足を手に入れたと思ったらこれか! 戦争なんかやるから……!」
 スカイバギーを操る少年を追うのは、EZ-023『ヘルキャット』と呼ばれるガイロス帝国製の戦闘用ゾイドである。もっとも、人は乗っていないだろう。恐らく20年前の戦争の時に乗り捨てられ、野生化した個体……いわゆる野良ゾイドだ。
「やっぱり、多少高くついてもゾイドを手に入れるべきだったかなぁ……おわっと!!」
 口ではブツブツと文句を言いつつも、少年は自身を踏み潰さんとばかりに振り下ろされるヘルキャットの爪を右へ左へと避け、スカイバギーを進ませる。
「……あれは!?」
 そんな少年の目が、砂丘の向こう側にある人工物を捉えた。躊躇無く、スカイバギーをそちらに向ける。
 近付くにつれ、その存在がハッキリと見えた。四方をコンクリート壁に囲まれた、何かの施設だ。
「行けるか……!?」
 そこに逃げ込めば、ヘルキャットをやり過ごせるかも知れない。
 少年はスカイバギーのスロットルとは反対側にあるレバーを引いた。機首が上がる。だが最大加速中のスカイバギーは、上昇に割くパワーが足りないのか単純に中古だからなのか、反応が鈍い。このままでは、時速200キロ近いスピードでコンクリートに激突だ。そうなっては、いくらなんでも只では済まない……どころか、即死だ。
「こんの……! 上がれええぇぇ!!」
 全力でもって、少年はレバーを引く。スカイバギーのエンジンが悲鳴にも似た音を上げ、ギリギリのところでコンクリート壁を飛び越える事に成功した。
「よし! ……って、ちょっと!?」
 だが、その直後。無理が祟ったのか、スカイバギーのエンジンが火を噴いた。
「くっ……!」
 何とか荷物を抱えて、スカイバギーから転げるように飛び降りる。尻に火をつけたスカイバギーはそのまま暴走し、コンクリート壁に激突した。
「……た、助かった……かな?」
 火柱と黒煙を呆然と眺めながら、少年は息をついた。
「はあ、中古とはいえ折角の足が……。というか、ここは一体……」
 見たところ、どこかの軍事施設のようだ。しかし人の気配が一切無い。そのわりには建物の窓ガラスが割れていなかったり、敷地内にペイントされたラインがくっきりと残っていたりと、さほど長い間放置されていたようにも見えなかった。
「とりあえず、ちょっと調べてみようか」
 そう呟いて、少年は建物の扉を開けた。

 ZAC2120年。ガイロス帝国の西方大陸進出に伴う、一連の戦争……第二次大陸間戦争が終結して、約10年。中央大陸では、ヘリック共和国とネオゼネバス帝国の和平が実現していた。もっとも、これは単純に両国共に戦争の継続にメリットを見出せなくなったがためであり、紛争の火種は今なお燻り続けている。
 そして西方大陸は、さらなる混沌の時代にあった。北エウロペを実質支配していたヘリック共和国は自国の統治に手一杯であり、またガイロス帝国も、19年前の『ヴァルハラの悲劇』から未だに立ち直ってはおらず、統治する国家を失った広大な大陸は、まるでかつての民族対立を繰り返していた時代に逆戻りしたかのようでもあった。
 これは、そんなエウロペに降り立った一人の少年の物語である。

「すいませーん! 誰か居ませんかー!?」
 手当たり次第に扉を開け、薄茶色の髪をした少年……ライ・フジミヤは施設に残っている人間を探す。だが、16個目の扉を開いたところで諦めた。
「……本当に誰も居ないや。困ったな……」
 元々、計画に無理があったというかそもそも無計画だったという事は自覚している。だが実際、西方大陸に渡れると知って居ても立ってもいられなくなったのだから仕方が無い。
(……姉さん)
 壁にもたれかかり、ジャケットの内ポケットから写真を出す。そこには、ライと同じ薄茶色の髪を伸ばした少女が、現在より幾分幼い姿のライと共に写っていた。
 ライの姉……ユキ・フジミヤ。考古学者として、3年前に中央大陸からこのエウロペに渡り、古代ゾイド人文明に関する調査を行っていた。頻繁にデルポイで暮らしていたライに手紙をくれたものだが、一年ほど前からそれがプッツリと途絶えていた。
(今、何処に居るんだよ……姉さん。生きてるんだよね……?)
 エウロペに渡るまでは、ユキはライと二人で暮らしていた。実の両親を知らないライにとって、唯一の家族。疑心が不安に変わるのに、それほど長い時間は掛からなかった。
 結局ライは、待つことなど出来なかった。身一つでもエウロペに渡り、姉を探す。幸運な事に、今年よりデルポイとエウロペを結ぶ定期航路が就航した。ライは迷わず、それに乗り込みエウロペの大地を踏んだのだった。
「……って、今は自分の身を心配した方が良いかも」
 物思いに耽っていたライは、今更のように状況を再確認する。足は壊れた。荷物は無事だが、水と食料はさほど多くない。
「よし、まずは水と食べ物を探そう」
 幸いな事に砂嵐は凌げる。とりあえず、生きてさえいれば何とかなるだろうと根拠の無い自信を胸に、ライは建物に隣接されている倉庫らしき場所に向かった。

『……たすけて』
「えっ」
 倉庫に足を向けたライは、突然頭に響いた声に立ち止まった。
「だ、誰か居るんですか?」
『たすけて』
 今度はハッキリと聞こえた。しかし、耳で感知したのとは違う。まるで頭の中に直接響くような感覚。
「……い、一体何がどうなって」
『こっち』
 響く声と共に、明確なイメージが重なった。ライが向かう倉庫の一つ向こうにある格納庫……そこから伝わってくる。
 一体これが何なのか、考える前にライは格納庫に走った。扉を開ける。
「……これ、って……」
 そこに屹立していたのは、紛れも無く金属の身体を持つ恐竜……ゾイドであった。
「何だろう、この機種……見たことが無い」
 全体的なシルエットは、かつての共和国最大の量産機『ゴドス』に近い。だが、やや貧弱な印象を受けたゴドスに対し、この機体はマッシヴな印象を持っていた。というか、単純にゴドスより一回り以上大きい。
『たすけて』
「っ、また……!」
 頭の中に響く声。弾かれるように顔を上げる。視線の先、恐竜型ゾイドのコクピット内部。
「……女の子!?」
 オレンジのキャノピー越しに、コクピットに座す淡い栗色の髪をした少女の姿が見えた。シートに身体を預けたまま、眠っているように目を閉じている。
「君なの、さっきから助けを求めてるのは!?」
『……はずして、わたしを、この子から……』
「は、外す……!?」
 言葉が意図するところがわからず、ともかくも近くに行こうとライはキャットウォークの梯子を上り、コクピットに上がる。
「……っ! 何だ、これ……!?」
『はずして、これを』
 そこでライは、少女の言わんとする意味を理解した。シートの後方から伸びるケーブルが、少女の全身に貼り付けられた心電図モニターのような何かに接続されている。彼女はこれを外してと、ライに懇願していたのだ。
「待ってて、今開けるから……!」
 キャノピーを跳ね上げ、コクピットに滑り込む。入院患者のような服を着た少女の身体に纏わりつくケーブルを、一本一本掴んで引き剥がした。
「……ん、っ」
 最後のケーブルを外すと、少女が呻いた。思わず後ずさるが、直後に少女が目を開けるのを見て踏み止まる。
「……ありがとう」
 じっとこちらを見た後に、少女はぽつりと、一言だけ言った。
「あ、い、いや……うん」
 彼女の瞳……澄んだ銀眼に、ライは引き込まれるような感覚を味わう。二の句を継げず、キャットウォークの手摺りにもたれたままライは押し黙った。その様子を、少女は表情一つ変えずに見つめる。
 ――不意に、格納庫全体を突き上げるような衝撃が襲った。
「何だ!?」
 開けっ放しの扉から、外が見える。
「……あいつ、まだ居たのか!!」
 つい先ほどまでライを追っていた野良ヘルキャットが、いつの間に城壁を飛び越えたのか格納庫に頭突きをかましていた。
「くそっ、こんな時に……!」
「……あの子、なに?」
 それを見て、栗色の髪の少女が聞く。
「野良ゾイド! さっきから僕を追っかけまわしてるんだよ……うわあっ!!」」
 ライは少女に答えると、衝撃でキャットウォークからコクピット内に転がり落ちた。
「いてて……えっ、ちょ!」
 まるでそれを待っていたかのように、恐竜型ゾイドのハッチが閉まる。
「座って」
「え!?」
「この子を、動かしてあげて」
 いつしかシートから退いていた少女が、ライに座るよう促す。
「……仕方無い、やるしかないか!」
 ともかくあのヘルキャットを追い払わなければ、この少女から事情を聞くことすら出来そうに無い。
「いい、しっかり捕まって!」
「ええ」
 膝の上に少女を抱え、ライはシートに収まる。呼応するように、コンソールパネルに次々と光が灯った。
 そして中央パネルに、この機体の名を示す文字が並ぶ。
「リベレイター……、それが、お前の名前か」
 ライの声に応えるがごとく、リベレイターは一声吼えた。

 続く