中学2年の息子の生活態度をめぐり学校側と面談中、教諭にケガをさせたとして、埼玉県警朝霞署は8日、公務執行妨害と傷害の疑いで、同県志木市の建築業富永慎容疑者(36)を逮捕した。「うちのしつけに口出すな」と激高、つかみかかった。執ようなクレームを学校に持ち込むモンスターペアレントが問題となる中、校内での面談が傷害事件にまで発展した。
事件があったのは、埼玉県志木市立宗岡第二中学校。朝霞署の調べによると、富永容疑者は7日午後4時45分ごろ、同校の相談室で面談中、教諭の襟首をつかんで突き飛ばし、顔に軽傷を負わせた疑い。
事件の発端は7日昼。同校2年の息子が給食中、自分のクラスの教室以外の場所で昼食をとっていたところ、数人の教諭が注意し指導した。学校側がこの件を生徒宅の留守電に入れたところ、午後3時15分ごろ、富永容疑者と妻が来校。「何で大の大人が何人も取り囲むようなことをするのか」と抗議したという。
学校側は生徒が所属しているサッカー部の男性顧問(48)と学校長ら計3人が立ち会い、富永容疑者と妻、生徒の計6人で面談が行われた。7日の給食中の指導について、富永容疑者は「先生の指導はもっともだ」と一度は納得したという。
だが、生徒をめぐっては11月、練習中の危険行為を注意したサッカー部顧問に殴りかかるトラブルを起こしており、現在まで休部処分になっていた。富永容疑者は息子を部活動に戻してもらえないかと相談。顧問の教諭が「(生徒が)自分のしたことを先生や部員に謝らないと復帰させない」と話し口論になった。
トラブルの時の事情が分からないとする親に対して、顧問の教諭が「どういうしつけをしているのですか」と詰問。これに富永容疑者が激高し、「うちのしつけに口出しするのか」などと言ってテーブル越しに顧問の教諭の襟首をつかみ突き飛ばし、転んだ教諭は顔を負傷したという。
学校長らが引き離したが、富永容疑者はそのまま学校を退出。学校側は朝霞署に被害を届け出た。富永容疑者は容疑を認めているという。
▽モンスターペアレント
教育評論家の向山洋一氏が命名した、学校や教師に対し非常識な要求をくり返す保護者のこと。91年ごろから“クレーム”を付ける親が増えはじめた。「給食費を支払わない」といったものから「自分の子供が写真の中央に写っていない」「いじめを受けた。転校させるので交通費を払え」「教え方が下手。教師を代えて」といったものまで。昼夜を問わず電話をかけてきて、怒鳴りまくる親もいるという。度重なる親からのクレームに、体調を崩し退職に追い込まれたケースも。このため東京都港区では6月、法律的なトラブルから教員を守るため顧問弁護士と契約。小、中学校が直接相談できる制度をスタートさせた。
[ 2007年12月09日付 スポニチ紙面記事 ]