お寺のこと

真宗大谷派延慶寺の住職です。

老病死がなければ

2008-12-05 13:41:07 | 住職の思ったこと
「コクーン」という題名の映画をケーブルテレビの番組で視た。老人ホームで暮らす老人達。連れ合いに先立たれ一人で入所している老人、家族から遠く離れて夫婦で入所している老人、ホームの近くに娘夫婦と孫が住んでいて入所している老人夫婦。ホームでの毎日はいつも同じ生活、変化に乏しい日々の中で時間だけがゆっくり過ぎて行く。老後を楽しんでいるという様子も伺われない。しかし確実に老人達は自らに迫りつつある、老い死んでいくという不安を感じている。そんな老人達はある時地球に来た異星人と出会う。異星人の不思議なエネルギーによって老人達は精気を取り戻す。不老の妙薬に酔いしれるが如く、かつてを思い出し夢心地の感覚に老いを忘れてしまう。やがて異星人は自分の星に帰る時が来た。そして異星人は老人達に彼らの世界に来ても良いと誘った。異星人の世界には永遠という言葉はないという、いつまでも生きていられるのだという。(永遠という言葉は人間のはかない憧れか?)老人達は迷いながらも決断をした。異星人の世界に行くことを。「人間は寿命が尽きて死んでいくのが自然なんだ」と言い切った老人は一人ホームに残った。「自然は人間に不公平だ」と言った老人は新しい世界を求めた。
老いることのない世界、病気になることのない世界、死ぬことのない世界、誰とも別れることのない世界、ホームにいた老人のほとんどがその世界へ行くことを望んだ。映画はハッピーエンドで終わった。
 老病死のない世界を人間はひとつの理想の世界として夢を見続けてきた。きっと誰もが心の中で密かに憧れているに違いない。