端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
アーカイブにある作品は人事を尽くした盛者必衰の入れ替え制。

ペンダント

2007-02-08 10:29:39 | 自己終結
魔物を退けながら、川下に向かって歩いていく。
夜でしかもデコボコした道も相まってか、ルークは歩きにくそうにしていた。
早く帰りたい、まだ出口に着かないのか、お前は何なんだと五月蠅く言いながら。
今、彼を置いていくのは簡単なことだ。
譜歌で眠らせてしまえばそれで終わり。
けれど、それは無責任だ。

「あなたの声のせいで、居所がバレているのが分かってる?」
「な、何ぃ?」
「この戦闘の多さは、あなたがきっかけなんだけど」
「…う、うるせー。俺がこんなとこを歩いているのはお前のせいだろうが」
「だから、あなたをバチカルに送ろうとしてるんじゃない」

ぐっ、と言葉に詰まるのを見届けると、迷うことなく歩く。
歩きながら、無意識に首にかけたペンダントを触る。
大切なひとたちがそれぞれの思いを込めて、それぞれの経緯で。
私の手元に渡ったペンダント。
大丈夫、私は冷静よ。

「…なぁ」
「何?」
「お前は怖くねぇの?」
「怖い?」
歩くことをやめないで、振り返る。
彼は何だか難しそうな顔をして、上の空になっていた。
続ける。
「暗いし、魔物もいるし、そんでもって水の音がするんだぜ?」
「私は平気よ」
このペンダントがあれば、どんな状況だって怖くない。
みんなが護ってくれている気がするから。

「そっか…。やべぇ、トイレに行けねぇ…」

歩き続けてどれだけ経ったろう。
鬱蒼としていた木が、ようやく切れてきた。
ヘトヘトになりながらもついてきた彼は、すっかり参っていた。
声を掛けようとしたとき、悲鳴が上がった。
「わー!! お、お前ら、漆黒の翼か!?」
「え?」
状況を把握出来ずにいると、悲鳴を上げた男はさらに話し続ける。
「ここら辺を荒らし回っている男女三人組の盗賊! って、あんたら二人か」
「人違いしたのはそっちだろうが!!!」
ルークの意見と初めて一致した。
男は悪かったよ…と言いながら、私達をまじまじと見た。
私が何か言おうとするより早く男が切り出した。
「あんたら、これからどこ行く?
 から馬車で戻るのも何だからよ、商売させてくれないか?」
「馬車…って、辻馬車ですか?」
「ああ、目的地は首都だよ」
「本当かよ!乗る乗る、絶対乗る!」
「一人これぐらいだけどいいかい?」
馭者はすっと紙を出してきた。
あまりの高額な値段に言葉が出ない。
ぼったくりもいいところだ。
「父上が払うよ」
「ダメダメ、即金だよ、即金」

迷った。
彼を確実に送り届けるなら、ペンダントを質に入れてでも乗るべき。
けれど、このペンダントは唯一無二の大切な物。
せめぎ合って、最終的には「軍人」の自分が勝った。

「これで…」
「お?おー、なかなかの上等品だ!いいぜ、乗りな!」
「よかった、これでもう靴が汚れなくて済むぜ」
「……………よかったわね」

****************************

ティア視線にしてみました。
軽く…ですが。
そうじゃないと、ペンダント語れませんし。
うちのルークは目聡くないので、ペンダントに気付かないし。

「…なぁ」から始まる段落は、私の連想です。
夜で、敵がいて、水音したら、トイレに行けなくなるなぁと思って…。

ただでさえペンダントを手放したことでも悲しいのに。
ルークが「靴」を気にして喜んだことが激しく怒っていることが分からない。
罪…だねぇ。

1 コメント

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前の米、タイトル入れ忘れたよ (黒兎)
2007-02-21 00:43:52
をを、違う視点!新鮮☆

このペンダントを取り戻す日が超楽しみだ・・・!!

>「そっか…。やべぇ、トイレに行けねぇ…」
ルーク素敵すぎる(*´∀`)!!
話にしか聞いてなかった魔物もいたんだもんね!
海もあったんだもんね!
そりゃあオバケくらいいるよ ね!(*´∀`)

ルーク視点だと、
何か渡したぞ、何か悲しそうな顔してるぞ、
で終わりそうな気がするぜ・・・
最終的に取り戻すんだから、覚えてはいるんだろうけど、
このときの彼に取っちゃ、どうでもいいことだろうしね。

罪だねぇ・・・
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