VIXX!暗闇を照らせ!

*性的表現を含む場合タイトル横にR18と表記します。
*実在の人物の名前を借りたフィクションです。

【act.7】 夢 2

2016-01-24 22:53:42 | trash (ウォンシク×ホンビン)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【夢 2】(R18)

 

 

 

 

 ホンビンが目を開けた。自分を見下ろしているウォンシクが視界に入ると、彼は顔を
一瞬歪めた。

 「大丈夫か、お前悪い夢でもみたの。なんか…」

 ウォンシクはホンビンの額の生え際を梳くように、指で撫で上げていた。

 「…僕、何か寝言言ったか」 

 ホンビンは、澄んだ大きな瞳を不安気に揺らめかせた。

 「…いや、いや」

 ホンビンの瞳の中に安堵の光が灯った。彼は自分の額に置かれたウォンシクの手の
上に自分の手を置くと、彼を見つめた。その瞳に促されるようにウォンシクはまた横になった。
 2人は抱きしめ合い、口づけた。

 

・・・・・・・



 「なんか、うなされてたよ」
 さっきまで撫でていたホンビンの額の生え際に柔らかく口づけてウォンシクが心配そ
うに言ったが、ホンビンは何も言わずただ彼に身体をすり寄せた。

 ホンビンはウォンシクの首の付け根に顔をつけるようにして、彼に密着した。他人の匂
いは生臭くて大嫌いだったのに、他人の肌は古い油のようにベタベタして大嫌
いだったのに、ウォンシクに限っては最近あまりそう感じなくなった。それどころか少し
汗ばんだ肌にくっついて彼のニオイを嗅ぐと、何故だか不安な気持ちが消えて心が落ち
着いた。多分慣れたんだろうな、とホンビンは思った。

 ウォンシクはまた指先でホンビンの頭皮を愛撫し始めながら、おずおずと言った。

 「…なあ」

 ホンビンは薄く目を開け、また閉じた。

 「お前最近、何か変だよ。ますます喋んなくなってさ」

 「…そうかな」

 ホンビンは自分の髪を梳くウォンシクの指に陶酔しながら、上の空のような返事をした。

 「…なあ、なんかあったの」

 ホンビンは目を開くと、ウォンシクの胸を鬱陶しそうに両手で押して自分から剥が
した。仰向けになって天井をぼんやり見ながら

 「……スヌン(修能試験)が近づいてるから、それで緊張してるのかも」

と言った。

 ウォンシクは眉を上げた。身体を少しだけ起こし肘をついて身体を捩るとホンビンを凝視した。

 「お前、うなされるほど俺のこと心配してるのか 」

 ホンビンは横目でウォンシクを見た。

 「だってお前は、何も心配することないじゃん。学年1位で」

 「1位じゃないよ」

 「俺にとっちゃ、5位より上なら1位と同じだよ」

 ウォンシクは口を尖らせた。

 「めちゃくちゃだな」

 ホンビンは笑った。 


 

  「…お前は…もう大丈夫だよ」

 「何が」

 「お前は、バカじゃなかったみたい」 

 「は…」

 「僕はお前の事、てっきりバカだと思ってた。だけど違ったみたいだ」

 「…お前って本当に、失礼なヤツだなあ」

 「お前は大学に行けるよ。ウォンシギ」

 ホンビンがクスクス笑うと、彼の両頬に浮かんだエクボをぼんやり見ながらウォンシ
クが呟くように言った。

 「…俺」

 「……」

 「俺さ、俺、絶対無理だとは思うんだけど、俺できればお前と一緒の学校に行きたいな」

 ホンビンは少し驚いたように目を見開いたが、ウォンシクの顔を神妙な顔でじっと見て、
それからきっぱりと言った。 

 「それは無理だな」

 ウォンシクの顔が赤くなった。 彼は目を見開き、躍起になって反論した。
 まだ分かんない。これからまだ1カ月半あるんだし、俺は勉強のコツがわかったんだ、俺
はついに何かを掴んだんだから可能性が全く無いとは言えないと思う、と捲し立てるウォン
シクを、ホンビンはニヤニヤしながら見た。 

 

 ・・・・・・・・

 

 「なあ、ホンビナ」
 
 「何」

 「…お前って、夢とかあんの」

 「…変なこと言うなあ」

 「やっぱり変かな」

 ひどく恥ずかしそうに目を伏せたウォンシクを見て、ホンビンは微笑んだ。

 「…お前はあるの? 」

 「笑わないで聞いてくれる」

 「笑わないよ」
 

 「…俺さ、俺、フランスに行きたいんだ」

 思いがけない突飛な言葉にホンビンは目を丸くした。ウォンシクは天井を見つめながら
言葉を続けた。

 「小さい頃一度だけ行ったことがあって。親と」

 「へえ」 

 「その時、真冬だったんだけど、多分、北の地方の海に行ったんだ」

  「……」

 「なんで親がそんなところに行ったかわからないんだけど、とにかく行ったんだ。風が刺
すように冷たくて、ものすごく寒かった。母さんが自分のレモン色のマフラーを外して、そ
れで俺の顔をグルグル巻きにした…
 空は低くてどんよりとした灰色で、そこに黒い雲が流れてた。海も灰色で砂浜も灰色で、
本当に何の色も無くて、そんな中に俺に巻きつけられてるマフラーの黄色だけがぽっかり
と浮かんでた。」
 
 ホンビンは興味深そうに目を光らせながら、ウォンシクの話に耳を傾けた。

 「後ろを振り向くと、石で作られた古い城壁があって、それが砂浜に沿うようにずっと向こ
うまで続いていた。俺はなんだかものすごく怖くて、それに死にそうに寒くて、砂浜を足でザ
クザク踏み鳴らしながら、父さんと母さんに早く帰ろう早く帰ろうって言い続けた。だけど2人
は俺のことなんて無視して、俺に背中を向けて随分長いこと景色を眺めてた…」

 

 「…なんだか不思議だな」

 「うん」

 薄闇の中に寝転んで並んで天井を眺めながら、二人はそれぞれ暗い冬の海を思い浮かべた。
 ひどく陰気で憂鬱な光景であるはずなのに、ウォンシクの話を聴いているとそれがとて
も魅力的なものであるように感じられた。

 「そんなことずっと忘れてたのに、最近やたらと夢に見るんだよ」

 「……」

 「俺、もう一度あそこに行きたいと思って。またあの景色が見たいんだ」

 「…素敵だね。行けよウォンシガ」

 ホンビンが微笑むと、ウォンシクはおずおずと言った。 

 「…その時はさ」
 

 「一緒に、…一緒に行かないか、ホンビナ」

 「……」

 「お前にも、あの景色を見せたいんだ。俺、お前と一緒に見たいんだ」

 

 「行こうぜ。なあ、ホンビナ」
 

 ホンビンは、懇願するように自分を見るウォンシクの顔を見た。

 

 「……それは…」

 

 それは無理だ。



 ――だが、ホンビンは何故か言えなかった。



 「…バイトしなきゃ」
 咄嗟に彼の口をついて出たその言葉は、意思を伴わない、何の意味も持たない言葉
だったが、それを聞いたウォンシクの目は輝いた。それは思いも寄らない言葉だったか
ら。ホンビンの言葉は、不同意ではない言葉だったから。 

 
 「俺もバイトする」 
 急に出したウォンシクの大声に、ホンビンの身体はビクついた。
 

 「…大学に入ったら俺アパート借りるから。そしたら一緒に住もうよ…」


 「バイトして、それで」


 「真冬だと、旅費も案外安いはずなんだ…」


 そこまで言った時、ウォンシクは自分の両足の間に忍び込むホンビンの足を感じた。戸
惑ったように見ると、ホンビンは 気怠い目でウォンシクを見つめていた。そうしながら彼は、
膝でウォンシクの股の間のものを擦り始めた。

 「ホンビナ」

 「もう話はいいよ」

 そう低く言うと、ホンビンはウォンシクに身体をくっつけた。彼の腰を柔らかく引き寄せ
ると膝の動きを徐々に速めた。みるみる赤くなっていくウォンシクの顔を見てホンビンは
鼻で笑った。
 
 唇の先でウォンシクの唇を微かに擦ると、ウォンシクは切羽詰まったように彼に口づけ
した。…舌を絡ませながらホンビンは膝を動かし続け、そうしながらウォンシクの乳首を親
指の先で軽くさすった。

 「気持ちいい? ウォンシガ」

 ホンビンが耳元で囁くとウォンシクの息は一層熱く激しくなった。彼の切なそうな顔を見
るホンビンの顔は無表情だったが、頬は紅潮しつつあった。ホンビンはウォンシクを引き
寄せてしがみついた。鼓動がどんどん高まって、いくら呼吸しても息が苦しかった。

 耳元にかかるウォンシクの急くような息を感じながら、自分自身も昂っていくのをホンビ
ンは感じた。

 ウォンシクが何か囁いて、ホンビンは口の端を上げた。彼はうつ伏せになると、両腕を
曲げてその上に顔を伏せた。

 ホンビンが小さく振り向くと子供っぽくてお人好しのキムウォンシクは消えていて、代わり
に、妙に真剣で恐ろしい、動物のような雰囲気を持つ男が冷たい顔で彼を見下ろしていた。
…ウォンシクのそんな表情を見る度、ホンビンは怖くなって少し緊張する。

 

 ――こいつはいつもそうだ。僕を殺すような顔をして、僕を抱く。

 

 背後からウォンシクが圧し掛かり、それから彼がゆっくりと入ってくる。最初は死ぬほど
痛いけど少し我慢をしていれば、そのうちに言いようのない快感が身体の底から湧き上
がってくる。耳が何かに塞がれて周りの音が無くなる。耐えられずに出した自分
の声さえも聞こえなくなる。

 

 やっぱりお前はバカだ。
 バカなウォンシギ。そんなことできるわけないのに。

 僕には夢なんてない。
 僕はこの街から出たことさえない。

 

 ホンビンは本当はこういう行為が嫌いだ。痛くて、汚くて、グロテスクで滑稽で、禍々し
いから。…だけど、ウォンシクに限っては最近あまりそんなことを思わなくなった。
 ――きっと多分、もう慣れたから。

 

 ホンビンは身体を大きく震わせた。

 

 実際、僕はこいつに殺されてる。とホンビンは思った。



 


  


  

 

  

 

 

 

 end