VIXX!暗闇を照らせ!

*性的表現を含む場合タイトル横にR18と表記します。
*実在の人物の名前を借りたフィクションです。

【act.3】 Hanging On

2015-03-21 23:00:00 | ERROR(テグン×ハギョン)



















【Hanging On】  (R18)










ハギョンの部屋の一番奥にある寝室に入ると、テグンはいつものようにその長い腕で包み
込むようにしてハギョンを抱きしめた。互いを探り合うような深い口づけをひとしきり交
した2人は、名残惜しそうに口を離すと熱を帯びた目で見つめ合った。

テグンはハギョンの瞳から目を逸らさないまま、白い指先を這わせるようにして彼の首を
少しずつ撫で下ろし、ノドボトケの下の柔らかな部分に行きつくと指先に少しだけ力を入
れて押さえ、円を描くようにゆっくりと回し始めた。
ハギョンは目を瞑って顎を上げテグンの指に身を委ねていたが、そのうち少しずつ息を震
わせ始めた。

ハギョンはテグンの指の動きに合わせて胸を前後に動かし、テグンがそれを早めるにつれ
彼の呼吸は激しくなった。恍惚というよりもむしろ苦しそうな表情を浮かべながら、自分
の指に夢中で喉を擦り付け続けるハギョンから目が離せないまま、
「そんなにいいのか。」
と掠れた声で不思議そうに訊くテグンをハギョンは肩で息をしながら切なげに見た。
彼の顔は例によって真っ赤だった。

「猫みたいな奴だな。」
テグンはうっすらと笑うと、ハギョンのうなじに手をやって自分の胸に引き寄せた。

「だけど、お前はこっちの方がもっといいんだろ。」
テグンはからかうように言うと、ハギョンの耳朶を親指と人差し指で柔らかく摘んで擦り、
それから指の先を耳の穴にそっと差し入れた。ぞくりとする快感が走り、ハギョンは一瞬
身体をビクつかせ声にならない声を上げた。予想通りのハギョンの反応にテグンは満足気
な顔をした。

彼はハギョンと寝る度彼がどの部分に敏感に反応するか熱心に調べていたので、自分は今
やハギョン自身よりも彼の身体に詳しいと妙な自負を持っていた。テグンはハギョンの髪
をそっと撫でた後さっきまで指で弄んでいた彼の耳にそっと口づけた。舌先を耳の穴に入
れて中を優しく掻き回すと、ハギョンはすがるような声を出してテグンにしがみついた。

こういう溜息交じりのハギョンの嬌声はテグンをいつも昂らせた。自尊心の強い優等生の
ハギョンが乱れるのを見るのは格別だった。
こいつのこんな声を知っているのは自分だけ
だ、こいつのこんな顔を知っているのは自分だけだという思いがテグンの独占欲を満たし
た。彼は今だに自分がハギョンを愛しているのかどうかわからなかったが、とにかくこい
つを他の人間に取られたくないという思いはあった。

この奇妙な執着心が果たしてハギョンへの愛情なのかどうかテグンにはわからなかったし
考えたこともなかった。たとえ答えが出なくとも物事を突き詰めて考えるハギョンとは違
い、テグンはわからないことをくどくど考えることなど時間の無駄でしかないと思ってい
た。
目の前にある現実のみを肯定的に受け入れて対応するテグンは、スポーツ選手らしい
典型的な楽観主義者だった。

テグンの舌が蠢く感触はもちろん、頭の中に響く自分を内側から擦るざらつく音がハギョ
ンを一層興奮させた。膝から力が抜け崩れ落ちそうになったハギョンの腰をテグンが力強
く支えると、ハギョンはもうどうしようもなくなってシャツの上からテグンの胸に夢中で
口づけした。
そうしながらテグンのシャツの裾を引き上げてズボンから出し、下から手を忍び込ませて
彼の身体を直に触った。テグンが熱くなっていることを知った時、ハギョンは震えるよう
な悦びを感じた。









「テグニヒョン、女が出来たって聞きましたよ。」
撮影の合間の休憩時間に後輩たちに囲まれているテグンの姿をハギョンは遠目に見た。

「そんなもんいないよ。」
とテグンは否定してその場を立ち去ろうとしたが、後輩たちは皆がそう言ってるといって
テグンを離さなかった。
その噂はハギョンの耳にも入っていた。あるアイドル歌手がテグンにご執心でしつこく彼
に纏わりついていたが、2人は結局そのうち付き合うようになったという本当か嘘かわか
らない噂だった。

そんな噂の渦中にいてもテグンはハギョンの部屋に週に一度は来ていたので、それは本当
にただの噂なのだろうと、ハギョンは勝手に思っていた。テグンに訊いてみようかとも思
ったが、なんだか怖くてできなかった。それに…とハギョンは思った。

…自分とのことはあいつにとっては何の意味もないことだから、…あいつは僕の身体をお
もちゃにして遊んでいるだけなのだから、だからたとえ恋人がいてもそれほど関係はない
のかもしれないな。

そんな考えがふいに浮かぶと自分でも意外なほど胸がキリキリと痛み、ハギョンは思わず
自分の胸を掴んだ。

だけど自分だってあいつを利用してるとハギョンは考え直した。彼の中には、自分の問題
にテグンを巻き込んだという罪悪感が常にあった。遊ばれてるなどと思ってはいけない。
考えてみれば自分に彼を束縛する権利などどこにもない。ましてや嫉妬するなんて、思い
違いもいいところなのだ。

―僕はあいつの何でもない。あいつは僕の何でもない。
ハギョンは唇を強く噛みしめた。


あの時、テグンの部屋などに行くべきではなかった。とまた思っていた。

果てしなく繰り返される彼の考えの着地点は、いつもそこだった。










テグンがハギョンの部屋を訪れる頻度は最近徐々に減っていた。やはり噂は本当だったん
だな、と彼はぼんやり思った。

ハギョンは今ではもう眠る努力を放棄していた。どうせ眠れないのならばその時間を有効
に使うべきだと腹を括り、本を読んだりテレビを見たりして過ごした。外国の映画を字幕
を読まずにぼんやり眺めているとそのうちうつらうつらする時もあり、それだけで十分満
足した。

死んだ魚のような目でテレビ画面を眺めながら、ハギョンはリモコンで無数のチャンネル
を次々に切り替えた。

世の中には自分と同じような人間がたくさんいる。だから深夜にこんなたくさんの番組が
放送されているのだろうと思った。






ハギョンはふと思い立ってテグンの部屋を訪ねた。半年くらい前までは頻繁に訪れていた
部屋だが、なんとなく行かなくなったのはテグンの睡眠を邪魔するのが申し訳なかったか
らだ。それからテグンはかえって心配してくれて、気が向いた時にハギョンの部屋を訪れ
るようになっていた。

小さくノックをしてみたが返事はなかった。ノブを回してゆっくりと押してみるとドアが
開いたので、ハギョンは暗い部屋の中に入った。

「…ウナ…」

と呼んでみたが返事はなかった。寝室のドアをそっと開けてみたがベッドは空っぽだった。














ハギョンは部屋に戻るとまっすぐに寝室に入った。
ベッド脇の床に座り込みベッドに凭れたまましばらくぼんやりしていたが、やがてのろの
ろと立ち上がり、クローゼットを開けた。
彼は少し背伸びをすると、奥から琥珀色の液体の入った瓶を取り出した。それは以前テグ
ンの部屋にあったのと同じ銘柄のウィスキーだった。ハギョンは大事そうにそれを抱え、
ショットグラスと一緒にベッド脇に持ってくると栓を開け、鼻を近づけ匂いを嗅いだ。

ハギョンはグラスを片手で持ち、中のウィスキーをじっと見つめた。ウィスキーは部屋に
点けられた間接照明の柔らかなオレンジ色の灯りに照らされて、キラキラ光りながら揺れ
ていた。夕闇の海みたいだと思った。
ハギョンは少し緊張しながらグラスを口に持っていくと、ウィスキーを一気に飲み干した。
咳き込みそうになるのを手で口を塞いで抑えていると、咳の衝動はそのうち消えていった。


ハギョンは乾いた目で
「なんてことない。」
と言った。


身体の力が抜けるのを感じた彼は、そのまま床に横になった。

横向きになって寝転がると、床に置いたままのウィスキーの瓶とグラスが目に入った。
もう僕は大丈夫だ、と思った。どうしても眠れない時にはこいつに助けてもらえばいい。

もう他人に依存しなくてもいい、もう負い目を感じなくていいという解放感に包まれたハ
ギョンは仰向けになって天井を見ながら眠りに落ちかけた。



その時ふいに自分にのしかかるチョンテグンの身体の重みを感じて、ハギョンは目を開け
た。そこには誰もいなかったが、彼は確かにテグンの存在を感じた。


激しい胸の痛みに襲われ彼は呻いた。








ハギョンはテグンを抱きしめるようにして、自分を強く抱きしめた。































the end