今秋のNHK朝ドラになる、ニッカウヰスキー創業者
日本のウイスキーの父 竹鶴政孝物語
第九回
夢にまで見た本格ウイスキーの発売だったが、さらなる理想のウイスキーづくりを目指し、政孝は約束の年限をもって寿屋を辞した。
鳥井の直感と理解なくしては実現困難であったろう日本での本格ウイスキーづくり体験は、政孝の新しい出発に覚悟とさらなる確信を与えるに十分な重みがあった。
留学時代の記憶がよみがえる、体にしみ込んだ感覚が体の中心からめざめていく。
北海道積丹半島の付け根、余市に立った政孝は武者ぶるいした。
「ここはスコットランドか」ヘザーの花こそ咲いていないが、流れる雲、かすかに湿った風のかおり、冷涼な空気も十分だ。
足の下には無尽蔵のピートが広がり、清冽な水がこんこんと湧いているではないか。
「リタ、ついに見つけたぞ。僕らが夢を託せる理想の土地だ。」1934年、7月。「大日本果汁株式会社」設立。
工場敷地内に建てた木造洋風家屋にリタを迎え入れ、ウイスキーの原酒をつくり始めた。
蒸溜所の煙突からはピートを焚く青い煙りがたちのぼっている。
青春の地、スコットランドの風土に酷似した余市で政孝の新たな挑戦が始まろうとしていた。
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