LiquorStore ECHIGOYA五十嵐酒店 

東京都板橋区蓮根2-3-5

洋酒を中心に「モルトウイスキー」「禁断の酒・アブサン」などの紹介です。

日本のウイスキーの父・竹鶴政孝物語  〈最終回〉

2014年11月04日 | 竹鶴政孝物語
NHK朝ドラ放映中の、ニッカウヰスキー創業者

日本のウイスキーの父 竹鶴政孝物語

第十六回

 ニッカウヰスキー余市工場では、石炭による直火型の蒸留が今も続いている。
政孝がスコットランドで学んだこの方法は、ウイスキーづくりの原点であり、営々と未来へ継承されていくべき遺産なのだ。

「ウイスキーづくりにトリックはない」
これは政孝の口癖であった。世の中とても、安ければ質などかまわないなどという風潮が、いつまでも続くわけがない。

戦後の復興期を経て人々は落ち着きを取り戻し、ウイスキー本来の良さを求めるようになってきた。
 技術者の豊かな経験と愛情が、材料とじっくり対話する。政孝はじめ技術陣たちは、戦中・戦後の苦しい時代にも、もとめて品質第一主義を貫いてきた。

「信念を曲げずに前進する。それが好意を寄せて下さった人々に報いる私の道だと信じている」
 政孝の自負と誇りをよりどころに、今もニッカはこの道を歩み続けている。


 今、政孝とリタは余市をみおろす美園の丘に眠っている。二人の名前と< IN LOVING MEMORY OF RITA TAKETSURU >の英文が刻まれている墓石は、雪を冠りながら工場を見守っている。

 この丘の雪が溶け、余市川の水ぬるむ頃には、ニッカの新たな挑戦の二十一世紀がすでに始まっている。

                                            完




外務省が「マッサン展」開催

2014年09月23日 | 竹鶴政孝物語
外務省外交史料館の特別展示「マッサン展」が9月24日から開催されます。

日本・スコットランド関係の展示も多いようです。



開催期間:平成26年9月24日(水曜日)~平成27年5月8日(金曜日)
開館時間:10時~17時30分(土曜日・日曜日・祝日を除く)
(注)ただし、9月27日、10月の全土曜日は試行的に開館します
入場無料

詳しくは、こちらの外務省外交史料館をご覧ください。

日本のウイスキーの父・竹鶴政孝物語 <第15回>

2014年09月23日 | 竹鶴政孝物語
今秋のNHK朝ドラになる、ニッカウヰスキー創業者
日本のウイスキーの父 竹鶴政孝物語

第十五回

 試練の寒風は吹き止むことなく続いた。だが、社員の結束は以前にも増して強くなり、原酒はさらに豊かに、もっと深く眠り続けることを約束された。

 政孝の歩んだ挑戦の道も、多くの人々に鼓舞され励まされた軌跡の中に輝いている。決して平たんではない道だったが、高潔な先達との出会いによって政孝はひとまわりも、ふたまわりも大きくなった。

 「マッサン、少し休んだらどう」

 「リタこそ働きづめじゃないか。すっかり手が荒れてしまったね。」

 政孝はリタの手を気遣ったが、リタにとっては政孝と過ごしたかけがえのない日々の証しに思えた。





日本のウイスキーの父・竹鶴政孝物語  〈第14回〉

2014年09月15日 | 竹鶴政孝物語

 

NHK朝ドラのモデル、ニッカウヰスキー創業者

 

日本のウイスキーの父 竹鶴政孝物語

 

 

 

第十四回

 

 

 

 戦後の自由競争に戻ると、三級ウイスキーつまり粗悪なイミテーション・ウイスキーが世に出回り、飛ぶように売れた。

 

 当時の三級ウイスキーの多くは、原酒の割合も低く、アルコールに色と香りを添加した程度のもので、はなはだしいのは、まったく原酒の入っていないものすらあった。

 

 そんな中で経営は苦しかったが、政孝は自らの命脈を断つようなことには手をそめなかった。

 

確固たる信念で、品質を第一に考える姿勢を決して崩そうとはしなかった。

 

 身も細るほどに呻吟の日々が続いた。さりとて妙案があるわけでもなかった。

 

 

 

 慚愧に堪えない心の中を、全社員を集めて窮状を伝え、5パーセントという、限界いっぱいの三級ウイスキーを不本意ながら出すことを告げた。

 

いつしか会場にすすり泣きの嗚咽が充ち、檀上の政孝も流れでる涙をぬぐおうともせず、社員ひとりひとりを睨み続けた。この時全社員と政孝の

 

心はひとつにつながった。

 

 政孝は、たかぶりにまかせて力一杯テーブルを叩き、「諸君、ニッカウヰスキーの誇りを堅持しようではないか。

 

今まで本格ウイスキーをつくってきたことを、決して忘れないでほしい」

 

 暫く静寂が支配した。1950年初夏、余市川岸辺の葦はまだ茶色であった。

 

 

 

 

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日本のウイスキーの父・竹鶴政孝物語  〈第13回〉

2014年09月03日 | 竹鶴政孝物語

 

今秋のNHK朝ドラになる、ニッカウヰスキー創業者

 

日本のウイスキーの父 竹鶴政孝物語

 

 

 

第十三回

 

 

 

 運にも恵まれた。出会いには心底、感謝せねばなるまい。

 

 

 

本格ウイスキーづくりの夢を追っての、いばらの道であった。脳裏に恩人たちのあたたかい笑顔が浮かんでくる。

 

 

 

しゃにむに走り続けたわたしを支えてくれたリタ。そしてカーカンテロフのリタの家族。

 

 

 

設立に協力を惜しまなかった株主。妥協することない日々をともに過ごした技術者諸君、労苦をわかちあった工場の人々。

 

 

 

 それにも増して、ピートや草炭層をくぐって恵みを与えてくれた水、シベルアからの雪交じりの寒風や、適度な湿気をもたらしてくれた約束の地、余市。これらの自然との邂逅は何にもまして奇遇であった。

 

 

 

 この夢の道・技の道は、遥か青春のエルギンやキャンベルタウンに通じている。

 

 

 

「ウイスキーづくりにトリックはない」ウイスキーは、地球という有限の資産を借りてつくる、英知の液体である。

 

<生命の水>ウイスキーがつくり続けられることをありがたいと思う。

 

 

 

なぜならば、自然がまだ力を失っていないことを、雄弁に語っているからだ。

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