goo blog サービス終了のお知らせ 

自転車泥棒ふたたび

2007年02月10日 | 自転車ぐらし
 《自転車泥棒》というイタリア映画を最初に見たのは,さて,いつの頃だったろうか?
 
 遙かなる昔のオボロな記憶を辿ってみれば,そうさな,多分は1960年代の終わり頃,場所は『川崎駅ビル文化』という繁華街の小さなシネマ館だったように思う。高度経済成長期のまっただなかの,そこはガサツでワイザツでニギニギしくも活気に満ち溢れた都会の一隅であり,フルカラーの欲望,モノクロームの現実,スピリット・オブ・ルネッサンス,そんなものたちがゴッタ煮になって渦巻いているところだった。

  むかし俺がトゲトゲguillemet de chardonだったころ
   街はコゲコゲfumee de charbonだった
    判るかなー? 判んねーだろーなー

 いや,これでも当時は「ちょい悪ハイティーン」の位置付けだったのです(単に形而上的な意味において,デスガ)。 確かに客観的視点から振り返りみても,当時の京浜工業地帯の中枢たる川崎という極めてゴチャゴチャとした街は,ヴィットリオ・デシーカ描くところの大戦後のイタリア旧都市のたたずまいに共通するところがあったように思う。盗まれる方も盗む方も,ごくごく自然な日常生活のヒトコマを構成していたわけで,あぁ,俺らと一緒じゃん,などと,幼心にも親近感ないし連帯感を抱きつつ銀幕に見入っていたように思う。

 あ,以上は単なるマクラでありまして,実は先週のこと,外出先のショッピング・マーケット駐輪場で我が自転車を盗まれてしまったという,そういった話にもってゆきたいのでございます。いや,正確に申せば自転車1台をまるごと盗まれたわけではなく,自転車のパーツを盗まれたわけなのですが。 車種はジャイアントGIANTのマウンテンバイクXtC850,盗まれたパーツの内訳は,サドルWTB ROCKET-V,シートピラーHL SP359,リアフェンダーSKS X-BLADE,テールライトCATEYE TL-LD250R,以上4点であります。約20分ほどマーケットで買い物をして,駐輪場へ戻ってきたら,見事になくなっていた。平日の午後,まだ十分に明るい時間帯で,その駐輪場の周囲には人通りもクルマ通りもかなりある場所だった。当然,自転車本体への施錠はガッチリとおこなっていたのだが,いや,それが為か,サドル(とその付属物)のみを盗まれてしまった。これを要するに,例えば数人の若いオニイサンあたりが互いに示し合わせてちょいと悪さをすれば,駐輪自転車のサドルを持ち去ることくらい極めて造作もないことであり,事前に各人の役割分担を決めたうえで,実行犯がクランプをエイッと緩めてピラーごとヤッと引き抜いて大きな紙袋にでもサッと隠してソレ逃げろー。作業時間は10秒もあれば十分だったろう。

 いやいや,別に犯人の人物像ならびにその行動生態を推量してみたところで詮無いことだ。そのような不埒な行為を行う者は世の中にはそれこそ浜の真砂ほど存在するわけであり,単にこちらに運がなかったと諦めるしかない。サドルにロックを絡めていなかった当方の側にも不備があったわけで。それよりも,その時の愛車は鉄柵や支柱などに固定(いわゆる「地球ロック」)していなかったので,車体丸ごと盗まれなかったことをむしろ感謝すべきだろう。自宅までは一応「立ち漕ぎ」状態で乗って戻ることが出来たわけだし。さらに申せば,そのサドルは新車購入時に付属していた標準パーツなので,これを機にインターネット上に数多く存在する自転車販売サイトをあちこち訪問して,自分好みのサドルやシートピラーなどをアレコレ物色検討したうえで,新たに単品として購入するという楽しみなんぞが発生したという次第だ。新規需要開拓の御相伴に与り,アリガトサ~ン(と,これは少々倒錯した言い草か)。いずれにしても,急な出費が少々痛いことは否めないケレドモ。

 与太話のついでにもう一つエピソードを披露させていただきたい。実は昨年の夏のこと,タカシがやはり自転車を盗まれている。私の自転車が盗まれたマーケットからほんの数100mばかり離れた別のマーケットの駐輪場で,である(そういうエリアなのか~)。彼の場合もジャイアントGIANTのマウンテンバイクで,車種はMTX240。こちらの方は,本体丸ごと盗まれた。もっとも,カギをかけずに30分近く駐輪場に止めておいたということなので,この場合は盗人にも三分の理があると申せましょう。何せ,御存知の方は御承知だろうが,GIANTのMTX240というのは,なかなか見栄えのする,子供らにとっては結構カッコイイ自転車なのであるからして。

 盗まれたのは夏休み直前の7月中旬のことで,防犯登録は購入時にちゃんと済ませてあったので,当然ながらすぐさま所轄警察に出向いて盗難届を提出した。ただし,何分にもモノがモノであるし,まず発見されることはないだろうなぁ,カギをかけなかった自分が悪いとキッパリ諦めなさい,と本人には言い含めた。しかしながら,自転車のない中学生生活というのもそれはそれでかなり不便なものになろうかと思われるゆえ,ここは本人の強い希望を受け入れて,新たに代替自転車を購入することにした。こんどはMTBではなくママチャリ(軽快車)である。これも本人の希望によるものであって,いわく,中学3年生にもなるとジュニア・マウンテンバイクなどは「かなりダサい」んで,ちょっと使い込んだママチャリをサラリと乗りこなすのが「シャレてる」んだそうだ。このことが昨今のローティーン社会における一般的,全国的な傾向かどうかは,セケンシラズの父親にはよくわからない。恐らくは地域特殊性のタマモノだとは思いますが。

 とまれ,そうして夏休みの間,タカシの新たなママチャリ・ライフは続けられたのだが,8月末にもなって,何と盗まれたMTBが発見されたのである。発見連絡は警察からではなく,一般住民の方からだった。何でも,当のMTBは某公園の片隅で放置されるように数日間倒れたままで,よく見ると当方の氏名・電話番号シールが貼付されていたので,発見された方は老婆心ながらこちらに電話連絡して下さったということだ。まことに有り難いことである。

 さっそく引き取りに出向いてみれば,公園の隅に横たわっている懐かしのMTX240君は,哀れにも前後のタイヤが故意にパンクさせられており,また,後部のフェンダーも折られていたが,その他の外観にはさほど大きなダメージが見られなかった。防犯登録証は剥がされておらず,何よりも当方の氏名・住所・電話番号のシールまでそのまま残っていた。考えてみればイイカゲンな盗難だ。約1ヶ月半のあいだ,君は何をしていたんだい? 推察するに,当の窃盗犯はこのMTX240を,恐らくここではない他所の遠い町へとクルマに積んで持ち去ってゆき,夏休みの間その町で存分に乗り回したあげく(実行犯の子供が?),夏休みが終わる頃になって再びクルマに載せてこの町に持ち帰ってきて,楽しかったぜ,アリガトサ~ン,とばかり,公園の片隅にさりげなく置いて,しかるのちに速やかに立ち去っていった。ま,そんな感じだろうか。要するに,ネオ・レアリスモの世界はこの地においては未だ現実味を帯びているということか。なお後日談を述べれば,自車が発見されたあとも結局タカシは新しいママチャリを継続使用する方を選択し,二度とMTX240へと戻ることはなかったのである。ひと夏の数奇な運命に翻弄されたMTX240君がその後どのような末路を辿ることになったのか,それは誰も知らない(ということにしておきましょう)。

 教訓。 人生,山あり谷あり。サイクル・ロードにアップダウンあり。家計収支にもアップダウンあり。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« アリス・ドナ 《歌うオバサン》 | トップ | 人生における最も苦しかりし日 »
最新の画像もっと見る

自転車ぐらし」カテゴリの最新記事