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ネット古書店のカンチガイ商法

2003年09月06日 | 本屋さん

 インターネット商売の功罪。あるいはフローとストックについて。

 別に当方,古本屋さん全般に強いて恨みがあるわけではない。ただ,いかにも知ったフリをしながら斜に構えて無知な客に対して教育的指導をかまそうとする(一部の)古本屋オヤジの商道徳,というか頑固一徹カンチガイ商法はかなり見苦しい,ということを小声でブチブチいってみたいだけだ。

 ことの発端は,比較的最近,ヴィダル・ドゥ・ラ・ブラーシュの『人文地理学原理』(岩波文庫)を読む必要が生じたことに由来する。学生時代,地理学徒の必須基本文献として入手した同書は,その後もずっと所有していたはずであったが,いつのまにやら行方不明になってしまった(蔵書管理が実に悪いゆえに)。しかたないので,いつも利用しているインターネット書店で調べてみると,上・下二巻本のうち上巻が600円,下巻が660円,ただし上巻は現在品切れということであったので,古本屋で入手することにした。引き続きインターネットで古書通販関係サイトのいくつかを検索してみると,少なくとも計21店舗でネット販売されていることがわかった。ただし,その価格なのだが,上・下巻合わせて,最安の店で 400円,最高の店では何と 3,500円と,売価に非常な開きがあることに少々面食らった(全店の平均価格は約1,400円である)。もちろん,書店によって本の程度の善し悪しの違いがあるのだろうが,基本的には同一商品,それも比較的ポピュラーと思われる定番文庫本に対して10倍近い差が付けられる。そういった不思議な商売がごくアタリマエにまかり通っている(つもりの)この世界のシキタリには,もとより承知しているつもりではあっても改めて言葉を失ってしまう。

 また,その時ついでにインターネットで「価格チェック」をした本がもう一冊ある。森下郁子女史の『川の健康診断-清冽な流れを求めて-』(日本放送出版協会)という本で,こちらは今から四半世紀も前に発行されたものを現在でも所有しているのだが,何分にも我が修業時代に入手したものゆえ書き込み等がかなり多いことから,新しいものをもう1冊求めておこうかと思った。叢書《NHKブックス》の1冊で,やはりかなりポピュラーな出版物であるが,現在は品切れとなっているようだ。ネット検索の結果,計13店舗で販売されており,最安の店では400円,最高の店では,な,な,何と 7,000円であった(まさか,後者は「著者サイン本」というわけでもあるまい!)。こちらは20倍もの価格差である。

 以上のエピソードから部外者が勝手に思うに,いわゆる地域ギルドの独立連合体とでもいうべき旧来の閉じられた古本屋業界内での現象である限りにおいては,そのような法外な値付けも,ま,笑って許されたのだろう。しかしながら,インターネット商売に移行してもなお,そういった旧弊を引きずり続ける根性というかカンチガイは,はなっから商売人としての基本をわきまえていないと言わざるを得ない。これら「カンチガイ人」は,恐らく古本屋としては古参なのであろうが,ネット商売においては新参者のヒトビトに違いあるまい。インターネットの特性から,簡単に検索を掛けることによってオノレのアホさ加減が即座に知られてしまう,といったことに気付いていないのかも知れない。時流に便乗して安易にインターネットで商売しようなんて思うからそういった恥をかくわけだ。

 某日,某古書店のオヤジのいわく。 「ほんとはインターネットの通販なんてメンドーだからやりたくないんですけどねー。でも最近じゃあ同業者でもけっこうやりだしたし,いちおうは店として,それなりのハクもつきそうだし。。。 ま,営業努力ってやつで。 けど,見えないお客の気紛れなんかには,そもそも全然期待してませんけどねー。」 これは最近,東北地方の某都市において私が実際に賜った少々不愉快な御高説である。詳細は省くが,そのようなメンタリティーを抱えている限りは,御商売の発展はまず望めませんですぜ。インターネット市場において相場を形成するのは,結局のところ「気紛れな」,しかし「生活者としての」末端消費者なのでありますから。

 ところで,件の『人文地理学原理』はどうなったかというと,その後,地元周辺地域の古本屋(ブックオフにあらず)で見付けて直接購入した。価格は,二巻で600円(税込み)である。ネット通販における送料,振込手数料,消費税などを考えれば,結局これが一番安かったとこになる。 オソマツさま。
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