goo

「理想的な淡水水槽」 10.2.4. 酸素と水槽 後編


デュプラメソッド「理想的な淡水水槽」

10.2.4. 酸素と水槽 後編


前編より続く


次に、ガス交換の際に空気とともに水中から失われる酸素について見てみよう。エアレーションが行われていない水槽や、水面付近に水流による動きがない水槽であっても、このガス交換による水中からの酸素の損失は存在する。もしも水槽内での酸素の生産量と消費量がほぼ等しく、8mg/ℓ付近の理想的な濃度が保たれている水槽があるとすれば、それはまったくの偶然と考えられる。普通は生産、消費のどちらか一方が勝っているのである。

仮に、最初に8mg/ℓの酸素濃度があり、その後それが一日5%の割合で低下していって、20日後に0mg/ℓになる水槽があるとする。またこれとは逆に最初は0mg/ℓ、そして20日後に8mg/ℓの酸素濃度に達する水槽があるものとする。もちろんどちらも現実には存在しない。多くの複雑な作用が水槽に働くからである。さらに水槽内のバクテリアが消費する酸素量は、水槽への酸素の供給量に左右されない。また水草の生命活動にともに必要な二酸化炭素と酸素は、お互いに水槽内のバランスに従い存在している。これによっても過度な酸素濃度の増大は妨げられる。このバランスは、日夜の変化を除いて、何週間あるいは何ヶ月もほとんど変化を起こさないほどの安定度を持っているものなのだ。

結果としてこれらの水槽の酸素濃度は、0mg/ℓや8mg/ℓにはならず、例を挙げると5mg/ℓといった数値を示すだろう。なぜだろうか。これはただ単に、水槽内で生産される酸素が、水槽内で必要とされる量にまで達していないということを示しているのである。もちろんこの5mg/ℓという数値は高くも低くもなり得る。この数字は生産される酸素よりも、消費される酸素が少し多い場合の数値に過ぎない。データからはこれ以上の根拠を示すものは出てこない。8mg/ℓ以上の高い酸素濃度の水槽についても、同じことが当てはまる。

私は良好な成長を見せる水草が入った2~2.5mg/ℓ、あるいは9~12mg/ℓなど様々な酸素濃度の水槽を複数用意し、研究を行ってきた。これらの水槽において、高い酸素濃度は、二酸化炭素を添加することで現れる。我々は、これは避けられない現象であると考えている。水槽内において、二酸化炭素の需要が有機物質の分解の際に生産される量のみによって満たされているのであれば、酸素の消費量は、その生産量を上回るだろう。そしてその酸素の一部は窒素化合物の酸化に利用されるため、さらに失われていく。結論として、エアレーションや強い水流、水面付近の激しい攪拌、あるいは二酸化炭素の添加が、水槽内において飽和状態に近い酸素濃度を達成する条件であると言えるだろう。

つまり、もし水槽内の酸素の欠乏を避けようと考えるなら、水中と大気中のガス交換を促進するための措置が必要となる。この際二酸化炭素を添加するという選択肢は、水中の栄養素や適切な照明が揃っている水槽で、メンテナンスがしっかりと行われているという条件下でのみ有効である。きちんとメンテナンスされた水草が十分水槽内に植えられており、さらに良好な成長を見せている水槽であれば、すべてが順調にいくだろう。



次に、現在まで水槽と酸素について述べられてきた、いくつかの誤った意見に反論を述べたい

1. 水槽内の重金属の蓄積量が、酸素濃度に依存するという主張は誤りである。
重金属がその蓄積量に影響を受けるのは、人工あるいは天然のキレート化合物のみである。水中に溶解した鉄分を、水草が吸収することができる理想的な形で保つために、余分な酸素は取り除かれなければならない。

2. 過剰な酸素は水槽に悪影響を与えるという主張には、何の根拠もない。
実際に高い酸素濃度と、良好な成長を見せる水草が多く入っている水槽が存在することによって、この主張が誤りであることが証明されている。

3. 酸素不足によりダメージを受ける可能性が高い魚が入っている水槽ほど、酸素濃度は低くなる。

4. 水槽の中では、魚や水草だけでなく繊毛虫やバクテリアなどの生物も酸素を必要とし、激しく消費する。









←前のページへ 次のページへ→


「理想的な淡水水槽」目次へ

Dupla&HOBBY exclusiv ブログトップへ

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「理想的な淡... 「理想的な淡... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。