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「理想的な淡水水槽」 10.2.4. 酸素と水槽 前編


デュプラメソッド「理想的な淡水水槽」

10.2.4. 酸素と水槽 前編


ゲルト・カッセベール博士は、「AQUARIUM Heute」1985年4号において、水中における酸素の役割についての寄稿論文を発表した。この論文の中で述べられた内容が非常に重要なものであるため、我々は本書であらためてその概要を紹介したいと思う。

水中での酸素の役割を知るために、まず第一に行うのは酸素濃度の測定である。通常実験室内で行われる酸素濃度測定には二つの方法がある。古くから利用されている試薬による測定方法であるヴィンクラ式と、特殊な電極を水中に入れて、これに接続されたメーターで数値を読み取るクラーク式である。ヴィンクラー式は滴下測定を採用しており、例えばデュプラテストO2
がそうであるように、水中の酸素濃度を0.5mg/ℓの精度で測定することができる。これは、どのような海洋学的目的を持った研究者にとっても十分な精度である。

しかしこの方法では4つの化学薬品と時間、さらに手際のよさが必要とされる。繰り返し何度も測定を行うような場面では、電極を使う方がはるかに簡単である。一般のアクアリアナーの場合は、たとえ水槽の酸素濃度を測定していなくても、魚が水面で呼吸を始めれば酸素が不足している、あるいは水草が葉から酸素の泡を放出していれば酸素は十分にあるといったように、ある程度は酸素濃度を予測することができるだろう。

魚にとって致命的な酸素不足の状態は、酸素濃度が1mg/ℓを切るような場合に起こる。あまりにも多くのエサを与えすぎた場合(休暇中に素人の代理人がやってしまうような)を除いて、ろ過器が老廃物で詰まったり、照明やドライろ過システムの停止といった技術的な欠陥によって魚や水草が大量に死んだ場合などには、徐々に水槽内の酸素バランスに異常が生じ、酸素不足の状態に陥る可能性がある。

外部式ろ過器の使用、水草の繁茂、そして二酸化炭素の供給と関連する酸素濃度の低下を甘く考えるのは、とても危険なことだ。そのため我々は、水槽の酸素濃度に影響を及ぼすこれらの要因について述べてみたいと思う。

まず魚から始めよう。魚は呼吸により水槽内の酸素を消費する側である。しかし水槽内においては、魚による酸素の消費はさほど重要ではない。魚は酸素がなければ生存できないが、大抵の種類の観賞魚は1~2.5mg/ℓという驚くほど少ない酸素濃度の中で生きていくことができる。

多くの酸素を必要とする重要な酸素消費者は水草である。水草は、自らが光合成によって作り出す酸素の4分の1を消費する。光合成を行わない夜間に、水草は呼吸のために酸素を消費するのである。

さらに多くの酸素を消費するのは好気性(酸素が存在する部分に住む)バクテリアである。好気性バクテリアは、魚の糞やエサの食べ残し、微生物の死骸、枯死した植物の残骸、沈殿した有機物などを分解する。好気性バクテリアの酸素消費量は、これらの食物となる物質の量によって左右される。そして今まで述べてきた酸素消費者のすべてが、水中に二酸化炭素(CO2)を放出する。

水槽内において酸素を作り出しているのは、水草や藻である。水草や藻はこの過程で、二酸化炭素、光エネルギー、そしていくつかの種類のミネラルなどの有機物を消費する。これらのうち、一つでも水槽内に欠けているものがあれば水草は成長を止め、光合成も行わなくなる。

水草が理想的な光合成活動を行い、それに伴って酸素が順調に生産されている状態では、水槽全体に水草が繁茂するのを防ぐために、定期的にトリミングを行わなければならないほどの成長を見せる。

水草に成長の様子が見られない場合には、酸素が不足している可能性もあるのだ。


フタをしていないオープンアクアリウムでは、
水上からも水草を眺めることができる。



※10.2.4. 酸素と水槽 後編へ続く




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