40日目

やっぱ僕はダメみたいです。

ポカポカいい天気です。


自主映画終わって、

出していた賞の一次審査の発表がありました。


僕の名前はありませんでした。


応募した回数はもう片手じゃ数えられません。


なんとなく想像はしていました。


なんか足りないみたいです。


僕にはまだ足りないみたいです。


スタートラインに立てません。


もうすぐ３０です。


ミラクル起こすとか言って、自主映画撮って

自信をつけて

はいサヨウナラ。


才能とかいう前に

僕にはなにか根本的なものが足りないんだ。


というか、はじめからなにもかも決まっているのか？


つまづきすぎて、すりむけた傷から血が止まらない。

三十九日目

いい天気。

雲ひとつない青空、最高。


終わりました。

決戦の土日。


本当にトップギアでフルスロットル全開。

自分がこんなにやれるなんての二日間。


まずは土曜日。

あまり、俳優の絡みのない撮影。

こうなると、ロケ地が決まっていればバシバシ進みます。

ちなみに朝からカメラは僕が回しました。

本当にいい感じ。

みんな笑いながら進んでいきます。

怖いくらいに順調そのものでした。


で、日曜日。

朝、遅刻してきた女優がキリキリしてます。

絡み中心の撮影で、芝居がみんな落ちている。

1テイクでなかなかうまくいきません。

しかも、この日は僕の部屋での撮影なんです。

その僕の部屋、朝台所のコンセントがぶっ壊れて

大家がやってきてのドタバタです。

そして、僕の部屋を掃除しながら、撮影用にモデルチェンジ。

約2時間を費やしました。

ガンガンに押してきます。

みんな腹ペコです。

最悪の空気が漂います。


そしてラストシーンに突入です。

稽古で一度も決まったことがありません。

カットをかけて芝居を切れば、撮影は簡単です。

ただ、僕はカットをかけたくなかった。

今回は役者の芝居をハナから見せる気だったから。

５分はある長丁場。

１発勝負でやめるからと言い放ち、３，２，１，アクション！

いきなり、男優がＮＧです。

おいおい・・・・


このラストシーン、公園でケーキにささったローソクを

恋人同士で吹き消すというシーンです。


その後も風が出てきて、ローソクがバシバシ消えます。


肝心の演技は稽古よりは格段に上がっています。

それでも、僕のイメージの半分くらい。

この夜は本当に寒くて女優もいっぱいいっぱいです。


そして、ラストテイク。

ローソクは消えません。


女優の演技も少しだけ上がりました。

それなりには見えます。



だけど、これでいいのか・・・・・・・？



僕はオッケーを出しました。

身震いする感動はなかったです。



・・・・・・・こんなもんか


むなしさが募りました。



で、今日の快晴。

部屋を掃除し、借りた機材を返しにいき

あとは、女優の貸衣装。

これは女優の手元にあります。


前の日、僕は彼女をワンワン泣かしました。

気まずいを通り越した空気。

今まで、妹のようにケアしてきたのにどうにもなりません。



僕はメールを送り、彼女を呼び出し貸衣装を持ってきてもらいました。

彼女はにっこり笑ってました。


衣装を渡し、「お疲れさま」といってトコトコ歩いていきました。



・・・・ああ。終わったんだ。


なんか、卒業式の感覚です。

達成感はあります。

でも、ミラクルを見たかどうかまだ判断がつきません。

38日目

風が出てきました。

生ぬるい風が妙に体を冷やします。


決戦前夜。

最終稽古で大波乱。


ラストの稽古がまるでうまくいきません。

やればやるほど、悪くなる最悪の流れ。

女優はワンワン泣き出します。


やんなきゃよかった・・・・


そんな思いがよぎりました。

明日が本番なのになんというこっちゃ。

トップギアで飛ばしすぎた・・・・


稽古後、女優さんと衣装を選びに行きました。

彼女はふつうにケロッとしてスパゲッティをすすります。

女は強いなぁ・・・・

改めて思いました。



とりあえず、ギアチェンジです。

ニュートラルで集中していきます。


ミラクル、起こします。

三十七日目

ときどき、雨の降る生あったかい一日。

昨日、一発目の撮りをやりました。

稽古は仕上がりました。


だけど、撮影は予想以上に苦戦しました。

初めての映画ロケ。

僕も映像の仕事をしてるけど、やっぱ畑が違う。


で、ダメダメ君が本領発揮して監督らしくなりました。

ま、こんなもんか。



でも、本チャンは週末です。

決戦は土日なんです。


だけど、ロケ地がほとんど押さえていない・・・

道でやるのはまだいいにしても、

店舗でやるものは許可が必要です。


いろんなところを回りました。

ケーキ屋さん、ラブホ、洋服屋さん、ジュエリー屋さん、コンビニ・・・



一日ですべて押さえました。


断られたのはデパートと一軒の洋服屋さんだけです。


一生懸命、誠意を見せてしっかり要求を伝えれば伝わるんです。

話もちゃんと聞いてくれます。


涙が出そうになりました。


これからが決戦です。


ほんとにミラクルが起こりつつあります。

36日目

雨のち晴れな日曜日。

前の日は夜から本降りでした。


前の日の稽古も雨模様。

空回りの連続。

クルクル回って、まっさかさま。

ほんと、ほとんど寝れないくらい凹みました。


今回の映画は役者が三人います。

そのうちのメインの芝居（とくにラスト）がガタガタでした。

主役は女の子です。

その子の芝居がどうにもならない。


でも、この子物凄く賢い孔雀なんです。


今日は日中と夜に別れて稽古をしました。

僕は仕事で夜からＧＯ


彼女は日中で帰ってました。



で、稽古をテープでチェック。


・・・・・おおおおおおおおおおおお！！！！！！！


なんじゃ、こりゃぁぁぁ！！！！！！！！！！！！！


抜群です。

バッチリじゃありませんか。

やっぱ、僕なんか素人じゃダメみたいです。

とくに僕はボンクラです。

全て感覚任せです。

だから、感覚がくるったら、みんな道連れにまっさかさま。


今日でも彼女を観て、思いました。


余計なことを考えずに、とにかく気持ちを全開にして

みんなとミラクルを目指すんだ！！！！


あと一週間で撮り終えます。

まだ撮影に入っていません。

多分、仕事はお休みなはず・・・・・


とにかく、蝉の命のような奇跡を見に行きます。

三十五日目

いい天気です。

ただ、最近は気がかりなことが多いです。


それは大体、製作中の映画のことです。

仕事はもうそっちのけです。


役者のスケジュールを押さえるのも、

みんなふつうに仕事はあるから厳しいし

稽古場だって公民館はそんなに空いてません。


大体、ロケ場所がまだ全部埋まってません。

埋まっているところも僕の自宅だったりする始末。


やっぱ、しょせんは素人です。

初心者なんです。


暗雲がモクモクと広がってきます。


だけど、こんな楽しいことは生まれて初めて。


そういえば、今日メイクのひととアポが取れました。


電話ですこし話した感じは、まるでプロ。


メイク前にデッサンを書くそうです。


少し光が差したかな。


この光が暗雲を吹き飛ばしてくれないかな。


ホントにミラクル起きないかな。


ただ、そんなことを頭の中でグルグル考えて

今日もきっとよく眠れない。

34日目

風がびゅーびゅー。

なんか春一番らしいです。

春は好きだけど、もう少し冬でいて

だって、撮ってる映画、クリスマスの話なんだもん。


正直、反省しています。

ひとのことをボンクラとか言っててはいけません。

確かに器用じゃないにしろ、一生懸命やってるひとなんです。


僕は何様でもありません。

たいしたことなんて、そうできないんです。


監督のひととモメました。

役者のひとたちと意気投合しまくって、

彼を邪険に扱いました。


その上、逆ギレで説教をたれる始末。


今日、歯の詰め物がとれました。

仕事で温厚なひととモメました。

歯医者にいくと、虫歯が３，４本ありました。

詰め物の取れた歯も当然虫歯で、神経に届いているそうです。

べつに痛くないけど、神経ごと取るそうです。

麻酔で唇、腫れました。



そして、監督の彼から来たメールを読みました。



まぁ、筋は通っています。


独りよがりに僕もなっています。



撮影まであと少し。

こんなに愉しくて、短い稽古ももう僅か。


ミラクル直前の静かな夜。


反省しきりでございます。

参拾参日目

適度にさむいです。

重度にねむいです。


でも、僕の加速は止まりません。

止まらないから、赤切符を切られちゃいました。

一発レッド、即免停というやつです。


あと、２キロ遅ければ、２点減点の青切符。

まったく不条理な世の中です。


それはおいといて、今日が初めてのお稽古です。

正直、そこそこハマってます。

役者に合わせて書いたキャラは成功です。


ただ、主演女優のカカリが悪い。


いまいち、乗ってきてない様子。


それはまぁ、当たり前。

僕も彼女の役については、はっきり色をつけてません。

なぜかと言えば、彼女に色をつけて欲しかったから。


役者泣かせの脚本です。


それでもきっと彼女ならなんとかしてくれるでしょう。


なんという他力本願。


一発レッドで退場です。



とにかく、すこしでもいいものを創りたい。


自分の力不足が歯がゆいです。

32日目

相変わらず、あったかい。

２月じゃない。

いきおい余って、桜が咲いてもおかしくない。


僕の覚醒も止まらない。

映画のロケハンが大体終わりました。

脚本を依頼してきた彼は本来、監督。

でも、彼はおどろくほど監督としての力量が足らない。

だからって、映画をオジャンにする訳にはいきません。

だって、僕にとってこの映画の脚本は

初めて役者に芝居をさせて、映像化を前提に書いてるんだから。


べつに出来が特別いい訳でもないけど

みんなで楽しんでモノを創ることが生まれて初めてなんだから。


監督がダメなら、降格させればいい。

とりあえず、実質、僕が監督で彼はアシスタント。


だからって、彼がいなければ今僕はこんなにワクワクなんかしていない。


人にこんなに感謝をしたのも生まれて始めて。


僕はやっと卵の殻をブチ破って

ニョコニョコ歩く、年増のヒヨコ。


ニワトリになるころには、満身創痍のクソじじぃ。


でも、いいや。


こんなに楽しきゃもういいや。


この映画が僕の想像を超えてくれれば、僕は死んでもいい。


とにかく、これからが本番です。

参拾壱日目

全然、冬らしくない二月。

なにもかもがきっとおかしい。


昨日、お袋から親父がアルツハイマー病だと告げられました。

絶対、おかしい。


映画制作が順調です。

ボンクラな僕が太鼓を鳴らして、みんなを引っ張っています。

ありえない。


そんな感じなんです。

下を向けば、断崖絶壁の綱渡りをスイスイ歩いている感じなんです。


不安だらけです。

だけど、もう前をしっかり見ていくだけです。


世の中の歯車が狂って、僕はなんか覚醒しています。