読書日より

読書記録です。

華岡青洲の妻(有吉佐和子)

2008-08-31 03:51:40 | 本一般
有吉佐和子という作家の後継者が出てこないかって、わたしは待ち望んでいるわけですが、そう簡単に出てくるわけではないみたいね。
彼女に女の凄みを書かせたら、右に出るものはいないと思うんですが、どうでしょう。
桐野夏生は女の俗っぽさとか生生しさを書かせたら凄いとは思うけど、俗っぽいのも生生しいのも怖さはそこまで伴わないように思う。
そうじゃなくて、普通の女の怖さね。
桐野の登場人物はなんか…愚か過ぎると思うのよ。

「華岡青洲」というのは幕末に実在した医師で、世界初の全身麻酔を用いた乳癌の摘出手術に成功した人。
まー凄い人ね。
もちろん世界初なので外から輸入したとかいうわけではなく、華岡青洲自身が調合した麻酔です。
つまり、動物実験からはじまり…もちろん人体実験に行き着くわけですよ。
そこで、その人の奥さんとお母さん、つまり嫁姑がでてくるわけで。
(もちろんフィクションだから実際には他の親族にも人体実験をしたのではないかといわれてますが)
嫁姑が競って人体実験に使ってくれというさまを描いていくの!!
江戸時代の話だし、嫁は夫に家に強い言葉を言えなかったのでは?と思うかもしれませんが、華岡青洲の家よりもはるかに嫁の実家の方が位が高く、華岡家でないがしろにされることは決してないものと思われるようです。
これがもー凄みがありすぎる。

嫁姑というのは元々相容れない存在なのでしょうか。
それはそうかもしれないな。
母親は子供のこと一番理解していると思っているだろうし、また恋人だって一番理解していると思っているだろうし、じゃあだれが一番彼を理解しているのかっていう話になるものね。

凄みがある原因に、方言もあるかもしれないなぁ。
紀州の方言がどうゆうものかよくわからないけれど、方言の力は強いなぁ。
わたしにはないのもだけれど。

【華岡青洲の妻 有吉佐和子 新潮社 新潮文庫】

「少年A」この子を生んで(「少年A」の父母)

2008-08-31 03:50:03 | 本一般
神戸の酒鬼薔薇事件からもう10年程度経つんでしょうか。
当時わたしは小学生でしたが、その事件のインパクトはかなりのものでした。



さて。
この本は、その「酒鬼薔薇事件」の犯人である少年Aの両親による手記です。
本の構成としては、
父親の手記(世間に対する謝罪的な文章)

母親の手記(これがメインに見える)

父親の手記(少年Aとの距離感は遠かったように思える)
こんな感じです。



母親の手記からは、「わたしは普通の子育てをしていたのに」という思いが、ひしひしと伝わってきます。実際のところなんてわからないけど。マイナスにとってしまうのは、わたしがついついよろしくないもの、と思ってしまうからでしょうか。
この「わたしは普通の子育てをしたのに」の「のに」に責任逃れじゃないけど、やはりそういったものを感じる気がする。
普通、といったら何が普通なのかわからないけれど、(もちろんわたしが思う普通とはきっと違うのかもしれないけれど)わたしには普通と思えないことは沢山あったかな。
本当のことはわからないけれど。
その思いは大きい。
でも大なり小なり当事者達からはこんな風に見えていたんでしょう。




【「少年A」この子を生んで』 「少年A」の父母 文藝春秋】

20歳からの美肌ダイエットプログラム(佐伯チズ)

2008-08-31 03:48:37 | 本一般
最近お肌があれてるなぁぁぁぁぁ
と、アフロ並(※注1)に深く溜息をついておりましたところ、
バイト中にはっけーん☆

「美肌になる上にダイエットも出来ちゃうの!?」
とか思ってたのに、残念。そんないい話ありません。
人生は強くしたたかに生きるようにしましょう。笑

美肌の為の本ですね。
ダイエットは特に詳しくあるわけではないです。
まだまだ甘ちゃんな20代のために、いかに若いときからがんばるべきか。
美は1日にしてならずということは切々と説いてくれます。

女の子には悩みの種になったりする28日周期に合わせたスキンケアの仕方です。
みなさんは周期中にどうなるとかこうなるとかありますか?
あたしは体調よりもセーリ前には情緒不安定になりがちッス。
もちろん体調にもきます。
ぶっちゃけ、夏にセーリの前と最中に外歩くと貧血気味です。
普通のペースで歩いたらやばいです。
これを彼に言っても理解されないことは理解できました。
本の内容とは、ずれましたが、まぁ…笑

※注1アフロ…『高校アフロ田中』(全10巻)『中退アフロ田中』(全10巻)『上京アフロ田中』(①~③)生まれつきアフロな田中が高校へ行き、ノリで中退してして、さらには流れで実家(埼玉)から巣鴨に上京。わたしは田中の母親もアフロだと信じてるんだけど、彼曰く母親は天パとのこと。スペリオールで連載中。

【20歳からの美肌ダイエットプログラム 佐伯チズ 大和書房 だいわ文庫】

雷の季節の終わりに   (恒川幸太郎)

2007-04-14 22:51:24 | 本一般
春夏秋冬のほかに、穏には雷の季節がある。
帯ってやっぱいいものはいい。
この本も帯がその役割をきちんと果たしている。

  雷の季節にはよく人が消える。
  それはもう仕方がないんだ。

本の内容とずれてもいないし、誇張してもいない。
ちょうどいい段階の言葉。

  時が過ぎ去っていくのがわかるでしょう。
  じっと考えるのよ。過ぎ去っていく一年に起こった全てのことを。


【雷の季節の終わりに 恒川幸太郎 角川書店】

悲しみよ こんにちは  (F・サガン)

2007-04-08 01:31:11 | 本一般
セシルの焦燥が色濃く反映されているだろう一冊。
どうしてもそういった感情ばかりがざわつく時どうしようもない。

アンナの死はセシルにとっての必然というよりも、アンナにとっての必然なんだろうな。
変な言い方かもしれないけれど、
あんなに毅然としたひとの過失ってなんかしっくりこないし。
シリルの存在が一過性の夏であることも必然である気がする。
アンナがいなくなったからこそシリルも必要なくなるみたいな。

新潮社のおとなの時間フェアよいね。


【悲しみよ こんにちは F・サガン 新潮社 新潮文庫】

ドミノ  (恩田陸)

2007-04-08 01:08:29 | 本一般
そしてドミノ。
こうゆう計画的な狙ったものもなかなかよいね。

その時間に東京駅に偶然にも居合わせた人たちがみんな主人公。
ほんとにみんな。
あまりに多すぎて名前が覚えきれないのが欠点。

伊坂幸太郎『ラッシュライフ』は4パターンから(だったと思うけど)成り立ってまるで交差点な感じだったのにたいして、
余りに雑然としてる感じはある。
さすが東京。

てか話が『ドミノ』っぽいかんじがしないのがな。

それはまた別のドミノの話であり、これから倒されるかもしれない別の一片のピースに過ぎない。

おそらくドミノの記述はこれだけなのがな。ちょい不満。


【ドミノ 恩田陸 角川書店 角川文庫】

夜のピクニック  (恩田陸)

2007-04-08 00:53:41 | 本一般
学生時代(今もまだそうだけど)の出来事って、特徴的であればあるほど心の中にいつまでもじっくり居座るよね。
通っていた学校であるならば、運針とか変なリボンとか黒ストとか?

とまぁ、そんな歩行祭。
これから何度もこういった一生に一度が訪れるんだ。
っていうとおり。

これ読んで一番思ったことは恩田陸は健全で実に現実的な思考をもつということ。
非現実的なことは全く起こらない。
現実のなかで少し浮いた感情を描くことはあってもその先には決して行かないんだろうな。

それはもちろん悪いこととかではないんだけれど、物語が盛り上がりきらないっていうのはあるかもしれない。
前に『MAZE』(題名があやふや)で最後の最後で現実に引き返させられたことがあって、あの作品ではマイナスに向いていたものが、『夜のピクニック』では上手く作用しているからいい。

この歩行祭も(当人たちの間で)おぼろげに語られることはあっても、きっと曖昧になっていくんだよね。


【夜のピクニック 恩田陸 新潮社 新潮文庫】

あのころはフリードリヒがいた  (ハンス・ペーター・リヒター)

2007-03-24 04:14:34 | 本一般
岩波少年文庫が、いまあたしの中できてます!!!
昔から憧れだったんだよね。
でも手付かず。
小学校の図書館にはなかったし。
たぶんいろいろ読んでいくはず。

ヒトラー政権下のドイツ。
反ユダヤ。
この大きな事実はきっと誰でも知ってるんだろうけど。
実は細かなところでどういった迫害だったのかあまりよく知らなかったんだ。
ポグロムとか、言論の自由が奪われたとか、そういったことはなんとなく知ってる。
で、映画館とかの制限もアンネ・フランクの日記で知ってたけど、経緯とかってあまり知ってなくて、児童書なので易しく書かれていてよかった。


【あのころはフリードリヒがいた ハンス・ペーター・リヒター 岩波書店 岩波少年文庫】

キッチン  (吉本ばなな)

2007-02-21 00:13:16 | 本一般
月曜の朝、朝から、ばななを読まなくてはと思った。
(朝からといっても、一睡もしていなかった)
しかし本棚をいくら探しても『デッドエンドの思い出』『ハゴロモ』というごく最近読んだもの、そして『白河夜船』しかなかった。
焦った。
『哀しい予感』は?『とかげ』は。
何よりも『キッチン』は。

実際「キッチン」及び「満月」よりも、「ムーンライト・シャドウ」が好きで好きで仕方ないわたしには、あのセーラー服を着て病人に天丼をすすめてくれるような少年に触れたくて(もちろん物語のなかで)仕方なかった。
わたしの部屋に「ムーンライト・シャドウ」がないのは恐怖に思えた。

神保町に行った帰り道、福生のブックオフに行って出来うる限りの吉本ばななを買い込んだ。
(あと、『春原さんのリコーダー』)
有り得ないくらい安心してねむることが出来た。
わたしの部屋には紺色の川がある。


【キッチン 吉本ばなな 角川書店 角川文庫】

吉本ばななと俵万智  (古橋信孝)

2007-02-16 18:42:50 | 本一般
この本は久々にあたった。
百年で買う本は当たる率が多い。
あの本屋に置いてあるものがいいのかあるいはただ単に相性がいいのかわからないけれども、いい傾向だとは思う。

90年に出版された本なので、俵万智もよしもとばななも初期のみ。
なんていっても「吉本ばなな」だし。

俵万智論も良かったし、吉本ばなな論も良かったんだけれども。
あえて二人を結びつける必要性はないんじゃないかなぁ。
と思ったのは時代が変わってるせいなのかもしれない。
17年も前のことなので、世相がよくわからない。
そのとき今くらいの年齢ならばもう少し噛み砕いて、読めたのかも。


【吉本ばななと俵万智 古橋信孝 筑摩書房】