人は蒐集する猿であるというのがこの本の趣旨で、題名が既に内容を物語り非常に理解しやすい。著者の蒐集対象のひとつにステッキがあり、その拘りについて語ったりしている訳であるが、蒐集の対象物こそ違っても一々共感するところ大である。 斯く言う私は標榜するジャズCDの蒐集に余念がないのだが、蒐集し始めると在り来たりな物では納得がいかなくなるのは著者同様である。つまり簡単にどこでも入手できるものでは満足しなくなってくるのだ。廃盤となったレアものをオークションで高値で競ったり、国内では入手困難で海外の胡散臭いところから届くかどうかもわからない代物を100ドルも払って届くのを待っていたりするのだ。そういう厄介なものに魅入られている訳である。50年代の美味しい廃盤や欧州の稀少盤にぞっこんなのだ。 まあ、そういう盤をコツコツと集めているのだが、ここ数年、世の趨勢に影響を受け欧州のジャズ、それもピアノ・トリオに嵌まってしまっている。が、片ややっぱり50年代も好いなぁなどと訳の分らないことを考えている節操のなさである。 あぁ、人間は蒐集する猿、まさにその通りである。 一読をお薦めする所以である。