goo blog サービス終了のお知らせ 

居間塵(imagine)

居間塵、と書いて、イマジン。その日その時、流れゆく時の川から、思いつくままに掬いあげる。絵図とポエムの棚

酸化したセイブツの報告

2012-04-25 00:21:08 | ポエム

酸化したセイブツの報告

 

ずっと昔のこと
春のこと
満月のこと
うねってあるくこと
人たちのむれのこと

桜がへばりついていた
夜空のましたに
ミツバチはブンブン
甘美なチラシをまきちらしていた
拾おうとする人間集団化の
せつないくらしかたに
眼をそむけていた

そう 春爛漫だった
ソプラノの歌手のような声だして
なんでもいい きぶんしだいのころだった

俳優のように
なんでもできると
おもっていたころの
かげひとつない夜みちを
よろめきながらぼくの正体が
ネガフィルムをみるような
さんさんたるぼくの正体が
フェードアウトするシーンを
ライターで焼却した

そのライターの火が
ぼくを酸化したセイブツにつくりかえた
だからリトマスは完璧な数値で
永久に酸性である
以上報告おわり

 

 

 

           

             


リルケ

2012-04-24 00:31:30 | ポエム

リルケ

 

大家族で食事する
ヨーロッパの風習
日本にもその昔あった
最初はオドオドしていたリルケ(*)
彼等は伯爵家だ

ぼくの家は大家族といっても
せいぜいが
六人
小家族で無爵だから
そのうえ古い家で
冬などは隙間風がまかりとおる

食事中に
壁からす-っと白衣の貴婦人が出てきて
またす-っと壁のなかに消えるあいだの
スリルを味わうリルケにはなれない

しかも毎日そんな食事風景はない
お正月だけそろって新年を祝う
白衣を着た餅を
黒塗りの各自の猫足のお膳にのっている
これまた黒塗りのお椀のなかの
白味噌のお汁のなかから掬いあげる
六人

そのお膳 今は押入れのような
物置棚の奥深く紙につつまれて
積み上げられて
そして再びの
出番はない

 

                                              (*)マルテの手記・リルケ作・望月市恵訳より


いっぱいこ

2012-04-19 12:19:07 | ポエム

いっぱいこ

 

きょうはええ天気やほん
おまえとこのはたけてっとたろか
いまなにうえとんのや
いまか いまはなんもないわ
でけんことないほん
レタスやったら
いっかいのが
たんとできるさかい
あっこわ
きしょくわる
ほうやん エンジェルやほん
なんでかしらんこのごろな 
うしろまわりしたら
まえからあるいてきよるやろ
みらいちゅうやつ
でけるもんやったら
そいつのみちまげたるで

おぼこいじぶん
なんかおったほん
いどみたいなふかいあなに

ほなら ほのあな せんだくしたらええほん
けったいなくろいしるが
いっぱいでてくるほん
ほして めにみえへんもんも
セシウムとか
ほれはしらんけど
あぶないもんやほん
ほなおいかけて
つかまえてえさ

はんちゃらけが
さかしまになって
きやはるで

(江州弁の詩)


櫻と蒲公英

2012-04-17 13:05:29 | ポエム

櫻と蒲公英

 

いま櫻は満開で
すこし花弁がヒラついてきているが
すこし地上に撒かれているが
アスファルトという今の道の上では
土に帰ることもならず
春風に少々の踊りをしてみせては
そのままいつのまにかとけるように消滅してゆく
そのアスファルトとアスファルト
の 少しの隙間からは
精力的な蒲公英が
ああ 渾身の力をこめている
と 思わせないくらいのしずかさで
あざやかに咲きほこっている

両者の高低差は数メートルあり
風の愛撫もきっと平等ではないだろう
雨の殴打もきっと差異があるだろう
このあたりから
人間社会態様に似てくるのだ
しかし
櫻と蒲公英は
暴力闘争にも
憎悪にも
無関心で
ただ
シゼンの調和のために
神のみむねに
したがっているとしか
おもえない

実は最初から
ココロとかタマシイとかの
いかがはしい免許証を
もちあわせていないからにちがいない


不可欠

2012-04-15 12:15:23 | ポエム

不可欠

昔は殿さまが鹿狩りに
今はドクタ-が癌狩りに
世のなかは
昔も今も
狩るものが
いくつかあって
そのたびにおお騒動

殿さまならば
おつきのものの数(かず)がたいせつで
ドクタ-ならば
なにがたいせつ?
テクニカルで
メンタルで
そのうえゆたかな学識か

おっとそれだけでわないよ
狩りには
わすれてはならぬ
ガッツが
絶対
不可欠だ

そうだがネ


行燈

2012-04-13 13:19:16 | ポエム

行燈

 

夜桜の回遊路の
ちいさな行燈
つめたい石段のよこに
うっすらと灯(あかり)をまいて
人の足ばかりをみつめているのは
うんざりするかい
面白いかい

つかいこなされて
なにかをかるがるとのりこえた足
なにもおもいどおりにのりこえられなかった足

行燈くんは
拍手をわすれたか
それとも
何が何でも明るくするだけの
あのエレクトロニクスの威風堂々に
あっけにとられて
ちいさくなっているのか

いまのところ
暗黒の世なれば
エレクトロニクスは
ハナザカリ


神様いっしょにあそびましょう

2012-04-08 19:37:10 | ポエム

神様いっしょにあそびましょう

 

圓いガラスの物体の午後
カットされた階段を
ヴィオロンの呼吸をした
恋情が昇降する
原罪の果実をもてあそびながら
この狂ったひとつの木霊を
無心に享楽していたら
神よ 御身はどうなさる

今度は立方軆の夜
楕圓形の骸がある
ロマンチックな場所でもない
どうしてそんな未開のようなところに
骸が放棄されているのだ

神よ あらゆる謎の鍵束を
いまここにさらけだして
この一夜をあそびあかそう

みよ 御身のしもべ
花がさいているではないか


幽玄と有限

2012-04-06 16:35:36 | ポエム

幽玄と有限


深い有限の森
何キロ四方という 広さの限界がある森

その森に幽玄がすんでいる
無限の奥底にひそんでいるのが
有限のなかにいた とすると
その森は無限の森で
何キロ四方は夢幻となる
夢幻と無限は同義語か?

でもこの森は
人の中にもぐりこんで
変貌することはないが
 じっとひそんでいるよ

真実の幽玄と夢幻
クローゼットをひらくと
ベールの服を着て
暫く部屋のなかで
ストレッチしているよ

森閑をただよわせて

 


意味

2012-04-04 23:32:45 | ポエム

意味

 

意味の意味は
なんだ
意味は存在する
空気のように

また
意味はモノか?

手に握りしめても
壊れないほど
頑丈か?

ナンセンスとは
無意味の意味だろう

キューピットの意味の矢が
無意味のむねを射ぬく時
ユーモアの水源が
血のように吹き飛ぶのを
想像するのは
過剰反応か否か

意味が実在して
現実になると
現実の機能は
意味の種別によって
さまざまに
破壊されるだろう

エッ!

 


一日のおわりに

2012-04-03 00:04:50 | ポエム

一日のおわりに

 

今日なにもしていない
生活はしたが
時間も使ったが
頭はつかっていない
一日
曇ったり晴れたり時々雨が降ったりした
頭を持って歩いたことは確かだが
一日
それ以外のことはしなかった

丁度天候
丁度ノウテンキ

昨日はすこし本を読んだ
個人と集団
純粋のブルジョワ的個人は
この世にはいられない
集団の中においてのみ
個のような錯覚で生きて行けるらしい
個に囚われると
不毛というカビにおかされるらしい

今日は
昨日読んだ本の事が残っていて
らしいことだけ
判ったらしい

小春さんが
バルコニーですわっていた

 

 

 


サブマリン

2012-04-01 11:09:26 | ポエム

サブマリン

 

街灯だけが
暗い月に代わって
闇に浮かんでいる

窓という窓の灯は
深く沈んでいる

人も猫も夢のなか
ひとりの男
電気スタンドの下で
詩の文字を書いている

一文字書いては
一息つく
二文字書いては
二息つく
そして
遠い日々のように沈んでしまうと
唐突に
サブマリンのように
次の浮上があらわれる

静寂の骨董品のような値打ちが
頑張っている
夜明けまでのはなしだけれど
とにかく
闇をくぐって


シリアル・ナンバー

2012-04-01 00:20:05 | ポエム

シリアル・ナンバ-

 

ぼくのシリアル・ナンバ-は
だれかに付けられるのだろうか
ぼくの知らないオフィスで

もしそうなったら
ぼくはどうするだろう
パソコンでは
たいへん重要なナンバ-だそうだ

人間にもシリアル・ナンバ-がつけられて
ナンバ-のない人間は
人間ではないという時代がきたら
ぼくはどうしたらよいのだろう

この星の上でグルグル回っている
人間がつくった惑星にも
喫茶店ででてくるショートケーキにも
シリアル・ナンバ-がついているのだろうか

続き番号が欠けると
見知らぬ所へつれていかれて
長い間そのナンバ-がくるまで
いつ来るかわからない
乗り物を待つように
待合室で暮らすのだろうか

そんなことよりも
ナンバ-はもうついているのとちがうの?
覚えられないほど
長いものが

 

 


音楽

2012-03-31 00:28:17 | ポエム

音楽

 

典雅の森というところで
もう二度とないと思ってしまいそうな
美しい音楽を聞かせて貰った
空も木々も晴れてさわやかで
ウッドコーンの音色はみごとに澄んでいた

典雅の森からかえってみると
わが部屋でも眼にみえぬ音の粒子が
乱雑な居所を
そっとはねまわったらしく
真っ青な深いエアーと
真っ赤な透きとおるモードで
何度目かの
夢見のランドがしつらえてあった

音楽は
いつも
ふんわりとうかぶ
雲のベッドで
人守唄をうたってくれる
ミミからできてくる
不思議の国のコラージュだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 


わからないはなし

2012-03-30 01:05:11 | ポエム

わからないはなし

 

鏡の国は
逆転の国
だから
いつも
取り合いになる国

ひょっとして
今の世界が
鏡の世界になったので
取り合いになっているのかもしれない

とすると
もうすっかり
鏡の中

ほんとなら
ひどいはなしだ

 

 


文庫本

2012-03-29 01:01:10 | ポエム

文庫本

 

夕方
買い物をするときに
ちいさな本屋さんの前を通る
入ると
おくの方で
犬がちいさく
吠える

この本屋さんには
時々再刊の文庫本が
数冊ならぶことがある
再刊でも新刊だから
テカテカそこだけ
かがやいている
どんな本でも
なかみにかんけいなくだが

照り映えているその輝きに
ついひかれて買う
面白そうなのを
一冊えらんで誰もいないレジへ

大声あげてよびだしてその文庫本を買う
かえって直ぐに三頁ほど読む
そしてそれからてきとうに
隙間をうめるように置く
ジ-ドの横にリルケがならんでいる
そのうしろにはディドロや青木繁がいる
各種辞典が寝そべっているかと思えば
重なる様に誰かがいて
呻いている

「おまえだれ」
「ぼくボオドレール」
「上にいる奴重い奴」
「永遠の・・・と言う奴」
「そいつをのけてくれ」