一本のコスモスのように

一本のコスモスのように


一本のコスモスのように
風にゆられる茎でありたい
風にゆられる茎であっても
決しておれない茎でありたい

一本のコスモスのように
ちいさな花をつけたい
よごれた泥のなかでも
よろこんで咲いていたい

一本のコスモスのように
まあるい少女の手につまれたい
一人ぼっちの少年の口笛を
だまってきいていたい

一本のコスモスのように
町いっぱいをかざりたい
冷たい風のなかでも
灯りのように咲いていたい

はな

ひらく
とは
ほころぶ
こと

それは
ほろぶこと
に
すこしちかい

ひらけ
よ
ほろび
よ
たまゆらの
いのちをかけて
はな

慕情

黄昏のなかに身をおけば
私の身体(からだ）も薔薇色に染まるでしょう
木や家や風が染まるように

静かに満ちてくる思いは
耐えきれず
空にあふれてゆくでしょう

見果てぬ夢のその果てでなら
いとしいひとに会えるでしょう
夕星（ゆうづつ）のかそけきひかりのもとでなら

photo:Ｈ・O

神の答えは

まっさらな
あしたに自分を
賭けてみる
神の答えは
oui ou non

わが夢の

わが夢の
細き指した
マジシャンよ
占う明日は
吉または凶


☆写真はピカソ美術館で撮影したものです。

木枯らしよ

こひしさに
ふと涙ぐむ
宵の空
仕事帰りの
初木枯らしよ

いつ知らず

ひたむきに
ただひたむきに
いつ知らず
追いかけていた
かのひとの影

万博記念公園にて６

なにげなく
通り過ぎようとして
ふと
足を止めた
あなたに
呼ばれたような気がして
だから
風になって
そっと
触れてみる
いま
という
時の鼓動に

桜

幻かもしれないと
思うことがある
現(うつつ）の君を見ながらも

わたしの貧しい両手では
掴みきれないほどの
ものに出会ったとき

煙突の哀しみ

煙突は哀しい
空ばかり見上げていることが
煙突は哀しい
汚れた煙ばかりを吐き続けていることが

けれど時折思うことがある
誰よりもぼくは
空にも星にも
近いのだなと。