Q'lotoBeatz ROOM

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破線のマリス

2008-05-02 | 今日の一枚&一曲('07~'08) 
あ、今日は小説ですm(_ _)m


~「今日の一枚 '08」 vol.58~

野沢尚『破線のマリス』


シナリオライター&脚本家・野沢尚の乱歩賞受賞作にして、自身も深く関わるTVの裏側を描いた衝撃作。

まずはこのタイトル。
僕は知らなかったんですが、TVの画面て525本の横線(実線ではなく点からなる破線)によって切れ切れにされ、これが集まって画面に絵柄が浮かぶんだそう。
要するに「破線」とはTVの画面を形成する525本の走査線の事。
で、「マリス」とは(送り手側の)意図的な作風、悪意ある、と言った意味。

この
『破線のマリス』
というタイトルは、
『(送り手側の)情報操作』、『ヤラセ映像』
って言葉に置き換えられるワケです。


「その男、凶暴につき」「青い鳥」
などで、すでに有名だったシナリオライターがこんなタイトルの小説を出したワケで、発表当時はそれだけでかなりの衝撃だったみたいです。



主人公の女性映像編集者は独特の視点で映像を編集する、いわば映像の料理人。
彼女が作った料理は賛否両論を呼びながらも、その刺激的な映像で今日もスタッフ・視聴者・視聴率を飲み込んでいく。
今夜も彼女にとって「いつも通りの」料理をするつもりだった…



途中から世界に入り込み過ぎたみたいで、何が「現実」なのか、何が「真実」なのか、ブレ始めてびびりました(笑)


作品の内容とは少しズレますが、いわゆる『ヤラセ』問題は割とタイムリーな話題だったりするし、一昔前ほど「TVは真実100%」と考える人は少なくなったとは思うけど、今の時代に読んでも衝撃やある種の恐怖を感じると思います。

でも、そう感じさせる話の中にも一筋の光を見せてくれてるような気がしてならない…

僕の中で「野沢尚」という人はそういう人なんですよね。



「今日の一枚 '08」vol.58
→野沢尚/『破線のマリス』