でたらめなうたどもよ

みじかうた、その他。by David Lam

逝きし母へ

2020年09月20日 | うた

癌に痩せる母は笑いき病室の窓にカナブン今朝訪れしと

 

にんげんは関係性の獣ゆえ見知らぬ表情(かお)への変化恐るる

 

 

清拭が終わりましたその顔は眠つているかのように眠りき

 

 

真白き手に数珠通し死装束「お綺麗な方」と納棺師言う

 

 

死は永遠(とわ)の眠りというが 息を飲む薄化粧の頬その冷たさに

 

 

荼毘終わり骨だけの母は母でなく好き記憶のみ吾に残れり

 

 

 


爪を切る

2020年07月26日 | うた

如何せん吾如何せんあの頃の正しさ誤謬すべて忘れき


白白と午前三時の月明かりお前は要らぬと囁くが如


雨続き地のものすべて腐りゆく空を見ていた思うこと無く


愛しさを告げる人きみ去りて吾は吾を抱きしめてみる


死ぬ母の初めて吾は爪を切る爪切りの背に「正しい選挙」




生きていた

2017年12月27日 | うた
絵里なのか里絵だったのか朧だが生きていたのだ二十年前


2017年06月04日 | うた

ふたりには朝しか無かつた清冽な白き額に止められぬ光


ふたたび

2016年03月31日 | うた
今日からは誰の言ひなりにもならぬ職を辞し魂よふたたび!

かめら

2015年11月18日 | うた
一瞬を留める魔法を知つているそれだけでいい写真機(カメラ)が好きよ

二時

2015年06月12日 | うた
午前二時スマホの画面しろく輝り吾は眠れずきみは眠らず


外套

2015年02月28日 | うた
外套の塵さりげなく一つ二つ取るきみの手に触るドアを開ける

にんげんが漂い着きて住みぬ此処に明るい夜は水の底より


扇風機

2014年09月15日 | うた
妻と子のはなす言葉を聞くともなく眠りに落ちぬ秋の扇風機
 

天気雨

2014年05月24日 | うた
春、そして天気雨傘を持たずにこいびとの待つ部屋は白くて