へなちょこな詩 その４７ 宮尾昌成

こないだ、リスドールでパンを買った時

パンの耳、もらえますか？って言った

若い方の店員さんだったけど

他にお客さんいなかったし

迷惑にならないかもって思った

いつも混んでるから遠慮してるんですって

今日は空いてるからいいかなって思って

僕は、そう言った

だけど、店員さん、

使うんです！って

パンの耳も使うんです！って

え？・・・・・使うんですか？・・・・

でも、この前来た時は、他の店員さん、くれたのに・・・

絶対、嘘だって思った

絶対、信じられなかった

この店員さん、前から好きじゃなかった

もう、僕、めっちゃムカついて

しかも、おつりのトレーから１０円玉が転がって行って

やっと拾って来て僕に差し出すから

僕、ブチ切れて、手のひらの１０円玉、ふんだくって

ムッとした顔で、何も言わないで店を出てきた

いつもは、僕、ありがとうございましたって言うんだよ

ちゃんと、店員さんに言って、お店を出るんだよ

だけど、僕、どうしちゃったんだろう

こんなの初めてだ

でも、その次の日も、その次の日も

会社のお昼休みは、リスドールへ行ってパンを買って食べた

ちょっと、気まずかったけど

ここで、行くのやめたら

僕の負け？みたいな

変な意地張って、リスドールへ行ってパン買って食べた

でも、もう絶対、パンの耳下さいなんて言わないって決めてた

二度と言わないって決めてた

そして、今日も、会社のお昼休みに、リスドールへ行った

いつものように、いろんなパンを買って、会社に戻って来た

テーブルに置いた袋を開けて、中を見て

一瞬、時が止まった

パンの耳・・・・・・

パンの耳がたくさん入っていた

ラップできれいに包まれていた

だって、僕、パンの耳下さいなんて言ってないよ

もう絶対、パンの耳下さいって言わないって決めてたから

意地でも言わないって決めてたから

なのに、なんで？

前にいたTさんは、お仕事頑張ったからご褒美くれたんだよって

横にいたKさんは、世の中、捨てたもんじゃないねーとか

そんなことを言ってくれた

だけど、僕は、思った

全部、僕のせいなんだって

僕が、悪いんだって

僕が、あんなことで、ブチ切れたから

僕が、意地張ってたから

リスドールの店員さんに、気をつかわせちゃったんだって

ごめんなさいって言わなきゃって思った

ありがとうございましたって言わなきゃって思った

だけど、今日で、僕の出勤は最後

今日で、この会社とも、この街ともお別れ

だから、もう、リスドールにも行かない

リスドールへパンを買いに行くこともなくなる

ごめんなさいって言えない

ありがとうって言えない

どうしよう・・・・

ただ、店員さんの優しい心遣いだけが

僕の胸を熱くしていた