鞦韆院落

北京で過ごすインディペンデント映画な日常

山形日記3

2009-10-23 00:45:28 | 映画祭報告
13日の目玉は何と言っても呉文光の『操他[女馬]電影(ファック・シネマ)』です。
160分もあるし、これだけ寝不足だから少しは眠れるだろうと思ったけど、まったく眠らせてもらえずに見入ってしまいました。

北京を舞台に、映画にかかわる人々を撮った作品で、映画のエキストラをしながら脚本を書いている男をメインに、海賊版DVDを売っている男、オーディションを受けに来た若い女優たちなどにカメラを向けています。
当初は『我愛電影』というタイトルで、90分ほどのバージョンにまとめていたそうです。
そこには監督自身の声は入っておらず、テレビ局などに売りやすい、いわゆるきれいなドキュメンタリーに仕上がっていたのだけど、そこに自分の撮りたいものが映っていないと考え、今のバージョンが作られました。
今度は監督自身の声が入り、姿こそ映っていないものの、主要登場人物のひとりになっています。
そして、ドキュメンタリーが人の生活をどう変えられるのか、という問いに正面から向き合い、自分も含めて映画そのものを痛烈に批判した作品になっています。
中国ドキュメンタリー映画の父と言われる彼が、こういう境地に行きついていたのかと思うと、感慨深いものがあります。



2005年にこの作品を完成させた呉文光は、この映画を映画祭に出すこともせず、これ以降作品を世に出すこともありませんでした。
今では農民たちをトレーニングさせて、農村記録映画を撮らせています。
私は正直そんな彼を見て生ぬるいことをしてるなあと思ったりもしていたのだけど、これを見たらすべてが納得できました。
まさに『ファック・シネマ』です。

構成がとてもよくできているし、目の覚めるような場面があったり、張元や張献民が出てきて笑えたり、まったく長さを感じさせないところも流石です。
監督はあまり上映させたくないようだけど、私としては多くの人に見てほしい気がします。
今回の山形で一番の収穫でした。


中国から来た人たちも大勢『ファック・シネマ』を見ていたので、終わってからみなでラーメンを食べ、一緒に『馬先生の診療所』のQ&Aへ。
215分もあるこの映画はやはり観客が少なめではありましたが、それだけに熱心な観客が残っていて、時間が過ぎても質問し足りない様子でした。



私は北京、南京の映画祭のほか、都内で身内でやっていた鑑賞会でも見ているのだけど、いつも寝てしまうのです。
方言で何も聞き取れないし、人々がひたすらしゃべるので、ずっと中国語字幕を追いかけているのが大変なのもあって、集中力がどうしても途切れるのです。
長いし。
監督にはいつも長いと文句を言うのだけど、彼は長くないと言い張るし、観客の中にも長さを感じなかったと褒める人がいるものだから、それでいいと思われているようです。
でも、今回は私だけでなく何人かで長い長いと言ったものだから、監督も弱気になって「次の作品は短くする」と話してました。
本当はここで日本語字幕でこの映画を見直せることを楽しみにしてたのだけど、プログラムの都合で見られず残念でした。
来年もし東京でやったら、ぜひ見てみようと思います。
あと、この映画は近々現象工作室からDVDが発売される予定なので、中国語/英語字幕で良い人は購入をお勧めします。


さて、これで中国の作品はすべて上映終了となりました。
ゲストの中には温泉に行った人もいれば、美術館や博物館めぐりをした人、ひたすら映画を見た人など様々だったようです。
私は結局あまり映画は見てなくて、昼間はボーっとして夜は酒を飲んでの繰り返しで、呉文光からは最終日に「なんで俺が元気なのに、お前が疲れてるんだ」と言われてしまいました。
でも、まだここでバテるわけにはいきません。
何しろ、私が山形に来た理由は映画祭よりもその後に開かれる日中映画道場にあるのですから。


閉幕式では各賞の発表があり、中国作品は『ハルビン螺旋階段』と『細毛家の宇宙』が特別賞、『馬先生の診療所』が日本映画監督協会賞を受賞しました。
十分な結果だったかどうかは分かりませんが、数ある作品の中で中国の作品が多く選ばれたことは良かったのではないでしょうか。






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2 コメント

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Unknown (sanfu)
2010-11-29 23:49:58
フェスティバル/トーキョー2010のボランティアをしながら、生活舞踏工作室の『メモリー』8時間バージョンを観ましたが、8時間でも十分観続けることができる素晴らしい作品でした。(と言っても出たり入ったりしていて正味5~6時間しか観てないのですが…)
『馬先生の診療所』は、先月になってポレポレ東中野で観ました。長くてちょっと寝てしまいました…が、最初知らなかったのですが私の近くに監督が座っていて、失礼なことをしてしまったなあと思います(^^;
Unknown (だーしゅー)
2010-11-30 18:23:53
ボランティアをされてたんですね。
『メモリー』は観たことがないのでよく分からないのですが、機会があったら観てみたいです。
『馬先生』は3回ほど見てますが、私も毎回寝てます。
寝てる人は多いので、監督は慣れてるかもしれません。

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