鞦韆院落

北京で過ごすインディペンデント映画な日常

河北の秋1

2010-10-18 22:59:18 | 旅行記
休みに入ったら、内モンゴルのヘシグテン地質公園へ行こうと決めていた。
ところが、直前になって彼の地で大雪が降っているというニュースを見た。
さすがに寒そうだし、なにより雪で車が動いてなかったら意味が無い。
紅葉のきれいな所にでも変更しようと思い、内モンゴルに詳しい顧桃に電話した。
すると彼は「垻上草原にしておけ。今ちょうどきれいだから。馬に乗ったり、羊を食べたりできるぞ。承徳に寄ってから行くといい」と言う。
承徳といえば、世界遺産にもなっている清の避暑山荘で知られる都市で、北京からさほど遠くない。
せっかくの長期休暇には少しもったいない距離だし、今さら草原で馬に乗りたいわけでもないので、顧桃には悪いけど他を考えようと思いつつネットで検索してみた。
すると、垻上草原は『初恋のきた道』の撮影が行われた場所だと書いてあるのを見つけた。
そういえば、以前に調べたことがあったっけ。

四恵の長距離バスターミナルから、承徳行きのバスが頻繁に出ている。
その中型バスには、4人しか乗客がいなかった。
料金は75元。
運転手に所要時間を聞くと「高速なら3時間だけど、下道だから6時間」という。
なんで下道なのかというと、客が少ないから下道で客を探しつつ進むからだそうだ。
地方のバスは大体そういうものなので、まあいいかと思っていたのだが、なんとターミナルを出てから路上に停車したまま1時間も動かないのには閉口した。
やがて客が増えたので動き出すと、今度は「高速に乗ることにしたから10元ずつ追加で支払え」と言う。
こんなあこぎなバスが北京でも横行しているとは…。

夕方に承徳の東客運站に到着し、路線バスに乗りかえ、中心街らしきところで降りる。
このごろはガイドブックなど見ずとも、これくらいの要領は得られるようになった。
バス停の目の前にあった雲海賓館というホテルに飛び込んでみると、部屋は120元だという。
まあまあだったので泊まることにしたが、パスポートを見せると外国人は無理とのこと。
ここは観光地なのに、まだ渉外賓館とそうでないホテルの区別があるらしい。
いいから泊めてくれと粘っていたら、経理が現れて、密かに泊めてくれる事になった。

腹が減ったので、近所で驢肉火焼を食べた。



翌朝、とりあえず避暑山荘へ。
ここはさすがに観光客が多い。
その名の通り、清王朝が避暑地としていたところで、広大な敷地に建造物が点在している。
100元の入場料を支払い、博物館になっている宮殿や、寺院などを見学する。









この手の施設にはよく行くのだが、実はさほど興味があるわけではない。
建物はどれも似たり寄ったりだし、目当ての展示物があるでもなし、ただ話のネタにと思う程度である。
ここも、とても広いし、池の周りなどもとてもきれいなのだが、何だかしっくり来ない。
確かに歴史あるところなのだろうし、世界遺産だけあって手入れも行き届いてはいるのだけど、何かが違う気がしてならない。

その後、外八廟という避暑山荘の外に並ぶ寺院を見に行った。
これも世界遺産に含まれていて、特に有名なのは小ポタラ宮と呼ばれる普陀宗乗之廟。
なるほどポタラ宮を模しただけあって、雰囲気は出ている。







外から見ていると、壁がはがれてレンガがむき出しになったりしているのがいただけなかったりするし、取ってつけたようなチベット式の窓が違和感を与えるが、中に入るとそれなりにポタラ宮らしさを放っていて、写真も無い当時にしてはちゃんと研究して作られた感じが伺える。
でも、ここでも何かが違うという印象が拭えなかった。
それがはっきりしたのは、従業員を見たときだった。

例えば、実際のチベットの寺に行けば、そこにたくさんの僧侶の姿を見ることができる。
でも、この寺院群には僧侶など一人もいないのだ。
代わりにいるのは、おそらく旅游局の職員であろう若者たち。
彼らは仕事があるのか無いのか分からないが、片隅ではしゃいでいたり、寝ていたりと、観光客に興味は一切示さない。
仏像は展示されているし、賽銭箱も置かれているけど、職員は仏教など興味が無いらしい。
これを寺と呼べるだろうか。





展示されている資料に、修復される前の寺院を映した写真がいくつかあった。
恐らく新中国成立から文革ごろにかけてであろうその写真には、屋根も無くぼろい壁だけが無残にさらされた寺院の姿があった。



そこから推測できるのは、今の展示物などはどれも以前からの物ではなく、よそから持ってきた物かレプリカであることと、建物自体も、ほぼすべてが近年になって地元政府が建造したものであることだ。
そこに受け継がれている文化はない。
客寄せのために建物を再現し、至るところで土産を売り、やる気の無い従業員をたくさん雇って、高い入場料を取っている。
避暑山荘の庭園では"蒙古包"という名のコンクリートの建造物がたくさん建造中だったが、これも客に消費させるための新たなサービスを提供する予定なのだろう。
彼らからすれば、空いてる土地を利用しないのはもったいないし、客もきっと面白いサービスを期待しているはずだから、何かやって儲けようということだろう。
中国の土地で中国人が何をしようと、勝手と言えば勝手である。
でも、これを世界遺産と呼んでありがたがっているのは滑稽な話ではないだろうか。


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