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グループ戦略「税」の逆風に思う

2016-03-07 | 会計・株式・財務
7日の日経朝刊に企業グループ税務に関する興味深い記事があったので、備忘のためにポイントを要約しておきます。詳細は現物で確認下さい。オチはありません。

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グループ戦略「税」の逆風 企業に不利な判決相次ぐ 租税回避の認定厳しく

2016/3/7付 日本経済新聞 朝刊

 企業グループに対する「税」の逆風が強まりそうだ。最近の主な税務訴訟で、組織再編や子会社の増資・減資を「租税回避」、「利益移転」とした国(税務当局)側の勝訴が目立つ。今後は税務調査が厳しくなるうえ、企業グループの経営戦略にも悪影響を与えそうだ。取引の段階から税務リスク軽減の十分な対策が必要になる。

【日本IBM】
日本IBMの持ち株会社は日本IBM株の売買で生じた3995億円の損失を、連結納税で日本IBMの利益と相殺した。当局は「租税回避」として否認したが一審、控訴審とも敗北。国側の上告も最高裁が不受理。
IBM側面が勝訴したものの、上告不受理で確定した控訴審判決が「企業に不利になる可能性がある」(弁護士の太田洋氏)内容を含むため、「企業全体が負けた」との見方あり。

というのも、租税回避かどうかの判断基準には「目的」「手段」「結果」の3つがあるが、当判決では、
・「目的」=「事業の目的の有無は、租税回避の判断の決め手にならない」との考え方を示した。
・「手段」=「独立した当事者間の通常取引か否かで判断する必要がある」とした。税務訴訟に詳しい弁護士らは「独立当事者間取引の物差しを当てはめると、グループ企業間取引の多くが租税回避とされてしまう」。


【ヤフー】
約540億円の繰越欠損金のあるグループ会社をヤフーが買収して合併、税額を圧縮したことが租税回避とされた。最高裁がヤフーの上告を受理したうえで棄却し、同社の敗北が確定した。

 最高裁は「法の趣旨・目的を逸脱した乱用」を租税回避としたうえで、取引の「結果」が乱用に当たるかに言及。「通常は想定されない手順や方法に基づいたり、実態とは乖離(かいり)した形式を作り出したりするなど不自然なこと」「事業目的に合理性がないこと」を考慮して乱用の判断基準とし、ヤフーの取引を租税回避と断じた。「当局から取引が不自然とされれば、法の乱用として否認される可能性が大きくなった」との見方も。

【神鋼商事】
2007年3月にタイ子会社の増資を額面で引き受けたが、当局は「時価を大幅に下回る引き受けであり、差額は神鋼商事の利益(受贈益)になる」として追徴課税した。昨年9月の一審は敗訴。今月24日に控訴審判決。

【日産自動車】

当局は子会社の減資に伴い、日産に払い戻された金額が時価を下回るため、時価との差額を日産による子会社への利益移転(寄付金)とした。昨年9月、日産の敗北が確定。

【デンソー】
最近では「タックスヘイブン(租税回避地)対策税制」による子会社所得の合算課税の是非を争うデンソーが控訴審で一転敗北。企業税務関係者に衝撃が走った。

(以上、引用・要約終了)
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結構、厳しいですね。法人税率引き下げの「財源」に充てる腹づもりなのでしょうか。
世界経済の変調を受けて海外子会社の再編を迫らるケースは今後も増えるでしょうし、未曾有の低金利でM&Aブームも予想以上に長引きそうです。これらの税務訴訟の結果が、企業活動の萎縮など悪影響を与えないことを祈るばかりです(月並みなコメントですいません)。

なお、私は、税務スキームの研究用に、この記事にもコメントを寄せられている太田洋氏の本(第2版)を持っておりますが、最新判例など受けて短期間で「版」が重ねられており(現在第3版)、今回のヤフー判決の確定を受けてまたまた改版の予感。自腹の身にはトホホ・・・の心境です。

M&A・企業組織再編のスキームと税務―M&Aを巡る戦略的税務プランニングの最先端
太田 洋
大蔵財務協会


またいきます。

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