◆「財務アナリストの雑感」 2024◆

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連結決算から「子会社株売却益」が消えてしまうのか?

2006-08-01 | 株価分析では少数株主持分に注目

・・・・という記事が1日付けの日経金融新聞のスクランブル欄にありました。

国際会計基準の草案が日本の会計基準に適用されると、
連結決算では子会社株式の売却益の計上ができなくなると。

で、その会計基準の公開草案とは、
昨年6月に公表された「企業結合および連結財務諸表」に関するもの。

カンの鋭い方は、拙稿
  2月16日 やはり株価分析では少数株主持分に注目!
               -米国新会計基準公開草案の衝撃-
   http://blog.goo.ne.jp/dancing-ufo/e/a7b2719865bba95e8efba133b1ebed71

 3月3日 会計バトル 3.2頂上決戦 
            親会社説vs経済的単一体説、結果はいかに?
   http://blog.goo.ne.jp/dancing-ufo/e/2cc61b6a95fdb6f8768908d9dd45494f
 などを思いだされたかも。

これら拙稿でも触れたように、この公開草案では連結決算の考え方を
「親会社説」から「経済的単一体説」に変更しております。

で、経済的単一体説は、親会社の株主以外に、
子会社の少数株主も連結財務諸表の株主として含める。

このため、貸借対照表で少数株主持分は株主資本の一部となるってわけです。
で、この記事によると、子会社株式売却益にも影響すると。

すなわち、この説に立つと、親会社による子会社株式の売却というのは、
売却される子会社が連結範囲に留まる限り、株主間の資本取引と考えられる。
このため簿価と時価の差額は資本剰余金として処理され、
損益は発生しないことになる。

過去の拙稿でも触れましたが、この公開草案。
日本などから問題ありとして非難の嵐でして、実際に適用されるかは不透明。

でも仮にこれが採用されるとなれば、子会社上場が多く、
子会社株式売却益の計上が財務戦略上、重要なウエイトを占めている
日本企業に大きな影響を与えるかも知れませんね。

で、この新聞記事では少数株主持分が大きい企業の上位17社の
ランキングがありましたので、この中から株主資本に対するウエイトの高い会社を
ご参考までに掲げております。

もし経済的単一体説が採用されると、株主資本比率が増える企業と読み替えても
いいですね。

対象:少数株主持分 残高1,000億円以上の3月決算企業

企業名    株主資本に対する比率
ソフトバンク   41.7%
日立       41.3%
住友化学    31.2%
NTT       27.3%
アイシン精機  25.4%
NEC       22.6%
住友電工    19.5%
富士通     18.9%
松下      13.2%
三菱商事   11.3%
新日本石油   9.7%
日産自動車   9.3%

なんとなく住友系の会社が多いですね。
儲かっている連結子会社を多く抱えているってことですから、
いかにも財務の住友って感じがします。

それと、ソフトバンク。
ボーダフォン買収で多額の有利子負債が加わり財務バランスが
やや崩れているので、この会社はやっぱり、
経済的単一体説が適用されて名目の株主資本が増加することを
期待しているかも知れませんね。邪推ですけど。


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