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企業価値を高める「ストック・オプション評価方法」とは?

2005-12-13 | 会計・株式・財務
日本でもストック・オプション会計導入に向けて調整が進んでいます。
一般にこの基準が導入されると企業価値へマイナスのインパクトがあると
予想されています。
しかし、先行する米国では企業価値を高めうるストック・オプション評価方法が
推奨されているとのこと。

今回はこうした動きをご紹介しましょう。

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(出所)日本CFO協会「CFO FORUM」14号 NERA㈱池谷誠氏論文
    「ストックオプション評価「格子モデル」導入のインパクト
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米国会計基準審議会(FASB)は2004年12月、FAS123(修正)を公表。
遅くとも2005年12月以降に公表される財務諸表からは、
従業員ストック・オプションの時価評価と費用計上が
求められることとなった。

今回の基準改正は国際的な時価会計導入のトレンドが
ストック・オプション制度にまで及んだことを示すもので、
近い将来日本でも同様の基準が採用される可能性もあり、
米国上場以外の日本企業にとっても無関係とは言えません。

ストック・オプションを戦略的に採用してきた企業にとっては、
時価評価と費用計上によって企業価値が影響を受け、
財務や人事政策を含む経営への影響は無視できない。
また、M&Aにおいても今後はストック・オプションの評価が
デユーディリジェンス上の重要項目となる可能性もある。


FASB新基準のもうひとつのポイントは評価ツールとして、
「格子モデル」が推奨されていることである。

従来多くの企業が本源的価値(発行時の株価-行使価格)に基づく
評価を行い、ほとんどの場合その価値はゼロであった(発行時株価=行使価格)。
しかし今後は時価評価が求められるため、何らかのオプション評価モデルを
使用することになる。

評価モデルとして一般的なブラック・ショールズ・モデル(BSM)は
ボラティリティや金利、配当、権利行使日を一定と置いている。
これらの仮定には加重平均を用いるが、期間が長くなるほど正確性を
損なう結果となる。

BSMにおけるこれらの仮定はほとんどの場合、オプション価値を
過大評価する方向に作用する。
大量のストック・オプションを従業員に付与しているIT産業などの
米国企業からは、BSMを使った方法ではオプション価値が過大評価され、
純利益が不当に低く抑えられるとの懸念が示されてきた。

一方、「格子モデル」は格子状の株価推移経路を予測し、
格子の接点で発生するオプション価値を現在価値に還元するため、
金利やボラティリティ、配当の変化を変数として入力することができる。
また、各格子接点で発生するオプション行使機会でどの程度の割合が
行使されるかといった行使パターンを定量的に推測し、
モデルに取り込むことも可能である。

BSMの問題点であった多くの仮定を変数として取り込むことにより、
格子モデルはより正確な、そして多くの場合
より小規模なオプション債務の評価が可能となる。

すなわち企業にとって、
格子モデルを利用することにで費用を最小化し、
企業価値を高めることができる。
                          (引用終了)
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(コメント)

要は「格子モデル」を使えば「ブラック・ショールズ・モデル」よりも
オプション評価額を低くすることができ、株価を相対的に高くすることが
できる、ということ。

日本のストックポプション会計基準でも導入を排除していないようですから
(違っていたらすいません)、結構流行るかも知れませんね。

ただ、前提数値の置き方で不当に低く評価できるなど、
操作の余地も結構ありそうですから、
新たな粉飾の温床となる可能性があることにも留意したいですね。

「格子モデル」、名前だけでも気に留めておきましょうか。

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