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放送業界と電炉業界、どちらが買収されやすい?

2006-03-27 | 会計・株式・財務
いつもご覧下さり誠に有難うございます。

いつものように 「経済レポート専門ニュースサイト」
http://www3.keizaireport.com/
を見ておりましたら、金融界の論客で知られる川北英隆同志社大学教授による
「企業ファイナンスにおける一考察~企業買収と企業価値」
http://www.nli-research.co.jp/doc/syo0604a.pdf
という論文が目に留まり、早速ナナメ読み。

簡単に要約しますと次の通り。
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 ・ 放送業界と電炉業界は、財務上、高い現預金等比率、かつ高い株主資本比率
 にある。

< 05年3月期の財務状況(一部抜粋)>

       現預金等比率※   株主資本比率
東京製鐵    60.4%    70.2%
大和工業    47.5%    74.3%
フジテレビ    64.0%         70.3%
TBS               64.8%    64.2%
日テレ       41.0%    74.3%    

  ※=(現預金+有価証券)÷売上高

   しかし、両者の現金等保有動機は異なる。

・電炉業界は、業績変動が激しく、将来の業績の極端な悪化に備え、現預金や
  有価証券を豊富に保有しておくことが合理的である。

・ しかし、放送業界のように業績が安定している場合には、多額の現預金や
  有価証券を保有する合理的な理由がない。
  企業買収や株式買い集めを誘発するマイナス効果を考えると、配当支払いや
  自己株式の取得などの方法を用い、社外流出を図るべきと。

・ 企業価値の算定や株主総会の議決権行使についても、同じ現預金や有価証券
   の保有に関して、電炉業界と放送業界とでは異なった評価が与えられるべきと。

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 (コメント)
①論旨から察するに、昨年来のIT企業によるメディア買収行為は一種の自業自得
   だということなのでしょう。
   しかし、先日の記事にも書きましたとおり、テレビも大変革の時代。
   往年の映画の二の舞となるのか、とさえ言われております。
   中長期的に業績が安定して推移していくかは少々疑問を感じます。

  (参考の拙稿)王者・電通の苦悩に思う
  http://blog.goo.ne.jp/dancing-ufo/e/6ae8c8f3916b1023af1936f1fdbaedb8


②しかも、3月25日には、竹中総務相は、特定メディアによる複数のテレビ・ラジオ局
 の持ち株比率を制限した総務省令「マスメディア集中排除原則」を緩和する方向
 で見直す考えを明らかにしております。 
 
 読売新聞によれば、在京キー局による地方局への持ち株比率を高めることを容認
 して、キー局の総合力を引き上げると同時に、地方局の経営基盤を安定させる
 狙いがあるとみられる。

 地上はデジタル時代を迎え、地方局は結構厳しい等の話をよく聞きますので、
 キー局からの地方局への財務負担が増える可能性があるということなのでしょうか。

  政府のサジ加減でどうなるか先は読み難いですが、もしかすると、今後は
 テレビ各局の財務構成は意外と合理的に説明できるのかもしれませんね。
 (将来の業績の極端な悪化に備えているのでしょうか?)

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