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監査提言集「財務諸表監査における不正への対応」に思う

2016-01-28 | 会計・株式・財務
平成28 年1 月27 日、会計士協会監査業務審査会が「監査提言集(特別版)財務諸表監査における不正への対応~ 不正による重要な虚偽表示を見逃さないために ~」を公表しました。


ざっと一読しましたが、「今更、こんな基本的なことを言われないといけないのか・・・」という失望感(以下、青字) が覆い、 「随分とまぁいい加減に処理していたんだな・・・」という気づき(以下、赤字)も盛り沢山。

ここから浮き彫りになるのは、経験・能力に劣る補助者を使わざるを得ず、十分なマンパワーを得られず、短時間での処理を強いられる現場の苦悩・・・・・・、といったところでしょうか。特に、平成27 年3月期の上場会社では、決算短信公表前に監査報告書(会社法)を発行している事例が上場会社全体の約4割を占めているという事実は重い。今回の東芝問題を奇貨として、監査強化に向けた制度改正もしてもらいたいものです。

またいきます。


(以下、全文をご紹介します。なお、文中の太字・下線・赤/青字は私によるものです。)

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昨今の度重なる会計不祥事は、監査の信頼性を揺るがすものであり、これを契機に今一度、会員各位が監査業務に臨む姿勢を顧みて、各自が信頼回復に努めることが喫緊の課題である。

不正は他者を欺く意図的な行為であり、通常隠蔽行為を伴う。特に経営者が関与する場合は、組織における特別な地位を利用して内部統制の無効化が行われるため、監査人が経営者不正による重要な虚偽表示を発見できない可能性は相対的に高くなる。このため、不正リスク対応基準を含む現在の監査の基準は、過去の不正事例を踏まえ、監査人が不正による重要な虚偽表示を看過しないように、リスク評価、リスク対応及び意見形成時の留意点・着眼点が数多く含まれている。

監査業務審査会は、経営者が関与する不正事例は全ての監査人が直面する可能性があり、それらの事例から得た教訓は監査人が各自の行動を省みる契機を提供するものであると認識している。監査人は、経営者不正への対応の困難さを言い訳にすることなく、職業的専門家としての自覚を持って真摯な姿勢で取り組まなければならない。それが監査人に対する社会からの期待である。不正による重要な虚偽表示を見逃さないために監査人は何に留意すべきかについて、改めて注意喚起するために監査提言集(特別版)を
発行することとした。


1.職業的専門家としての懐疑心

(1) 職業的懐疑心

・ 監査人には、監査のあらゆる局面において職業的懐疑心を保持することが求められている。不正による重要な虚偽表示リスク(以下「不正リスク」という。)、特に経営者が関与する不正リスクを適切に識別・評価するに当たっては、更に職業的懐疑心の発揮が求められていることを、改めて理解する必要がある。

・ 不正は限られた企業において特別に存在するものではなく、不正による重要な虚偽表示が発生する可能性は全ての企業に存在するという点を常に意識する必要がある。

・ 被監査会社の監査業務に長期的に関与しているメンバーは、通常、被監査会社のビジネスをよく理解していると思われるが、  「理解している」との「思い込み」が職業的懐疑心を曇らせる場合もある企業のビジネスモデルは常時変化している可能性があるため、思い込みを排して、新たな心持ちで毎期の監査に臨む必要がある。

(2) 経営者の信頼性及び誠実性

・ 監査人は、監査を行うに際し、経営者が誠実であるとも不誠実であるとも想定しない中立的な観点に立つ必要がある。

・ 重要な虚偽表示リスクの識別と評価に当たっては、企業環境として経営者の会計・監査に対する理解がどの程度あるのかを考慮する。

・ 被監査会社が、決算短信公表前に監査報告書を受領することを強く要請する場合には、監査人は時間的なプレッシャーを受ける。監査実施過程において発見した虚偽表示を財務諸表に反映できないほどの時間的制約を受ける場合には、経営者の不正リスク要因(プレッシャー)に注視する必要がある。

・ 経営者の資質の評価に当たっては、経営トップとのディスカッションのみならず、企業の組織構造の特徴を鑑みて、実質的な影響力を及ぼすレベルの経営者(執行役や事業部長の場合もある。)とのディスカッションを行い、各経営者がどのようなプレッシャーを抱えているのかをイメージすることが必要な場合もある。

・ 経営者が監査に協力的でなく、経営者の主張・会計処理の論拠等が明確でない場合は、不正リスク要因となる可能性を十分に考慮する。


2.リスク評価手続とこれに関連する活動

(1) 企業環境の理解

・ 被監査会社の属する業界全体の環境及び動向を十分把握した上で、被監査会社がどのような状況にあるかを念頭にリスク評価を行う必要がある。業界全体の動向を外部のデータ等により把握しても、それが被監査会社の状況と一致するとは限らない。価格競争、海外との競争、新製品の開発競争等、被監査会社がどのような経営環境に置かれているか、期中において変化し得るこれらの環境に常に留意し、職業的懐疑心をもって理解する必要がある。また、経営者は常に業績達成というプレッシャーを抱えていることを念頭に置く。

経営環境の変化や企業の業績が悪化すると、固定資産の減損、株式の評価、貸倒引当金の設定、繰延税金資産の回収可能性等、様々な見積りに影響する。これらの影響からどのような不正が行われる可能性があるのか推測する。

・ 業界を知る上では同業他社の監査経験も必要であるが、企業は各々違うものである。業界を理解していると過信することなく、先入観は排して、被監査会社のビジネスの理解を深める必要がある。


(2) コーポレートガバナンスの評価

指名委員会等設置会社や監査等委員会設置会社であることが実効性のあるコーポレートガバナンスを実現するとは限らない。企業の機関を構成する者、各機関の機能と連携、経営者の理念・社風など、コーポレートガバナンスが十分に機能しているのかを職業的懐疑心をもって評価することが、統制環境の理解に不可欠な要素である。取締役会議事録や経営会議議事録の閲覧のみで、被監査会社のガバナンス(監督機能を含む。)は評価できないことに留意する。

・ 監査役、監査役会、監査等委員会又は監査委員会(以下「監査役等」という。)において、社外監査役等に十分な情報が適時に提供されているか、社内監査役等の就任前の役職は何かなども確認し、社内及び社外監査役等が一体となって経営トップに対して監査・監視機能を果たしているかを評価する。

・ 監査役会又は監査委員会の議事録のみならず、監査役等が監査した資料を閲覧することから重要な情報を得る場合もある。監査役等とのコミュニケーションでは、仮に監査役等が不適切な会計処理に関する情報を入手していても、監査人には伝達しない場合もある。監査役等の誠実性を検討した上で、建設的な信頼関係の構築に努める。

・ 監査役等との双方向のコミュニケーションが必要である。一方通行では回数を重ねても有効なコミュニケーションとはならない。不正リスクについて、「ない」という回答を得るのみで済ますのではなく、どのような手続を踏んで「不正はない」と判断したかを深度をもって議論する。


(3) 内部統制の評価手続

内部統制の評価手続が形骸化している事例が見受けられる。内部統制基準・実施基準や実務指針の制度趣旨に沿った実質的な適用がなされているかを見直す必要がある。

・ 被監査会社の作成した内部統制の業務記述書を批判的・客観的に検討するには、例外的な取引(記述書に記載のない取引)が発生した場合、誰がどのような対応をし承認を得るのかを質問することが重要である。

・ 内部統制の業務記述書にある前提や条件付けは、内部統制の評価に当たって、当該前提と条件が監査対象期間においても適合するかどうかについて確認する必要がある。

内部統制の評価に当たっては、例外的な取引への対応を質問したり、ウォークスルーの件数を増やすことなどによって、取引がどのように処理されて財務諸表に計上されるかの理解が深まるはずである。内部統制を理解するにはビジネスの理解が不可欠である。承認の有無を形式的にチェックしても意味がない

・ 内部統制評価及び監査において、連結売上高の数値を用いて2/3 程度の拠点のみを重要な事業拠点として機械的に選定しているケースがある。その結果、内部統制の評価対象から除外された連結グループ内取引に係る業務プロセスで不正が行われた事例や、2/3 の選定から外れた事業拠点で不正が行われた事例もある。内部統制の評価対象の選定においても、不正リスクの可能性を考慮して範囲を決定する必要がある。

重要性がない事業拠点において不正が行われると、長期間発覚しない可能性が高くなる。内部統制は経営者(企業)が構築するものであるため、被監査会社に、職務分離の見直し、定期的な人事ローテーション制度の確立、連結グループ内での監視活動(内部監査等の活用)など、管理体制を整備・運用するよう注意を促す。


(4) グループ監査

・ グループ内取引は相殺されるとしても、グループ外に対してどのような取引を実施しているのか、取引全体を見た上でリスクの存否を考える必要がある。グループ内で複雑な取引がある場合には、構成単位の監査人の監査結果にも留意し、全体としてどのような取引なのかを理解する。

連単倍率が小さい場合には、グループ監査上、重要な構成単位とならない子会社で発生した不正が、重要な虚偽表示となってしまうときもある遠隔地(海外を含む。)、新規業務、専門的な知識が必要な分野、ノンコア事業等を理由に、被監査会社が長期間、同一の担当者に任せているケースもあるため、被監査会社の管理体制に留意し、グループ監査上、重要な虚偽表示リスクの存否に留意する

・ 構成単位の監査人から入手する監査証拠は、鵜呑みにせず内容をよく吟味する必要がある場合もある。構成単位の業績変動や構成単位の監査人の評価も軽視しない。


3.特別な検討を必要とするリスクの識別と評価

・ 特別な検討を必要とするリスク(以下「特検リスク」という。)は、監査人が特別な検討を必要とすると判断した重要な虚偽表示リスクである。これを識別した場合には、関連する勘定科目及びアサーションを適切に判断し、当該リスクに対応した適切な手続を実施する必要がある。特定の勘定科目を機械的・形式的に選定していないか、重要な虚偽表示を発見できる手続を立案しているかを慎重に考慮する。

・ 収益認識に不正リスクを識別しているが、対応する手続が不正を発見できる有効な手続となっていない事例がある。収益取引の種類別、取引形態又はアサーションごとに的確なリスクの識別を行い、どのような不正が行われるのかをイメージし、対応する監査手続を立案する必要がある。

・ 特検リスク、特に不正リスクに対応する手続においては、手続を実施する担当者(監査補助者)に的確な指示を行わないと、重要な虚偽表示を看過する可能性が高くなる。リスクに応じた適切な監査手続書を作成し、監査チームメンバーと共有する必要がある。


4.評価した不正リスクへの対応


(1) 監査アプローチ

・ 監査の実施においては、グループ監査の重要な構成単位、内部統制監査の重要な事業拠点、期中往査の支店・工場、棚卸立会先等、様々な手続実施対象拠点の選定が求められる。合理的な理由により各々選定基準が異なることは想定されるが、各拠点で入手した監査証拠が目的に照らして必要十分かどうかを評価し、期中に往査場所で実施した監査手続が期末監査において未了にならないよう、往査拠点と期末時点で行う監査手続との関連、効果と効率性も併せて、監査計画を立案する。

・ 手続の実施に当たっては、過去の経験に基づく思い込みを排し、毎期ゼロベースでモノの流れと会計の流れのつながりに注視する。

最初に手続を実施する担当者(監査補助者)が取引の異常に気付かないと、重要な虚偽表示の発見が遅れる要因となる。監査補助者の能力・力量は非常に重要であり、補助者も会計・監査のプロフェッショナルであることを忘れてはならない。また、経験不足は職業的懐疑心の欠如の一因となるため、適切な補助者の育成が必要である。

・ 連結グループ内取引が多い場合に、連結財務諸表で消去されることを前提に、親会社の個別財務諸表に対する監査手続が軽視される事例もある。親会社の個別財務諸表の監査意見の表明のために適切な監査手続を実施する必要がある。

・ 重要性の基準値及び手続実施上の重要性の設定は、監査人の企業に対する理解、過年度の監査で識別された虚偽表示の内容と金額、当年度の虚偽表示に関する予想等によって影響を受ける。企業環境は常時変化することから、重要性の基準値もそのような変化に対応する必要がある。

(2) リスク対応手続

・ 取引全体の不自然さを発見するためには、視野を広げて、全体像の把握に努めることが効果的である。割り当てられた担当科目や抽出したサンプル取引のみを見るのではなく、相手勘定や取引先の分析、関係会社間取引の有無の確認等を通じて、一連の取引の全体像を把握し被監査会社の役割や目的を理解する必要がある。

期末日近くに発生した関係会社間取引及び巨額の収益計上や、被監査会社との関係が不明な相手先への多額な投融資などの取引は、経済的合理性や事業上の合理性を検討し、取引が「なぜ生じたのか」という観点からの検討が必要である。入手した監査証拠を批判的に吟味し、十分な裏付けとなっているか判断する。

(3) 監査チーム内の連携強化

・ 監査チームメンバーは、経営者、取締役等及び監査役等が信頼でき、誠実であるという予断を持たずに、討議を行う必要がある。

・ 監査チームメンバーは、期中と期末、本社と支店、親会社と子会社等々、それぞれの担当で相違する場合もある。各々の担当で入手した情報は、一元的に監査チームメンバー全員が理解し共有することが必要である。期中の支店や工場等の往査で発見した通例でない取引に気付けば、不正を発見できたという事例もある短期間配置される監査補助者も、監査・会計のプロフェッショナルである自覚を持って、異常点や重要な会計及び監査上の問題となる可能性がある事項を発見した場合には、速やかにより経験のある監査チーム内のメンバーに報告し情報共有する

・ 監査チームの編成には、監査業務の効率性から被監査会社の経験・理解が深いメンバーが必要であるが、それを批判的に検討できるメンバーも必要である。過去の経験による思い込みは、監査チーム内に先入観に基づいた情報を共有させてしまう場合もあることに留意する。

5.経営者による内部統制を無効化するリスク

(1) 経営者とのディスカッション

・ 経営者は、有効に運用されている内部統制を無効化することによって、不正な財務諸表を作成することができる特別な立場にあるため、経営者自らが不正を画策している場合には、経営者への質問は有効ではない場合が多い。しかし、適切な階層の経営者(本部長、支店長等)とのディスカッションを重ねることにより、経営者のプレッシャー、姿勢の変化を感じることはあるかもしれない。そのためには、業界動向、企業の置かれた環境、取引等について、先入観を排して客観的、総合的・大局的に捉えることが肝要である。

・ 経営者とのディスカッションを意味のあるものとするには、監査人が企業及び企業環境・ビジネスを十分に理解することが重要である。企業及び企業環境・ビジネスの理解が不十分なままディスカッションに臨んでも必要な情報は引き出せない。

(2) 経営者による内部統制を無効化するリスクの評価

・ 経営者による内部統制を無効化するリスク(以下「内部統制無効化リスク」という。)は、全ての企業に存在することが想定されている。監査人は、当該リスクの程度にかかわらず、少なくとも仕訳テスト会計上の見積りにおける経営者の偏向の検討及び非通例的な重要な取引の検討の三つのリスク対応手続が求められている。

・ これら三つの対応手続は、過去の不正事例からの教訓として、リスク評価が適切に識別・評価されなかった場合の監査リスクを抑えるため、リスク・アプローチの監査の限界を補うものとして監査の基準に設けられたものであることを再認識する必要がある。不正がどのように発生するのかも含め、不正による重要な虚偽表示がどこにどのように行われる可能性があるのかについて、特に重点を置いて、監査チームメンバーは討議を重ねることが有用である。

・ なお、上記の三つの手続で内部統制無効化リスクに十分対応できているか否かを判断する必要がある。十分でないと判断した場合は、追加手続を実施する必要があるかどうかを検討する。

・ 内部統制無効化リスクの程度を評価するに当たって、ある取引を実行することによって利益の獲得(費用の圧縮)が可能となる場合、被監査会社がそのような利益を必要とする背景は何か、例えば、財務制限条項や上場廃止基準等への抵触のおそれの有無など、被監査会社の置かれた状況を総合的に勘案する。

① 仕訳テスト

・ 仕訳テストにおいては、評価したリスクの程度に応じた起こり得る不正の態様(以下「不正シナリオ」という。)を想定し、それに対して十分かつ適切な監査証拠を入手できる計画を立案する必要がある。仕訳データを通査するのみでは経営者不正は見抜けない。

・ パラメータの設定及び抽出項目の検証に職業的懐疑心をもって異常性を見極める力量(経験)を備えることが必要である。

・ 不正シナリオが適切で、仕訳データからの特定項目の抽出におけるパラメータの設定が適切ならば、抽出された項目は不正の兆候を示している可能性が高いと考えられる。抽出された仕訳項目に「不正による重要な虚偽表示」が本当に含まれていないかどうか、会計処理の裏付けとなる監査証拠を入手して不正による重要な虚偽表示の有無を確かめる必要がある。


② 会計上の見積りにおける経営者の偏向の検討

・ 監査人は、経営者の偏向が会計上の見積りに存在するかどうかを検討しなくてはならない。検討した上で、偏向の発生している状況があれば、不正リスクを示すかどうか評価する必要がある。

・ 会計上の見積りにおける経営者の判断及び決定は、個別の見積りでは合理的であるとしても、財務諸表全体としては不正による重要な虚偽表示リスクが含まれている場合もある。そのため、経営者の偏向が内部統制無効化リスクにつながるかどうかを全体として評価する必要がある。

・ 経営者の偏向を評価するためには、過年度の財務諸表に反映された経営者の仮定及び判断に対して、遡及的に検討する必要がある。

③ 非通例的な重要な取引の検討

一般的には通例でない取引であっても、業界慣行という理由で通例の取引と理解してしまう場合がある。監査人は、業界慣行という説明のみで納得することなく、通例と理解している取引の中に通例でない取引が隠されていないか職業的懐疑心をもって取引の実態を見る必要がある。


6.審 査

・ 審査は、監査チームの実施した監査手続、監査上の重要な判断及び監査意見を客観的に評価するものである。監査チームからの説明や実施した手続を形式的になぞるのみでは不十分であることを理解する必要がある。

・ 監査上の重要な判断には、通常、特検リスクの識別及び対応が含まれる。審査担当者は、重要な取引に係る監査調書を批判的な観点からも査閲し、職業的懐疑心をもって審査を実施する必要がある。


7.監査時間・期間

決算発表の期日までに、限られた時間で監査を完了するために、経営者の主張を裏付ける証拠のみに目を向け、否定的な情報に対して検討を加える余裕がない状況で監査を実施している事例もある。監査時期(期中での事前相談の実施)の工夫など、従来からの監査スタイルを再検討することが必要な場合がある。

・ 新たな重要な虚偽表示リスクの識別などにより、当初予定した監査報告書の提出期限までに監査を終了することが困難になることが予想される場合は、速やかに監査報告書の提出期限の延長を被監査会社と協議する必要がある。

平成27 年3月期の上場会社では、決算短信公表前に監査報告書(会社法)を発行している事例が上場会社全体の約4割を占めているという実態がある(決算上場会社の開示データに基づき日本公認会計士協会にて集計)。企業の決算体制が決算発表スケジュールに対応できず、毎期、未修正の虚偽表示が発生する場合もあるが、未修正の虚偽表示を財務諸表に修正すべく、被監査会社に指導することが最優先課題である。今一度、決算スケジュール及び監査スケジュールについて経営者と協議し、十分な監査期間の確保が、財務諸表の信頼性を高めるために不可欠な要素であることを経営者に理解してもらう努力が必要である。

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