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楽しく安全にセーリング

千葉サンライズセーリングクラブ講習担当者のブログ

波舵(なみかじ)

2024-05-07 20:21:10 | 基礎知識

波舵(なみかじ)をごぞんじですか?

面舵(おもかじ)や取り舵(とりかじ)なら聞いたことがあるけど、ヨットに乗らない人なら波舵(なみかじ)なんて聞いたことないと思います。

先日、ヨットはブレーキのない乗り物だとのお話をしました。ブレーキのないヨットを止めるためには、風上に向けてセールから風を逃がし、風の力を利用して前進しているヨットに後進する力をかけて行き足を止める必要があります。波舵(なみかじ)とは、風上に向けて止めたヨットを意図的に後進させ、再び帆走状態とする技術のことをいいます。ヨットを後進させる方法をなぜ波舵というのでしょうか?私も知りません。

さて、波舵は基本的にはヨットを止める操作と逆の操作をするだけなのですが、前進して帆走しているときと波舵で後進しているときでは舵の効き方に明らかに違いがあり、波舵の方が舵がよく効き、艇が早く反応して向きが変わりますので、慣れるまでは練習が必要です。

波舵の手順

  1. 風上に対して直面して艇が止まった状態であることを確認する。
  2. メインシート、ジブシートともにしっかりとゆるめる。
  3. 舵を艇の中心にまっすぐ向けて、艇が後進し始めるのを待つ。風の弱いときなどは、風に直角までブームを押して強制的に後進させる。
  4. 艇が後進しだしたら、艇を向けたい方向の方へ舵を押す。(このとき、風が強いときなどは舵がすぐ効くので慎重に舵を操作してください。)
  5. 舵が効いて艇の向きが変わり始めたらメインシート、ジブシートともゆるめたままで舵を艇の中心にまっすぐに戻す。
  6. 確実に艇の向きが変わってから、メインシート、ジブシートを引き込み、セールに風を入れて走り出す。

少しでもやったことがある人には伝わると思いますが、やったことない人には文字でつらつら書いてもよくわからないですよね。実際に乗りながらご説明いたしますので予備知識としていただければありがたいです。波舵は、ヨットを止める技術と同様に重要な技術です。練習しましょう。

 

 


ブレーキのない乗り物

2024-05-06 08:01:28 | 基礎知識

5月5日、ヨットクラブに入会希望のセーリング未経験の方お二人と体験セーリングを行いました。

本来なら、普段目にすることのない東京湾からの景色をゆっくりとご覧いただくところですが、あいにく「天気晴朗なれど波高し」、ハーバーも出艇注意の黄色の吹き流しが出ている状態なので、港外には出ず、港内でのセーリングとしました。

桟橋に係留したヨットに乗り込み、波舵で出艇。体験者の方には、音もなくスーッと滑り出すセーリングの気持ちよさを楽しんでいただけたようです。港内といっても、風は5~6m/s近くあります。体験者の方に安心して乗艇していただくためには、艇長がヨットの傾きを安定させ、スピードを適切にコントロールすることが大切です。

この点について、陸上を走る自転車や自動車にはブレーキがついています。ブレーキを踏む(かける)ことで、タイヤの回転を制御し、最終的にはタイヤと地面との摩擦で車を止めます。一方、水面を進むヨットにはこのようなブレーキはありません。そもそも地面と水面では摩擦抵抗が全然違います。すなわち、ヨットは走り出すよりも、止めるほうが難しいのです。

それでは、ヨットを止めるためにはどうしたらよいのかという話です。

私は四国の愛媛県出身で、母方の祖父母は広島県に住んでおりました。当時、四国と本州との間には橋はかかっておらず、祖父母宅に行くためには瀬戸内海を船で渡るしかありません。ある年(小学校2年か3年)の夏休み、広島県から迎えに来てくれた祖父と一緒に松山観光港から広島宇品港までのフェリーに乗りました。フェリーは途中、広島県の呉港に立ち寄ります。(小学生の私は、当時宇宙戦艦ヤマトが流行っていたことも相まって海上自衛隊の護衛艦が多く停泊している呉港を通るのが楽しみでした。)

「護衛艦が見たい。」と私が言ったのだと思いますが、祖父がフェリーのデッキに一緒に上がってくれました。ちょうど着岸しようとしている艦がいたのでしょう。普段無口な祖父が、私に対して「船はどうやって止まるかわかるか?」「船にはブレーキがないんじゃ。」「ほじゃから、スクリューを逆回転させてとまるんじゃ。」「ようみとけ、そろそろ逆回転のタイミングじゃ。」と熱っぽく語りかけてくれたのです。その熱が小さい私にも伝わったのでしょう。このエピソードは、私の中での数少ない祖父との思い出です。(祖父は元大日本帝国海軍の軍人で、戦中は軍艦に乗り通信任務にあたっていたのです。)

話がそれました、同じ船でも動力船はスクリューを逆回転させ、前進している艇を後進させようとすることで止めることができます。逆回転させる動力のないヨットを止めるためには、①風上に向けてセールから風を逃がし、風の力を利用して後進させる(逆回転と同様の効果により行き足を止める)、②メインセールをおろしてしまう、③アンカーを打つくらいしかありません。

②のメインセールをおろす方法は、風の力で進むヨットにとって、主要な動力源を失うことになるので艇を止めやすくできますが、慣れないとかえって艇のコントロールが難しくなります。特に風上に向かっての帆走が難しくなりますが、ジブセールだけで帆走することで、追い風や横風でのハーバーへの着艇では適切な方法です。

③のアンカーを打つ方法は、海面下の地面と海面上のヨットとをアンカーとロープで固定するわけなので、確実に艇が止まります。艇にトラブルが生じて帆走が困難となり救助を待つときなどは、なるべく岸から離れた安全な場所に躊躇せずアンカーを打って艇を止めておく必要があります。

帆走を継続しながら艇を止めるためには、①の風上に向けてセールから風を逃がし、風の力を利用して行き足を止めるしかありません。この技術は非常に重要です。

私たちは「ブレーキのない乗り物」で楽しく安全にセーリングしようとしています。艇長となるためには、安定して風上に向けて風をセールから逃がし、風の力を利用してヨットを止められるように意識して練習する必要があります。走り出すより止まるほうが難しいのです。止める練習は面白くないですが重要です。頑張りましょう。

 

 


海上衝突予防法

2024-04-30 20:32:14 | 基礎知識

4月29日、新入会員の方1名を含む3名でセーリングしました。

ちょうどお昼時で、海面には我々のほかにちらほらしかディンギーがいませんが、レーザー級が数艇まとまって帆走しています。その艇団がスターボードタックで帆走中、我々がポートタックで帆走中で、まさに交差しようとしているときです。

新入会員の方から「この場合、どちらがよけないといけないのですか?」とのご質問がありました。

よい質問ですよね。漫然とお客さんのように乗艇するのではなく、次にやるべき行動を考えて乗っていらっしゃるわけです。

ディンギーも海上に出れば、他の船舶と同様に海上衝突予防法の対象となります。ご質問のお答えは法律にそのまま書いてありますので復習しておきましょう。

海上衝突予防法

(帆船)

第十二条 二隻の帆船が互いに接近し、衝突するおそれがある場合における帆船の航法は、次の各号に定めるところによる。ただし、第九条第三項、第十条第七項又は第十八条第二項若しくは第三項の規定の適用がある場合は、この限りでない。

一 二隻の帆船の風を受けるげんが異なる場合は、左げんに風を受ける帆船は、右げんに風を受ける帆船の進路を避けなければならない。

二 二隻の帆船の風を受けるげんが同じである場合は、風上の帆船は、風下の帆船の進路を避けなければならない。

三 左げんに風を受ける帆船は、風上に他の帆船を見る場合において、当該他の帆船の風を受けるげんが左げんであるか右げんであるかを確かめることができないときは、当該他の帆船の進路を避けなければならない。

2 前項第二号及び第三号の規定の適用については、風上は、メインスル(横帆船にあつては、最大の縦帆)の張つている側の反対側とする。

最初のうちは、自分が右げん(スターボードタック)に風を受けているのか、左げん(ポートタック)に風を受けているのかが、とっさにわからないですよね。CSSCのシード艇のサイドステイ(クルーで乗られた方の目の前のワイヤー)には、4月29日のマストの整備時に風見用の毛糸をつけました。

右げん(スターボードタック)には青い毛糸、左げん(ポートタック)には赤い毛糸がついています。青い毛糸は「青信号」、赤い毛糸は「赤信号」です。自分が乗っている艇が異なるげんに風を受けている艇と出会ったとき、どちらが針路を保持し、どちらが避けないといけないのか。クルーの方はサイドステイ(目の前のワイヤー)の風見毛糸が青い毛糸なら「青信号」で針路保持、赤い毛糸なら「赤信号」なので避けないといけないと覚えてください。

特に、自分の目の前の毛糸が赤いときは、しっかりと見張りをして、他の艇と交差しそうなときは艇長にすぐに報告してください。