国際法の父、自然法の父「グロチウス」
フーゴー・グロチウスは、オランダのプロテスタントの名門に生まれた。
神を離れた人間の社会的性向を基礎とする国際法の体系的思想を始めて展開したのが、グロチウスだった。
著書「戦争と平和の法」の自然法の理解によると「自然法は不可変であって、神といえども変更することができない」「神は、二に二をかけて四とならないようにはできないのと同様に、本質的に悪なるものを悪に非ずとすることはできない」と述べている。彼の自然法の観念は、普遍立法に近い。
グロチウスが強調したのは、国家(=君主)といえども、当然守らなければならない法(=国際法)が存在することであった。彼の言う自然法は、プーフェンドルフなどが主張した、自然的自由の観念を基礎とする合理的自然法と違い、かなり、超越的な性格を持つものであった。
グロチウスの言う「普遍人類的な法意識」に基づく法理論は、意識的に法律学と神学との分離を強調し、カトリック神学やスコラ哲学と決別する要素もある。
第一次大戦後、国際連盟の出現をきっかけとして、国家主権を中止とする近代国際法思想への反省が高まったとき、グロチウスの再認識が広がった。
また、人類普遍の自然法思想を基礎に持つと解される「日本国憲法」および「その平和思想」の理解のためにも、グロチウスが歴史に投げかけた示唆には、学ぶところは少なくないだろう。